被未払残業代請求事件 弁護士/清洲 真理

 Aさんは、中小企業で正社員として働いていましたが、会社からは、実際の労働時間よりもはるかに少ない残業代しか支払われていませんでした。しかし、労働時間表は会社が一元管理していて、実際にどれくらい働いていたか、Aさん自身は把握できませんでした。
 そこで、Aさんは、提訴前に「証拠保全手続き」を利用しました。証拠保全手続きとは、相手方が手持ちの証拠を破棄・隠匿してしまうおそれがあり、その証拠がないと事実を証明するのが難しいような場合などに、あらかじめ証拠を調べることができるものです。Aさんの場合、会社が作成した労働時間表がなければ労働時間が証明できず、また、任意で提出を求めると破棄されてしまうおそれがありました。
 裁判所に証拠保全の申立てをして、証拠保全決定が出たため、保全手続きが実施されました。裁判官が会社に立ち入り、社長は突然のことに驚いていましたが、労働時間表があることは認め、その場でコピーして、裁判所に写しが提出されました。この手続きには、申し立てた本人や代理人が立ち会うことができます。証拠保全決定書は、手続きが行われる直前に会社に送達されるなど、会社が証拠を破棄しないよう考慮されています。申立人は、手続き終了後に、裁判所の記録を謄写して、労働時間表を入手しました。
 このようにして、Aさんは労働時間を把握し、未払残業代の計算をすることができました。Aさんは連日深夜まで残業させられたり、休日も返上して働かされるなど、異常な働き方をしていたため、未払残業代は約2年あまりで200万円以上になりました。Aさんは会社に対し、残業代など未払賃金の支払を求めて提訴しました。
 証拠が手元になくてもたたかう方法はあります。あきらめずに一度専門家にご相談ください。


(2015年12月)

戻る

home