京都南法律事務所
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早わかり法律相談 債権と契約

5 相手が約束を守ってくれないときはどうすればいいの?  

 「約束もしたし、契約書もある。だけど相手が約束通りお金を払ってくれない」
 こんな場合でも、「あなた」が直接相手のところに乗り込んでいって、「嫌がる相手から無理やり」お金をとること(「自力救済」といいます)は、法律上認められていません。もし、こんなことをすると、刑法で処罰される可能性もありますから、決してしないでください。
 ではどうすればいいのでしょうか?
 一つ目は、「あなた」が行くのではなく、「国」に行ってもらうという手段があります。これを「強制執行」といいます。もっとも、強制執行をしてもらうには、手順が必要です。
 まず、強制執行には「債務名義」というものが必要です。債務名義とは、「あなたには確かに債権があります(相手には確かに債務があります)」という国のお墨付きです。債務名義を手に入れるためには、訴訟をして勝訴判決をだしてもらう、調停を申し立てて双方の合意のもとに調停調書を作ってもらう、裁判上の和解手続で和解調書を作ってもらう、支払督促をする、などいろいろな手続きがあります。また、お金を支払ってもらうことを内容とする債権の場合(従って、物の引渡しや土地の明渡しなどの場合には使えません)には、強制執行認諾文言付公正証書(ある人がある人に対してお金を払う義務があるということと、その義務を果たさなかった場合には強制執行されてもかまいませんということを内容とした公正証書)も債務名義になります。
 債務名義を手に入れたら、次は強制執行の申し立てをして、国にお金をとってもらいます。
 このように書くと簡単なようにも思えますが、債務名義をもらうための手続の選択、お金を取りはぐれないために講じるべき手続、申立のタイミングなど、実際に国にお金をとってきてもらうためには越えるべきハードルがたくさんありますし、そもそも資産も支払能力もない人からはお金をとることができないので、あらかじめ弁護士に相談するのが良いでしょう。
 二つ目は、「嫌がる相手から無理やり」お金をとるのではなく、「双方が納得して、新たな約束をして」お金を払ってもらうという手段があります。
 たとえば「すみませんが、一括では払えないので分割にしてもらえませんか」というような申込を相手がしてきた場合はどうでしょうか。
 裁判には費用も労力もかかりますし、特に急いでもいないから分割でもいいかなということもありますよね。そこであなたが「いいですよ」と承諾をすると…、「申込」と「承諾」…、そう、契約成立です。あなたは、この新たな契約に基づいて分割でお金を払ってもらうことになります(これを「裁判外の和解」といいます)。ただ、新しい契約についても、きちんと書面にするのを忘れないようにしましょう。
 このような和解交渉の場合にも、法律的にはどうなのかという点をきっちりしておかないと、有利に交渉を進められませんし、書面の内容に盛り込むべきことも多くありますから、やはり事前に弁護士に相談する方がよいのはいうまでもありません。

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