「ベンチャー企業」の整理解雇で勝利和解 弁護士/井関 佳法

 SさんとNさんは、金属超微粒子の研究開発などを行っている「ベンチャー企業」といわれていた株式会社京都ナノケミカルの従業員で、Sさんは会社創業から排ガス除去装置の研究開発などに従事し技術課長代理を務め、Nさんは平成18年に入社後すぐに頭角を現わして技術課長を任される、いずれも優秀で社長の信頼も厚い従業員でした。
 ところが、平成18年に社長が死亡、会社に資金を提供していた投資ファンドから新社長が送り込まれ、大リストラが断行されました。前社長にかわいがられていたSさんとNさんも、リストラのターゲットにされ、平成18年秋に有無を言わさずに解雇を通告されました。
 ところが、先に解雇されたSさんがハローワークで求職活動中に、会社が求人を出していることを発見、SさんとNさんは、解雇の撤回を求めて労働基準監督局にあっせんを申し立てましたが、会社はこれを拒否。京都総評の労働相談センターに相談し、私が担当して訴えを起こすこととなりました。
 裁判の中で会社は、研究開発テーマのうち金属超微粒子以外の、排ガス除去装置・電子カーテンなどは成果の見込みがないとして撤退しなければならないところ、それに伴ってやむなく行うリストラだから正当であると主張しました。
 しかし、(1)SさんとNさんを解雇する一方で、会社が正職員1名と有期契約社員1名の求人をおこなっていたこと、(2)リストラの対象とならずに残された社員の数名の給料がそれまでの2倍にはね上がっていたこと、(3)解雇は、1人ずつ呼び出してその場で通告されており、解雇手続きが極めて乱暴であって、整理解雇の4要件を全く充たしていないことが明らかになりました。
 ところが、裁判の帰趨が見え始めた頃、突然、投資ファンドが会社から社長を引き上げてしまい、そのため残された社員も、社長とアルバイト1名を残して全員退職のやむなきに至るという重大事態となりました。
私たちは、無責任きわまりない投資ファンドの責任を追及すべく、社長を商法の取締役の責任で追及する検討を始めました。しかし、裁判所から和解の勧告があり、8月19日、相当額の解決金の支払いを受けることが出来ることとなり、和解に応じることとなりました。
 SさんとNさんは、この裁判の中でJMIUという労働組合に加盟して、支援を受けながら裁判を闘いました。苦しくも充実した闘いを経験し勝利和解を勝ち取ったSさんとNさんは、それぞれ、化学関連会社と教職で、心機一転頑張っています。


(2008年9月)

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