組合員に対する賞与支給差別は不当労働行為 弁護士/杉山 潔志

 大久保自動車教習所では1994年8月の会社会長の労働組合との決別宣言以降、労使の紛争が頻発しました。会社は、業績悪化を理由に賞与を支給しなくなり、他方で、1年間の有期雇用・時間給の教習指導員(フリー社員)を雇用してきました。
 会社が組合員には2016年の年末賞与を支給せず、フリー社員に0.3か月分を支給したことが判明し、団体交渉では、会長が「お前ら」「泥棒と同じじゃ」などと組合員を罵倒した上、文書での質問を要求して交渉を打ち切りました。
 組合は、2017年3月、年末賞与支給差別と不誠実団体交渉が不当労働行為であるとして京都府労働委員会に救済を申立てました。京都府労働委員会は、「フリー社員への年末賞与の支給は低賃金に対する所得補填」などの会社の主張を認めず、組合員への0.3か月分の賞与支給を命じましたが、団体交渉については、組合の対応にも問題があったとして申立てを棄却しました。
 会社も、組合も、中央労働委員会、東京地方裁判所、東京高等裁判所、最高裁判所へと不服申し立てをしましたが、最高裁判所は、2023年5月、双方の申立を棄却し、京都府労働委員会命令が確定しました。
 組合は、たたかいの中でフリー社員の無期雇用化、組合加入を実現しました。不当労働行為を許さず、労働者の雇用と労働条件を守るだけでなく、その産業分野での雇用や産業のあり方をも提言できる労働組合へと発展することが重要と思いました。
(2023年11月)

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