京都南法律事務所 憲法を知ろう

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別稿(1) アーミテージ第3次報告の危険性(2012.9.28)

 2012年8月15日、米国の「戦略国際研究所」(CSIS:Center for Strategic & International Studies)が、リチャード・L・アーミテージ及びジョセフ・S・ナイの連名による、いわゆる「アーミテージ第3次報告」を発表した。残念ながら、戦後の日本支配層は一貫してアメリカ支配層に従属し、その姿勢は依然として変らない。こうした事情から、ここ10数年来、日本の支配層がどこに向おうとしているかを理解するためには、アーミテージ報告の分析が不可欠である。そこで、第1次・第2次報告の概括的紹介も含めて、アーミテージ第3次報告の内容・危険性について分析した。

※(以下、*は筆者の注、ゴシック・アンダーラインも筆者)

一 アーミテージ報告の性格
 同報告は共和党・民主党両党にまたがる専門家による「超党派」の政策研究集団の報告書であり、いわば米国支配層の意向を表明しているとみるべきであろう。CSISは1962年に設立され、現在約220名の常勤スタッフを擁し、地球規模で現在の情勢、将来の見通し・変化を調査分析し、政策的イニシャティヴを発揮することをめざしている。その対象は軍事安全保障のみならず、地域の安定、エネルギー・気候問題ないし地球規模の開発・経済統合にまたがる国際的挑戦と自負している。
 アーミテージ第3次報告は冒頭部分で「よりよい世界への海図」を描くなどと自己を美化しているが、そのすぐ後で、「CSISは発足以来、世界の善を表象する力であるアメリカの突出した地位と繁栄を維持する方法を見出すことに献身してきた」と本音を述べている。3次にわたるアーミテージ報告は、いずれも米日同盟をテーマにしているが「日本のため」でないことは明白である。

二 第1次報告の内容
 第1次報告は8年前のアメリカ大統領選挙の直前である2000年10月に「米国防大学国家戦略研究所(INSS)特別報告書」という形で発表され、その後のブッシュ第一期政権、小泉政権(2001年4月26日〜)の政策を規定した。第1次報告は、ソ連崩壊後の「漂流する日米同盟」を分析し課題を提示した。日本に対して「日本が集団的自衛権を禁止していることは、同盟国間の協力にとって制約となっている。」と指摘したことで有名だが、同報告はそれにとどまらず、米英同盟を米日のモデルと考えている」と指摘して米日同盟の対等化をめざし、ガイドラインの誠実な実行・有事立法の成立を要求し、さらに政治・経済・外交に関しても要求をつきつけ、新自由主義・規制緩和・貿易自由化を要求した。小泉政権の5年半は、これを忠実に実行し、有事法制の制定等を実行したのみならず、徹底した規制緩和を行い、現在の格差・貧困の拡大を生み出した。

三 第2次報告の全体的特徴
(1)第2次報告(「米日同盟 2020年に向けアジアを正しく方向付ける」"The U.S.-Japan Alliance: Getting Asia Right through 2020")は、安倍政権発足(2006年9月26日)後4か月余り後の2007年2月16日に発表された。第2次報告は、第一次報告から2007年までの「成果」と情勢変化を総括し、2020年に向けた地球規模の米日同盟のありかたと日本に対する露骨な要求をつきつけている。日本で自公政権から民主党政権に交替しても、日本の軍事・政治・外交を基本的に規定する最大の要因のひとつである。しかしながら、2007年11月のオーストラリアの政権交代(保守連合から労働党政権へ)の例にみられるように「絶対」ではない。原発ゼロをめざす闘い・オスプレイ配備反対の闘いの例にみられるように我々の運動で揺るがすことはできるし、そうしなければならない。
(2)第2次報告は、情勢分析として中国・インドの台頭を指摘し、全体としてアメリカの影響力の低下を認めざるを得ず、その中で日本、インド、オーストラリア、シンガポール等の「自由主義」諸国、とりわけ日本の力を利用してアジアにおけるアメリカの覇権をなんとか維持しようとするものである。これはブッシュ政権がアフガニスタン戦争及びイラク戦争等に手を取られている間にアジアへの影響力が低下し、財政危機も進行する中で、中国が台頭してきたことに対する危機感のあらわれである。
 アメリカは日本の力を利用するために、日本が国連分担金、世界銀行、IMF、アジア開発銀行のいずれも2番目の資金援助国となっている事実を指摘する等、日本をおだてあげている。しかし、日本の経済力もアメリカと同様に2020年以降、徐々に低下する見込みと指摘する。
(3)そうした状況のもとで、「50年に及ぶ消極姿勢の後に、日本の新しい指導者たちは、国際システムの中で日本の高い評価を維持する、より積極的な安全保障と外交の役割を主張している。米国は、確信を持ちその方向を約束する日本を必要としている」と指摘し、安倍政権改憲・海外派兵恒久化法への動きを歓迎・鼓舞している(19頁)。
(4)なお、韓国等との歴史問題については第3次報告でも、より強い表現で強調しているが、第2次報告でも、「アジアにおける歴史問題はいまだ終っていない」とし、日本に対して「近隣諸国と協力的な未来を形作る力を持っていると確信している。しかし、その未来は、過去と客観的に向き合うという点で、双方向のものでなければならない」と指摘している。

四 第2次報告の日本への要求
 こうした全体的分析を踏まえて、同報告は日本に対して、次の経済的・軍事的要求をつきつけている。

【経済面での日本への要求】
 日本経済の問題点([1]巨額の国債残高、[2]高齢化、[3]規制緩和の不十分さ)を指摘し、アジア・太平洋のFTA(自由貿易協定)網の確立を要求している。
 日本農業については、担い手の極端な高齢化の事実を指摘したうえで、日本の農家の反発や食糧自給率向上等の世論を考慮し、この時点では、「日本農業の安楽死」を待つ、及び関税の段階的引下げの手法を取ろうとしている。(第3次報告では、TPP参加を強く要求している。)
【安全保障面での日本への要求】
 同報告での日本への要求は、「安全保障面の要求」、「日本への勧告」(「勧告」というが、実質は「命令」(should)である)、「末尾・付属文書:安全保障および軍事面での協力」という3か所の項目で未整理のまま重複して出てくるので、これらを整理統合して以下に指摘する。こうした「未整理」は同報告自体が認めており、安倍政権の登場を「絶好のチャンス」とらえて急いで発表したのが真相であろうと筆者は考えている。

  1. 集団的自衛権の行使・改憲要求の示唆
     「憲法について現在日本で行われている議論は、…心強い動きである。この議論は、われわれの統合された能力を制限する、同盟協力にたいする現存の制約を認識している。」「米国は、われわれの共有する安全保障利益が影響を受けるかも知れない分野でより大きな自由をもった安全保障パートナーの存在を願っている。」
    *注:安倍政権登場による集団的自衛権行使容認への議論の動きを踏まえ、憲法9条の制約を受けない日本の実現を願っているという意味である。全体として集団的自衛権の行使の容認、憲法9条改憲要求を事実上示唆する文言が4ケ所もでてくる
  2. 「海外派兵恒久化法」の制定・「動的展開」の要求
     「一定の条件下で日本軍の海外配備の道を開く法律それぞれの場合に特別措置法が必要とされる現行制度とは反対に)について現在進められている討論も、励まされる動きである。」(27頁)と指摘し、海外派兵恒久化法の制定を要求。
     また、「米国は、…短い予告期間で部隊を配備できる、より大きな柔軟性をもった安全保障パートナーの存在を願っている。」と述べている。
    *日本への勧告冒頭部分の「憲法問題を解決し…」と相俟って憲法9条の制約を受けない自衛隊海外派兵恒久化法の実現と「動的展開」を督促している。
    *なお、安倍政権登場直前の2006年8月、自民党政務調査会の国防部会・防衛政策検討小委員会(委員長:石破防衛大臣・当時)が「国際平和協力法案」(石破試案)をまとめ、「海外派兵恒久化法案」として大問題となったが、「石破試案」と同一内容の「国際平和協力法案」が、2010年の第174国会以来議員立法で国会上程されて衆院安全保障委員会に付託され、いつでも審議開始できる状態である事実を直視する必要がある。
  3. 「日本の国連安保理常任理事国入りの願望」について
     これについて同報告は、「自ら課した制約をめぐる日本での議論は、国連安保理常任理事国入りへの日本の願望と表裏一体である。」「常任理事国となれば、日本は時には武力行使を含む決定を他国に順守させる責任をもった意思決定機関に加わることになる。ありうる対応のすべての分野に貢献することなく意思決定に参加するというその不平等性は、日本が常任理事国となろうとする際に対処すべき問題である。」と指摘。この面からも日本が海外での武力行使に踏み切ることを要求している。
    *注:アメリカは、言いなりになる日本を安保理常任理事国にすること、そのため武力行使への制約・「自ら課した制約」=憲法9条を改憲せよという要求をおしつけている。
  4. 国防予算の大幅増大の要求
     同報告は「日本は国防予算の対GDP比では世界第134位である。」と驚くべき指摘をし、「われわれは、…日本の防衛省と自衛隊が現代化と改革を追及するにあたって充分な資源を与えられることがきわめて重要だと考えている。…日本の増大しつつある地域的・地球的な責任は、新しい能力およびそれに与えられるべき支援を必要としている。」と述べている。
  5. 「武器輸出三原則」の全面的解除を要求
     ミサイル防衛や、タイコンデロガ級イージス・ミサイル巡洋艦の後継機種CG(X)の中心システム・関連システム、関連技術の共同開発を提言し、米日の国防産業間の協力の必要を説き、その障害となる「武器輸出三原則」の全面的解除を要求している。
    *注:この時点で既に、一部解除されている。また、同報告末尾「付属文書」では、「日本の多額の科学技術予算から国防関連技術の研究計画に資金を振り向けることを認めるべきである。」と指摘し、とりわけ弾道ミサイル防衛の強化を要求している。憲法9条の改悪は国民生活への圧迫と表裏一体であることを示している。第3次報告勧告三、6でも同様の要求をしている。
  6. 日軍の統合運用
     米太平洋軍への日本防衛省代表の配置、日本の統合幕僚監部への米軍代表の配置を、日本の集団的自衛権の議論いかんにかかわらず実施すべきとしている。日米ガイドラインによる「日米調整メカニズム」を発展させ、「共同統合運用調整所」の全面的実行で、「作戦レベル」まで拡大することを要求している。
  7. 情報の共有・より大量の情報を処理する能力の向上
  8. 宇宙空間の安全保障協力
  9. F22戦闘機の一個飛行中隊の日本への配備
  10. 国家機密情報保護体制の要求
     第2次報告末尾「付属文書」においても、「米日の国防産業間の協力政府間の機密情報の秘密保持のための包括的な協定を結ぶことはこの方向での重要な一歩である(23頁)と指摘。この点は第3次報告でも要求している(勧告 一8)
  11. 国家安全保障体制(日本版NSC)整備を要求
     「勧告」の筆頭で、「日本は、もっとも効果的な意思決定を可能にするように、国家安全保障の制度と官僚機構を引き続き強化すべきである」と指摘し、機密情報・情報の安全性を維持しながら、迅速、機敏かつ柔軟に運営する能力をもつことを要求。
    *自民党・安倍内閣はこの要求に素早く応え、アーミテージ第二次報告が出されたわずか11日後の2007年2月27日、日本版NSC「国家安全保障に関する官邸機能強化会議」報告書を発表し、法案も事実上完成している。同報告の検討は2006年11月に開始され7回の会議を経て、アーミテージ第2次報告の直後に発表されたものである。水面下での連絡をとりながら準備を進めた疑いがある。この問題については第3次報告の勧告三、7でも強調している。
    *「米日同盟への勧告」は省略するが、核抑止力の強調と、包括的な自由貿易協定交渉を開始する意思があることを宣言すべきであるとしている点がポイントである。

五 第3次報告の特徴と危険性
 第3次報告(以下「報告」という)の結論部分は、末尾別紙[「日米同盟〜アジアに確かな安定を」の「勧告」部分翻訳・改訂版]のとおりである。報告の原文では項目の番号は付されていないが、分析・引用の便宜上、筆者において、「一、日本に対する勧告」「二、米日同盟に対する勧告」「三、米国に対する勧告」の番号を付し、さらに各項目の中で、「1、2…」の番号を付した。以下の分析で、この番号を引用するので、「勧告」の当該部分を確認しながら本稿を読んでいただきたい。

  1.  第1の特徴は、第1次・2次報告と同様、軍事・安全保障問題のみならず、外交・経済等の全体にわたって分析し勧告を出している点である。

  2.  報告の第2の特徴は、第1次報告と同様、現在の日米同盟の状況を「漂流」と評価している点である(報告・序論の冒頭)。今回の「漂流」という評価は、沖縄問題・原発問題等での民主党政権の一時的な「ぶれ」や国民世論の大きな盛り上がりを念頭に置いているものと思われる。こうした時期に安倍晋三が再び自民党総裁として登場したことは、厳しく警戒する必要がある。

  3.  報告の第3の特徴は、原発の再稼働・運転でリーダーシップを地球規模で発揮すべきという点を、冒頭で強調している点である(一1及び二1)。この点については、野田政権が、瞬間的かつ欺瞞的にせよ「原発ゼロ」を打ち出そうとしたことに対して、財界三団体が即座に反発し、野田内閣がこれに屈した点が想起される。

  4.  第4に、安全保障・軍事面での勧告は、全体として日米同盟の強化を要求し、安全保障・軍事面における日本の「役割・任務・能力」の「見直し」を要求し、「日本は、その役割・使命を新たに見直し、(中近東を含む)地域的偶発紛争における日本防衛及び米国との共同防衛を責任範囲に含めるよう拡大すべきである。」としている。
     そして、「日本領土の範囲をはるかに超えて、より積極的、相互分担、相互運用可能なISR(情報、監視、偵察)の能力及び運用を要求している。具体的例として、中国と東南アジア諸国との紛争地域である「南シナ海」で「米日共同監視」という新たな任務を日本に課している(一7)。
    *この点については、10月5日「第一回ASEAN拡大海洋フォーラム」が開催され、ASEAN10カ国のほかに、EAS参加国(EUを含む)のうち日・中・米・ロ・豪・印・ニュージーランドが参加し、中国代表が国連憲章遵守を強調し平和的解決をめざすこと、ヴィエトナム代表が「領有権以上に、協力可能性を追求すべき」と発言したこと、日本の鶴岡外務省審議官が「力は正義という考え方は断固拒否すべき・東南アジア友好条約(TAC)を例にあげてASEANが中心的役割を果たすべき」と発言したのは重要である。「米日共同監視」という方向はとるべきでない。

  5.  また、「平時・緊張時・危機的状況時そして戦時のすべての局面を通じて、安全保障について米軍・自衛隊の全面的協力可能にすることは、日本側の責任である。」と指摘している。戦時も含めて自衛隊の「全面的協力」を要求していることは重大な内容である。
     こうした命令の特徴は、「集団的自衛権行使の容認」は当然の前提として、それをはるかに超えて、日本が米国と一緒の戦争に全面的に参加することを要求している点である(一6を参照)。

  6. 集団的自衛権行使の容認について
    (1) 「集団的自衛権行使」については、報告本文の「勧告」の少し前で「集団的自衛権行使禁止は米日同盟の妨害物となっている」と指摘している。
    (2) また注目すべきは東北大震災における「トモダチ作戦」が、事実上、集団的自衛権行使の演習の実践であったと告白している点である(二8)。「トモダチ作戦」についての「友好」宣伝の欺瞞性が明白になったのである。
    (3) また勧告は、PKO五原則を緩和し「より全面的にPKOに参加することを可能にするために、日本は、必要あれば武力行使も含めて文民及び他国のPKO要員を防護できるよう、PKO要員の権限を拡大すべき。」と、集団的自衛権行使に踏み込むことを要求している(一9)。

  7. 「日米共同演習」・「日米の統合運用」
     次に報告は、日米あるいは米国の他の同盟国も含めた「共同演習」の強化を強調している。これとの関係で「財政問題との関係も考慮」と称して「日米の統合運用」を強調している。既に、日本の航空自衛隊司令部は横田の米軍基地に移転し「統合運用」が開始されている。陸上自衛隊司令部も本年中に在日米陸軍司令部(座間)に移転と報道されている。「統合運用性」は、今回の報告のキーワードのひとつである。
    *前述のように第2次報告でも、「日米統合運用」を要求している。

  8. 武器共同開発と秘密保全法制定の要求
     日本の武器輸出三原則緩和のもとで、欧米諸国も含めた「武器共同開発」の推進を提起している(三5)。統合運用・武器共同開発との関係で、秘密保護法制の整備を強く要求(一8)。これが「秘密保全法」制定への強いプレッシャーになると思われる。

  9. 日米同盟強化の「体制の問題」として勧告は日米双方に大統領あるいは内閣総理大臣直轄の人物の任命を要求している(三7)。
    *この点については2007年の第2次報告に安倍内閣が即座に反応して日本版NSC報告を出したことは前述のとおりである。日本版NSC報告では「国家安全保障問題担当総理補佐官」(自衛隊出身者を想定と思われる)に事実上の全面的な権限を与える内容となっている。安倍が再度自民党総裁になった情勢下では警戒する必要がある。

  10. 「歴史問題」解決の要求
     最後に報告は、日韓の「歴史問題」の解決を強く迫っている点に注意する必要がある(一4及び二3、三3)。なお北朝鮮問題について報告は「同盟は、非核化・拉致問題のみならず、食糧安保・災害支援・公衆衛生を含め包括的な人道問題に、韓国とともに取り組まなければならない。」と述べ、日本の単純な制裁強化論とニュアンスを異にしている(二5)。

  11. 経済面での要求
    (1) 日本に対してTPP参加は当然として、さらに包括的な「経済・エネルギー・安全保障に関する包括協定(CEESA)」参加を要求し(一、3)、「日本のTPP参加は、米国の戦略的目標と把握すべき」と指摘している(三2)。
    (2) エネルギー問題を「安全保障問題」の一環として位置付け
     また、第2次報告でも指摘していたが、今回の報告の特徴としてエネルギー問題を重視し、これを「安全保障問題」の一環として位置付けていることが重要である(二2、三1)。これは一方で原発に対する反発、中東石油依存からの脱却、北米大陸でシェール・ガスが大量に発見され、日本への輸出増大、あるいは北米でのガス田開発に日本の資本投下を導入したいとのアメリカの思惑がある。

以上
アーミテージ第3次報告(2012年8月15日)
「日米同盟〜アジアに確かな安定を」「勧告」部分翻訳改訂版(弁護士 岩佐英夫)

一 日本に対する勧告

  1.  原子力発電の慎重な再開は、日本にとって正しい責任あるステップである。原子炉の再稼働は、2020年までに二酸化炭素25%削減という日本政府の意欲的な目標に合致する唯一の道である。再稼働はまた、高エネルギーコスト及び円高が、エネルギーに依存する重要産業を日本から追い出すことにならないためにも重要である。フクシマの教訓を考慮し、日本政府は、安全な原子炉設計と適正な規制手続の推進においてリーダーシップを発揮すべきである。
  2.  日本政府は、ペルシャ湾の航行を守るための海賊との闘い・シーレーンの安全確保のための多国間の努力に積極的に関与し続けるべきである。また、イランの核計画のような地域平和への脅威に立ち向かうべきである。
  3.  日本は、TPP交渉参加のみならず、たとえば本報告記述の「経済・エネルギー・安全保障に関する包括協定(CEESA)」提案のような、もっと意欲的かつ包括的な交渉を検討すべきである。
  4.  米日同盟がその潜在的可能性を全面的に実現するために、日本は、韓国との関係を複雑にし続けている歴史問題に正面から立ち向かうべきである。日本政府は、長期的・戦略的な展望をふまえた相互関係を検討すべきであり、不必要な政治的声明を出すことは避けるべきである。三極防衛協力を高めるために日韓両国政府は、懸案の「軍事情報総合安全協定」(General Security of Military Information Agreement:GSOMIA)及び「物品役務相互提供協定」(Acquisition and Cross-Serving Agreement:ACSA)の防衛協定の結論を出すべく努力し、三極軍事関与を継続すべきである。
  5.  日本政府は、地域フォーラムへの関与、特にインド、オーストラリア、フィリピン、台湾等の民主的パートナー国家との関与を継続すべきである。
  6.  日本は、その役割・任務を新たに見直し、地域的偶発紛争における日本防衛及び米国との共同防衛を責任範囲に含めるよう拡大すべきである。
     (米国関連の)同盟諸国は(日本に対して)、日本領土の範囲をはるかに超えて、より積極的、相互分担、相互運用可能なISR(情報、監視、偵察)の能力及び運用を要求している。
     平時・緊張時・危機的状況時そして戦時のすべての局面を通じて、安全保障について米軍・自衛隊の全面的協力を可能にすることは、日本側の責任である。
  7.  イランがホルムズ海峡を閉鎖する意図を示唆する最初の兆候が見られた場合は、日本は同地域へ掃海艇を単独派遣すべきである。航海の自由を確保するために、日本は米国と協力して南シナ海監視を増強すべきである。
  8.  日本政府は、相互及び国内的な、安全保障上の秘密・機密情報を防護する防衛省の法的能力を高めるべきである。
  9.  より全面的にPKOに参加することを可能にするために、日本は、必要あれば武力行使も含めて文民及び他国のPKO要員を防護できるよう、PKO要員の権限を拡大すべきである。

二 米日同盟に対する勧告

  1.  フクシマの教訓に学び、日米両政府は、核エネルギーの研究・発展の協力を再活性化し、安全な原子炉設計・適正な運転規制を地球規模で推進すべきである。
  2.  米国・日本は、天然資源問題を安全保障同盟関係の一部として位置づけなければならい。日米はメタンハイドレイトの研究・開発のための協力を推進し、代替エネルギー技術の発展に参画しなければならない。
  3.  米日韓政府は、歴史問題について双方向対話を拡大し、こうした対話から、これらの敏感な問題への接近方法に関する合意を探り、政治家及び政府のリーダーの行動に対する示唆・勧告を得るべきである。こうした努力により、これらの困難な問題に関する最良の実践のための規範・原理の合意を探求しなければならない。
  4.  (米日)同盟は、中国の再台頭に対応する能力・政策を発展させなければならない。同盟が中国の平和的経済的繁栄から得るものは多い。しかしながら、中国の継続的な経済高成長と政治的安定は保障されていない。同盟は、中国の今後拡大する核心的利益・変遷する路線・予想される将来の幅広い射程に適応できる政策・能力を持たなければならない。
  5.  特に、米日同盟の関与により国際人道法・市民社会を発展させることが可能なミャンマー・カンボジア・ヴィエトナムにおいては、人権に関する具体的な行動課題を発展させることは賞賛さるべきゴールである。
     北朝鮮に関しては、同盟は、非核化・拉致問題のみならず、食糧安保・災害支援・公衆衛生を含め包括的な人道問題に、韓国とともに取り組まなければならない。
  6.  米日は、「役割・任務・能力」に関する対話を通じて、「エアシー・バトル(空海戦闘)」「動的防衛」のような概念を共有しなければならない。これまでのところ、こうした概念に対する上級レベルの注目は不十分であった。
     より広い地理的枠組み、及び軍事的・政治的・経済的な国力の包括的な連携を含めて、役割・使命を新たに見直すべきである。
  7.  米陸軍・海兵隊と自衛隊は協力して相互運用性を進展させ、水陸両用性を備え、敏捷かつ展開能力のある戦力態勢をめざさなければならない。
  8.  米日は、民間空港を交替で活用し、「トモダチ作戦」から学んだ教訓を試し、水陸両用能力を高めることにより、2国間共同防衛演習の質を改善しなければならない。
     米国・日本は、グアム・北マリアナ諸島(CNMI)・オーストラリアでの訓練の機会を、2国間でも他のパートナー諸国との間でも最大限に活用すべきである。
  9.  米日は、将来の武器共同開発の機会をふやすべきである。短期的な武器装備計画は、相互の利益及び作戦上の要求に沿った特定の計画を考慮しなければならない。
     同盟は、共同開発のための長期的作戦要求を同定一体化しなければならない。
  10.  米日両国は、米国の中軸的同盟諸国に関する「拡大抑止」の確実性・能力について、米日が同じレベルの信頼性を確保するために(おそらく韓国も含めて)、「拡張抑止」に関する対話を再度活発に行わなければならない。
  11.  米日は、情報保護についての共通基準を研究・実施するためにコンピューターネットワーク(サイバー)安全保障共同センターを創設すべきである。

三 米国に対する勧告

  1.  米国は、資源ナショナリズムに訴えたり、民間部門の液化天然ガス(LNG)輸出計画を禁止したりしてはならない。
     危機の時代、米国は、継続的・安定的にLNGを同盟国に提供しなければならない。米国連邦議会は、自由貿易協定(FTA)締結国にのみエネルギー輸出を自動承認する条項を削除する修正をして、日本を他の天然ガス消費国と同等の立場におかなければならない。
  2.  TPP交渉のリーダー国として、米国は、もっと交渉手続や協定文書草稿に関心を向けなければならない。日本のTPP参加は、米国の戦略的目標と把握すべきである。
  3.  米国は、日韓の敏感な歴史問題について判定をくだすべきではない。しかしながら、米国は、両国が緊張を緩和し且つ中核的な国家安全利害に再度注意を集中するよう、最大限の外交努力をつくさなければならない。
  4.  在日米軍(USFJ)は、日本防衛の具体的責任をもつべきである。米国は、在日米軍に対して、より大きな責任・使命感を与える必要がある。
  5.  米国は、(日本の)"武器輸出三原則"緩和による利益を活かし、日本の防衛産業が、その技術を米国だけでなくオーストラリア等の(アメリカの)他の同盟国に対しても輸出することを奨励すべきである。米国は、対外武器輸出(FMS、即ち「対外有償軍事援助」)手続における古臭い障害を見直さなければならない。
  6.  米国は、共同研究開発・技術協力をさらに推進するために、「科学技術フォーラム(STF)」を、政策中心の「安全保障協議委員会」機構と統合・再活性化し改善しなければならない。また、タイムリー且つ戦略的で一貫した決定を確実にするために、武器売却機構を改善し円滑にするために努力しなければならない。
  7.  米国は、米日同盟強化に責任を負う人物を大統領任命で選ばなければならない。日本も同様の構想を抱いているかもしれない

以上
(弁護士 岩佐 英夫)

(情報更新:2015年8月)


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