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アメリカ従属の戦争法案の背景:アーミテージ報告
  1.  安倍政権は、日本を戦争する国に造りかえる戦争法案を圧倒的な国民世論を無視して強行しようとしています。日本の国会提出・国民への説明より前に、アメリカ議会演説で「夏までに成立」を約束した安倍首相の従属ぶりに、多くの日本国民が怒り、あきれかえっています。
     今、戦争法案強行の背景に、アメリカ支配層の要求があることを直視することが重要です。そのことを明快に示すのがアーミテージ報告です。

  2. 「アーミテージ報告」の性格
     同報告は、アメリカのシンクタンク「戦略国際研究所(CSIS)」の報告書ですが、そのメンバーの1人であるアーミテージ(ブッシュ第1次政権の副国務長官)が著名なことから「アーミテージ報告」と呼ばれています。CSISは共和党・民主党両党の「超党派」の政策研究集団であり、アメリカの覇権維持のための、米国支配層の要求を表明しています。それは軍事・外交面のみならず経済・原発問題等にも及んでいます。
     同報告は、2000年10月(小泉政権誕生半年前)、2007年2月(安倍第1次政権時)、2012年8月(民主党政権末期・安倍自民党総裁復帰の時期)の3回にわたり報告を発表し、日本に対して集団的自衛権行使容認・改憲等を執拗に迫ってきました。

  3. 第1次〜第3次報告の概要
     第1次報告は、「日本が集団的自衛権を禁止していることは、同盟国間の協力にとって制約」と指摘したことで有名ですが、同時に「米英同盟を米日のモデルと考えている」との指摘が重要です。国連憲章に明白に違反し世界中が反対した2003年のイラク空爆に、米国に従って参加したのが英国であったことを想起すべきです。アメリカが日本に対して「対等に血を流す同盟」を要求する原点がここにみられます。

     第2次報告は、次のような要求を日本につきつけています。
     *集団的自衛権の行使・改憲要求を示唆
     *「海外派兵恒久化法」の制定
     *「武器輸出三原則」の全面的解除
     *米日軍の統合運用
     *国家機密情報保護体制
     *国家安全保障体制(日本版NSC)整備
    等々です。これは、その後の日本の動きを彷彿とさせます。

     第3次報告は,現在の戦争法案の中核部分を露骨に日本に要求しており、その内容を精読すると、この報告通りに日本が進行していることに、驚きを通り越して情けなくなってきます。
    • とりわけ、同報告末尾の「日本に対する勧告」で、「平時・緊張時・危機的状況時そして戦時のすべての局面を通じて、安全保障について米軍・自衛隊の全面的協力を可能にすることは、日本側の責任」と述べ、戦時も含め自衛隊の「全面的協力」を要求していることは重大です。文字通りアメリカと対等に血を流す同盟の要求です。
    • ホルムズ海峡で機雷敷設の兆候が見られただけで直ちに自衛隊掃海艇の派遣を要求。
    • 中国と東南アジア諸国との紛争地域である「南シナ海」で「米日共同監視」という新たな任務を日本に課しています。
    • PKO拡大との関係では、武器使用拡大とセットで「駆け付け警護」を要求。
    • 武器共同開発と秘密保全法制定の要求は第2次報告と同様。
    • 同勧告冒頭で、日本は原発の再稼働でリーダーシップを地球規模で発揮すべきとしている点に唖然とします。安倍政権が原発ゼロの国民の願いを無視し原発再稼働・輸出に邁進する背景を示しています。
    • TPPについても、もっと全面的包括的な「経済・エネルギー・安全保障に関する包括協定(CEES)」を要求しています。

☆参照:第1次ないし第3次報告の全体にわたる詳細な分析については、別稿(1)「アーミテージ第3次報告の危険性」(2012年9月28日の原稿)を参照してください。現在の戦争法案とアーミテージ第3次報告との関係に絞った分析については、別稿(2)「戦争立法の背景・アーミテージ報告について」(2015年5月28日)を参照してください。
以上
(弁護士 岩佐 英夫)

(情報更新:2015年8月)


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