京都南法律事務所 中小企業・事業者のみなさんへ


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下請法をご存知ですか?
   下請法という法律をご存知でしょうか? 正式名称は、「下請代金支払遅延等防止法」という法律です。名前からわかるように、この法律は、下請取引における下請代金の支払遅延行為などを防止するために、昭和31年に施行された法律です。
 似たような法律に「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(いわゆる「独占禁止法」)がありますが、「下請法」はより迅速な対応が可能となっています。

 下請法は、親事業者に、以下のような義務を求めています。
①書面の交付義務
②書類の作成・保存義務
③下請代金の支払期日を定める義務
④遅延利息の支払い義務
 例えば、大手のメーカーから部品を注文(契約内容は売買でも請負でも可)された中小企業は、注文した大手のメーカーに対して、契約内容を書面で交付するように求めることができます。(①)

 また、親事業者による以下のような行為を禁止しています。
①受領拒否の禁止
②下請代金の支払遅延の禁止
③下請代金の減額の禁止
④返品の禁止
⑤買いたたきの禁止
⑥購入・利用強制の禁止
⑦報復措置の禁止
⑧有償支払原材料等の対価の早期決済の禁止
⑨割引困難な手形の交付の禁止
⑩不当な経済上の利益の提供要請の禁止
⑪不当な契約内容の健康・やり直しの禁止
 例えば、注文された商品を納品しようとしたら事情が変わったので受け取れないと言われたり、返品されたりした場合には、下請法違反になります。(①と④)
 また、取引関係のある会社から、契約とは関係のない別の商品の購入や催し物への無償での協力を求められたとしても、下請法を理由に拒否することができます。(⑩)

 なお、下請法は、建設業には適用されず、建設業法に同様の規定がなされています。その関係で相談窓口も、下請法や独占禁止法の場合は公正取引委員会や中小企業庁の担当部署になりますが、建設業法の場合には国土交通省や各都道府県になります。

  (参考HP)
  1. ポイント解説下請法(公正取引委員会・中小企業庁)
    https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/pointkaisetsu.pdf
弁護士 石井 達也

経営者保証に関するガイドライン
   「経営者保証に関するガイドライン」*1というものをご存じでしょうか?
経営者保証に関するガイドラインは、経営者の個人保証について、 (1)法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと (2)多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて約100~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること (3)保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること などを定めることにより、経営者保証の弊害を解消し、経営者による思い切った事業展開や、早期事業再生等を応援します。 第三者保証人についても、上記(2),(3)については経営者本人と同様の取扱となります。*2
「経営者保証に関するガイドライン」は、中小企業団体及び金融機関団体共通の自主的自立的な準則として、策定・公表されたもので、法的な拘束力のあるのではありません。
しかし、平成26年2月から令和2年9月までになされた累計178万件以上の新規融資の内、実に32%が経営者の保証に依存しない融資となっており、融資金額の割合では全体の48%、約20兆円を超える融資が経営者の保証に依存しない形でなされています。*3
そして、ガイドラインに基づき保証契約を解除した件数も累計で2万件を超え、ガイドラインに基づく保証債務の整理も累計で872件成立しています。
今後、中小企業と金融機関が互いに情報を公開し、経営者と法人の分離が進めば、経営者保証によることなく融資を受けることが当たり前になるかもしれません。

  注釈・引用
  1. https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline.pdf
  2. 中小企業庁https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/keieihosyou/index.ht より引用
  3. 中小企業庁「政府系金融機関における「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績【全体】(平成26年2月~令和2年9月実績)
    https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/keieihosyou/2020/201225keiei01.pdf
弁護士 石井 達也

「京都市中小企業等再起支援補助金」のお知らせ
   京都市内で事業を行っている中小企業や個人事業主に対する補助金事業が開始されました。時短要請協力金の対象外となっていた飲食業以外の企業や個人事業者も対象となっています。
 受付期間は、令和3年4月12日~令和3年7月30日です。
 詳細は、以下の京都市のホームページをご確認ください。
https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000282498.html
弁護士 石井 達也

セクハラ・パワハラの予防と解決
Q セクハラ・パワハラ問題について会社はどのように対応すべきですか。
A  男女雇用機会均等法では,職場におけるセクシュアルハラスメント対策をとることが事業主に義務付けられています。また,職場におけるメンタルヘルス対策の重要性の認識が広がり,パワーハラスメントについても職場における対策を整える必要があります。
 ハラスメント(嫌がらせ)は,相手の人格・尊厳を侵害する行為であり,被害者個人が精神疾患や退職などにより被る損害のみならず,職場環境が悪化して生産性が低下する,あるいは企業の社会的評価が低下するなど事業の存続に関わるケースもあります。
Q 会社のとるべき予防対策は、どのような内容でしょうか。
A  セクハラ・パワハラの内容及び行為者への厳正な処分の方針等を就業規則などの文書で明確化して管理職を含む従業員に配布し,周知徹底のために研修や講習を定期的に行いましょう。また,相談窓口をつくり相談に対する適切な対応をとる体制を整備しましょう。厚生労働省ホームページの規定例・体制例などをご参照ください。
Q 実際に相談があった場合はどうしたらよいですか。
A  担当者が事実関係の迅速かつ正確な確認をし,被害拡大防止のために当事者を引き離す,行為者の謝罪,被害回復をはかる,再発防止策をとるなどの対策が必要です。また,当事者等のプライバシー保護や相談・協力等を理由に不利益取り扱いをしないことの規定とその周知が必要です。
Q 会社がセクハラ・パワハラ対策をとらない場合に何か責任をとわれますか。
A  セクハラについては,必要な対策をとらず是正指導にも応じない企業は企業名公表の対象になります。セクハラ・パワハラ対策をしていない事業者は,被害者に対し不法行為責任・使用者責任に基づき損害賠償責任を負うとされた裁判例が相当数あります。
弁護士 吉田眞佐子 

日弁連・ひまわり中小企業センターのご案内
  中小企業や住宅ローンの借り手から返済条件変更の申込みがあった場合には、金融機関は、変更を行うよう努めることを定めた「中小企業金融円滑化法」は、延長されることなく、去る3月31日で廃止となりました。厳しい経済情勢が続くなか、疑問の残る処置です。
 日弁連(日本弁護士会連合会)は、中小企業の皆様にとって、弁護士がより身近で頼りがいのある存在となれるようになることを目指して、「ひまわり中小企業センター」を設置しています。その取り組みのひとつとして、初回面談30分無料相談(ひまわりほっとダイヤル)を行っています。この取り組みには、当事務所の弁護士(2名)も登録しています。
 また、売掛金回収、借入金返済・資金繰りなど、中小企業に特化したQ&Aや法律相談もHPで掲載しています。一度、HPをご覧ください。
 http://www.nichibenren.or.jp/ja/sme/about_himawari.html


売掛金の回収
Q  私の会社は、商品を取引先に継続的に供給し、代金は、毎月末日締めで翌月20日の支払いとしています。支払っていただけない取引先には、残金についての請求書を毎月欠かさず、送っています。このようにしていれば、代金が時効消滅してしまうことは、ないですね。
A  商品の売買代金の時効は2年です。ちなみに、請負代金の時効は3年です。その起算点は、権利を行使することのできる時からですので、翌月の20日となります。
 請求(催告)をすることは、時効中断の1つの方法ですが、請求をした後6か月以内に、訴訟を提起したり、調停申立をしたりなどの方法をとらないと、「中断」とはなりません。よって、請求書を送り続けても、それだけでは、時効が成立してしまいます。
 請求をする中で、取引先から、一部の代金の支払いがあった場合は、一般的には、残債務全部について時効中断となり、その時から、また2年の時効が始まるとされています。なお、この点は、取引先が、「自らが認めている部分についてのみの債務の支払い」ということを後で言ってくることも考えられ、注意が必要です。念を入れるという意味で、一番古い債務が2年前のものとなる場合は、訴訟(支払い命令の申立)を検討することが必要です。
 請求書を送ったと言っても、相手方に着いていなければ、請求(催告)の効力はありません。よって、確実を期するというという意味では、中断の効力を得るため(のちの裁判を見据えて)には、「配達証明付きの内容証明郵便」で請求することが必要です。
 時々、請求書で、「○○商店」宛てのものを見かけます。取引の相手方が、会社か個人か(この場合は、個人名も)を普段から特定しておくことが大切です。
弁護士 中尾誠 

後継者への安定的な事業承継のために
Q  従業員約20名の会社を経営しており、何とかやっています。しかし私も60歳を過ぎ、会社を後継者にどのように引き継げばよいか考えなければと思い始めています。どんな方法があるか教えてください。
A  中小企業の経営者でも高齢化が進んでいます。中小企業の場合、創業者や社長が株式の過半数を持っていることが多く、株式も財産の一つですから、あなたが亡くなれば会社の株式も他の遺産と一緒に相続されることとなります。相続人間の話し合いがまとまらなければ、後継者にと思っている方が、安定的な会社経営に必要な株式を取得できず、経営の不安定化を招く恐れがあります。
 親族を後継者とする場合には、株式を生前贈与する方法(贈与税に注意が必要)、遺言による方法(遺留分に注意が必要、議決権制限株式を活用して経営の安定化を図る手段あり)があります。
 従業員等を後継者とする場合には、株式を買ってもらうことになりますが、株式買取資金を融資を利用して用意してもらう方法があります(例えば、日本政策金融公庫等)。親族にも従業員等にも後継者がいない場合は、他社に会社を譲渡して会社を存続させる方法があります(M&A)。いずれの場合も、まず株式価格を算定しなければなりません。貸借対照表を基礎にする純資産法と損益計算書を基礎にする収益還元法があり、通常、併用して算定します。そして買手探しが必要です。
 いずれにしても事業承継のためには、経営者であるあなた自身が、動かなければなりません。必要があればご相談ください。
弁護士 井関佳法 
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