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秘密保護法問題

1 秘密保護法の成立
 2013年12月6日の臨時国会、審議が紛糾する中、秘密保護法は、自公賛成多数(賛成130票、反対82票)で可決、成立し、同月13日に公布されました。実際に適用される(施行する)のは、公布から1年以内とされています。学者などの専門家や、ジャーナリスト、映画関係者、著名人など様々な方面から反対の意見が上がり、国会前には連日多くの人が集まり、反対のデモを行うなど、国民の間でも、慎重な議論をとの声が強い中での成立でした。

2 現状
 現在、同法は、施行に向けた準備が進められています。今年1月17日に第1回情報保全諮問会議が開催され、今後の検討事項やスケジュールが示されました。第2回会議に向けて、政令や運用基準の素案が作成・検討されています。

3 問題点
 秘密保護法の主な問題点は以下の通りです。

  • 特定秘密の範囲が無限定に広がるおそれがあります。
  • いったん特定秘密に指定されると、60年以上公開されない可能性があります。
  • 広範囲の人が、秘密保護法違反として、処罰の対象となる危険性があります(実は、国会議員や一般市民も対象とされています)。
  • 未遂(実際には情報は洩れなかった)や過失(うっかり)も処罰されます。
  • 漏えい罪の処罰は、「10年以下の懲役及び1000万円以下の罰金」であり、従来の(情報漏えいを防止する)法制度と比較して、極めて重くなっています。
  • 「適正評価」という制度で、公務員や委託を受けた者のセンシティブ(知られたくない)情報が調査され、プライバシー権が侵害されるおそれがあります。
 一般市民も無関係ではなく、何が秘密に指定されたか分からないまま、特定秘密を収集したり、知ろうとすると、ある日突然自宅が捜索されたり、逮捕、起訴、有罪になり、処罰されるということがあり得るのです。

4 戦前の「軍機保護法」と類似?
 軍機保護法(1899年公布)は、軍事秘密を保護するために、民間人も処罰の対象として、それらの情報の漏えいや収集、探知を禁止しました。しかし、1937年の改正によって、秘密の範囲を陸軍大臣又は海軍大臣が定めるとされ、言論統制に利用されるようになりました。
 実際に軍機保護法違反で有罪とされた事案には、一般市民が、電車の車窓から趣味の写真撮影をしたところ、その写真に海軍航空隊の格納庫と滑走路が写りこんだ、というものもあります。また、有名な宮沢・レーン事件では、当時北大生であった宮沢氏が、趣味の旅行に出かけ、帰路についてから、旅行の見聞を、(普段から英語を学び、交流のあった)北大の外国人教師とその妻に話したことが、軍機保護法違反とされ、逮捕、起訴されました。裁判では、宮沢氏と教師夫妻の会話のうち、一体どの部分が法に違反したのかも秘密にされたままで、札幌地裁で懲役15年の有罪判決が出され、その後、上告棄却によって確定しました。
 このようなことが、秘密保護法の下、絶対に起こらないといえるのでしょうか。見せしめのような処罰をして人々を委縮させ、言論統制によって反対意見(権力にとって都合の悪い意見)を排除し、最終的には戦争に突き進んだ戦前と、同じようなことにならないと、本当にそう言えるでしょうか。
 日本国憲法施行後、秘密保護法のような、対象が広範かつ重大な処罰を伴う情報保全法制はありませんでした。かつて軍機保護法によって引き起こされた言論統制、その歴史を繰り返さないという謙虚さ、真摯さを、今の政府に感じることはできるでしょうか。反対の声を数で押し切って成立させたという態度に、国民の意見に耳を傾ける姿勢は見えるでしょうか。

5 情報は誰のもの?
 民主主義国家である日本では、主権者は、私たち国民です。この国のあり方を決めていく権限は、国民にあるのです。国民ひとりひとりが、考え、発言し、みんなで議論するためには、まず、良い情報も悪い情報も含めて、正しい情報を知ることが重要です。自由に表現する前提として、知ることが大切だから、憲法は「知る権利」を保障しているのです。
 国民が、何が秘密にされたかも分からず、正しい情報を知ることもできないままで、自由に発言したり、議論したりできるでしょうか。国のあり方を決めていくことはできるでしょうか。
 情報は、国民のものです。国民は、権力に対し、一時的に情報を預けているに過ぎません。それも、市民生活のより良い発展のために預けているのです。必要なことは、むしろ、国民に対し、情報公開の途を開いていくことです。

6 秘密保護法の廃止を!
 法律は成立しましたが、過去には、海上公安局法のように、法律が成立・交付された後、施行前に廃止された例もあります。
 秘密保護法は、部分的な改正では対応できないほど、重大な問題をはらんだ法律です。今からでも間に合います。「秘密保護法は廃止を!」の声を上げていきましょう。

(弁護士 清洲 真理)

(情報更新:2014年9月)


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