出勤停止などの懲戒処分は無効です。 弁護士/杉山 潔志

 大久保自動車教習所で働いているY指導員は、昨年9月、「高速道路教習を行っていたとき、教習生が路上に落ちていた鉄片を踏み、鉄片が教習車の運転席座席下に刺さり、そのときに、異音を聞いたにもかかわらず、適切な処置をとらなかったため、他の指導員が行った次の高速道路教習の際に、鉄片と道路が擦れる激しい異音が発生して路肩に緊急停止し、道路公団パトロール隊に誘導される事態になった」として、安全運転義務違反、適切な教習指導及び報告の怠慢を理由に、減給、出勤停止14日、営業職への配置転換の処分を受け、教習車の修理代や次時限の教習代金相当額を賃金から差し引かれました。
 しかし、Y指導員が高速道路で教習した際には、報告しなければならないような大きな衝撃や異音は発生しておらず、特段の問題なく教習所まで戻っています。この次に行われた高速道路教習の際にも、途中で異音が発生するまで鉄片が刺さっていたことは気付かれずに教習が行われました。このような状況の中で、安全運転違反や適切な教習・報告の懈怠があったとして、Y指導員に懲戒処分を課すことは疑問です。また、損害賠償金と賃金を相殺することは労働基準法違反です。
 Y指導員は、会社に対し、懲戒処分の無効と支給されなかった賃金の請求、配置転換や休職に追い込まれた精神的苦痛に対する慰謝料を求めて京都地方裁判所に提訴してたたかっています。


(2010年5月)

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