安倍政権の目指す「雇用改革」って? 弁護士/毛利 崇

1 安倍政権の目指す規制緩和
 安倍首相は、日本を「世界で一番企業が活動しやすい国」にすると述べ、労働規制の大幅な緩和を実施しようとしています。規制とは、経済活動などの場面で弱い立場に立たされる者の基本的人権を守るために、国が強い立場の者に対して設けている縛りのことです。従って、労働規制の緩和とは立場の強い者=企業の利となり、立場の弱い者=労働者の不利となる危険性を常に有しています。もちろん、不要の規制を撤廃して経済活動を活発にすることで、企業が利益をあげ、それが労働者の利益にもつながることもあり得ます。しかし、安倍政権のやろうとしている規制緩和は、決して「不要の規制を撤廃して企業と労働者と両方の利益になること」を目指すものではありません。そのことは「世界で一番企業が活動しやすい国」という表現に端的に表れています。

2 限定正社員
 安倍政権は、正社員の中に「無限定正社員」と「限定正社員(ジョブ型正社員)」という概念を作ろうとしています。今の正社員は労働時間も勤務地も職務も限定されず無限定な状態で働かされているので、そうではない職務や勤務地や労働時間を限定した正社員を作ろうというのです。しかし、現在の正社員は決して法律上、職務や勤務地、労働時間が限定されていないわけではありません。無限定な職務変更や転勤は、法律上規制されていますし、労働時間については「1日8時間、週40時間」という規制があります。
 安倍政権は、違法な実態を放置したまま、「限定正社員」という概念を作り出して「限定されているんだから、無限定正社員(今の違法な働かされ方をしている正社員)より給与や待遇が下がっても仕方ない。」というやり方を目指しているのです。これは本末転倒の議論で、違法に無限定に働かされている正社員の状況を適法なものにすることこそが求められているはずです。

3 解雇の金銭解決
 安倍政権は「雇用の流動化」=「雇いやすく解雇しやすい雇用形態」を目指して、合理的理由がなくとも、一定の金銭さえ支払えばいつでも解雇ができるという制度を導入しようとしています。解雇後一生涯食べていけるだけの金銭がもらえるのであれば(仕事をする生き甲斐を奪われるという点を除けばは)、あり得る制度かもしれませんが、もちろんそのような高額の金銭は支払われません。給料数ヶ月分の金銭で解雇が有効にできるということになってしまうと、例えば上司や会社に対して正当なことを主張すると、わずかな金銭で会社から追い出されるというような事態になりかねず、結局、上司や会社の不当なやり方に労働者が異を唱えることができなくなってしまいます。

4 ホワイトカラー・エグゼンプション=残業代0制度
 さらに安倍政権は、「労働者が労働時間に縛られずに個々の裁量や能力で仕事ができるようにするため」という言い分で、労働時間の規制を撤廃し、どれだけ長時間労働をしても残業代が支払われない制度を導入しようとしています。例えば、有能な労働者がいて1日6時間で与えられた仕事がこなせるという話になれば、その労働者は6時間だけ会社にいて8時間分の賃金がもらえることになりますから、メリットのある話かもしれません。しかし、このような制度が導入されれば、長時間残業をしなければこなせないようなノルマが与えられて、一方で、賃金は8時間分しかもらえないということになるのは、現在のサービス残業の実態を見れば明らかです。

5 まとめ
 このように、安倍政権の目指す「雇用改革」「労働規制緩和」は、労働者の命と健康、ワークライフバランスを全く無視するものです。秋の臨時国会や、来年の通常国会でこのような制度ができてしまう危険性が高まっています。労働者の命と健康を守るために、みんなで反対の声を上げましょう。



(2013年11月)

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