過労自殺保険金請求事件 弁護士/清洲 真理

 Aさんの夫は、京都市内の会社に勤務していました。商品の設計開発をしていましたが、業績悪化による会社清算を受けて、他県にある関連会社へ転籍することとなりました。転籍後は単身赴任で働きながら、週末は家族の元に帰るという生活を続けていました。
 しかし、転籍先の会社では、上司からのサポート体制が十分でなく、分からないことを相談できる雰囲気がないまま、取引先とのやり取りや厳しい開発ノルマに追われることとなります。Aさんの夫は、次第に元気がなくなり、Aさんに「仕事を辞めたい、死にたい」ともらすようになっていきました。
 このように、追い詰められた状態の中で、Aさんの夫はうつ病を発病し、そして、自殺しました。転籍してから約2ヶ月後のことでした。
 Aさんの夫は、生前に、生命保険に加入していましたが、加入後3年以内の自殺であったため、保険会社からは、「免責条項にあたり、死亡保険金を支払わない」と言われました。
 しかし、うつ病など精神疾患にかかった状態で、自分の感情をコントロールできないまま、自殺に至った場合には、免責期間内(本件では3年以内)の自殺であっても、死亡保険金が支払われる場合があります。このような場合、自殺した人は、自分で自由な決定をできる状態ではなかったといえるからです。これを法的な言葉で表すと「うつ病が被保険者の自由な意思決定能力を喪失ないしは著しく減弱させた結果、自殺行為に及んだものと法的に認められること」となります。
 実際に、過去の裁判で、免責期間内の自殺に対して「うつ病の罹患により、少なくとも死に関しては、自由な意思決定能力が著しく減弱していた」として、保険金の支払いが認められた例もあります。
 Aさんは、現在、保険会社を相手に保険金請求の提訴をしています。私も弁護団の一員として努力しています。皆さんのご支援をよろしくお願いいたします。


(2013年5月)

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