取調べの全面可視化を実現しよう!! 弁護士/中村 直美

 あなたが身に覚えのない容疑で逮捕されたとします。必死に「自分はやっていない。犯人ではない。」と訴えても、捜査官は信じてくれません。勾留されて、連日、自白獲得を目的とした長時間に渡る取調べが続きます。あなたは考えます。真実は裁判で明らかにすればいい。ここはひとまず自分がやったことにして、とにかくこの辛い状況から逃れようと・・・。しかし、一度自白調書が作られてしまうと、「捜査官に脅された。」「言ってもいないことを調書に取られた。」と言って覆すのは容易なことではありません。密室で行われている取調べの状況は、あなたと捜査官しか知らないのです。
 DNA鑑定により再審無罪となった足利事件を始め、無実の人が自白して有罪とされてしまった事件は多数あります。しかし、その自白が任意になされたものかを事後的に検証する制度はこれまでありませんでした。そこで、取調べの全過程を録画・録音して明らかにすることで、違法捜査を抑制し、虚偽自白による冤罪を防止しようという、取調べ過程の全面可視化が必要になるのです。
 欧米諸国を始め、韓国や台湾、モンゴルなどではすでに可視化が義務付けられていますが、日本では、民主党がマニフェストに挙げていたものの法案提出には至っていません。しかし、裁判員制度の導入に伴い取調べの一部分を録音・録画する試みが始まり、また、明石市花火事故の検察官担当が取調べ過程を全面録音・録画する方針を明らかにする等、可視化実現に向けた運用がされようとしています。
 刑事司法制度を改革する大きな力を持つ取調べ全面可視化制度を、是非実現しましょう。


(2010年5月)

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