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地方自治について

道州制の導入
 自民党・日本国憲法改正草案によれば、地方自治体の種類を、基礎地方自治体とこれを包括する広域地方自治体の2つとしています。基礎地方自治体とは市町村のことです。広域地方自治体とは都道府県のことではなく、「道州」のことです。都道府県を廃止して、全国を7〜10前後の道と州を新設することになります(京都府の場合は、近畿州の一部となると思われます)。
 自民党は、「憲法を改正しなくても道州制を導入できる」としていますが、現行憲法に定める「地方自治の本旨」から考えて、道州は地方公共団体とは言えないものです。そのことは、最高裁判例が、憲法上の地方公共団体とは、「事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもつているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権…等地方自治の基本的権能を附与された地域団体」としていることからも明らかです。「共同体意識」の基盤とは言えないものだからです。
 この間の国が主導する市町村合併の動きの中、3,218(2002年4月現在)あった市町村数が、現在では1,718(2014年4月現在)となっており、その結果、都道府県の担当する市町村の数が減少し、その役割をこれまでのように維持するのが妥当かということが道州制導入の要因の1つであることは事実です。しかし、これも、道州制の導入の基盤整備として市町村合併を推進したということが先であり、原因と結果とは逆です。
 道州制の導入に積極的なのは、財界です。「そのため(将来にわたる成長の実現)には、各地域がそれぞれの持ち味を活かしたより機動的な地域経営を自らの権限と責任で行う道を拓くとともに、都道府県の枠を超えた広域的な地域づくりにより、その力を最大限発揮できる新たな国の形―道州制を実現する必要がある」(道州制推進基本法の早期制定を求める・2014年3月31日経団連他)としています。
 都道府県を解体し、行政をスリム化することにより、ねん出された財源を企業活動に振り当てることがその大きな目的であり、そこには、住民の立場に立った、地方自治の視点はありません。また、経済活動の活性化といっても、道州の中心都市だけが潤い、他の都市は取り残されることになることは、この間の市町村合併の経験からも明らかです。

道州の「独立性」
 改正草案によれば、道州に限られませんが、「地方自治体の経費は、…自主的な財源をもって充てることを基本とする」とされています。
 自主的な財源の目安となる年間県民所得で見れば、430万円(東京都)、327万円(滋賀県)…218万円(高知県)、203万円(沖縄県)となります。成立した道州間において、自主的財源に大きな格差が生じることになります。道州の施策はその経費で賄うことが基本となるわけですから、道州間で、住民サービスに格差が生じることが是認されることになります。
 この点に関して、我が国のこれからのビジョンとして提示された「日本21世紀ビジョン」(経済財政諮問会議の報告書・2005年)によれば、「地域サービスの受益と税負担を比較した上で、住む地域をある程度自由に選択する「足による投票」が容易となる」としています。より高い地域サービスを受けたければ、それに見合う税金を支払えばよい、住みたい地域に引っ越しをすればよい(足による投票)というものです。
 誰に対しても、「ナショナルミニマム」を国家が保障するという考えは、投げ捨てられています。

住民の義務
 改正草案によれば、「地方自治の本旨」の中に、「住民は、その属する地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を公平に分担する義務を負う」として、住民の義務・責任を強調しています。
 このような規定は、改正草案が、「国民の責務」として、「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」としていることに通じるもので、自民党の改正案に通底する思想です。
 憲法で規定すべきことは、国民(住民)の義務・責任ではなく、権利なのです。


(参考)
・日本国憲法改正草案Q&A(増補版)・自由民主党憲法改正推進本部・平成25年10月
 https://www.jimin.jp/policy/pamphlet/pdf/kenpou_qa.pdf
 −やはり、自民党の改正草案の内容を知ることが必要と思います。

「憲法改悪をゆるすな」自治労連弁護団意見書(2013年2月)
 −改正草案に対する全般的な意見書ですが、特に地方自治の点については、詳しく論じています。

(弁護士 中尾 誠)

(情報更新:2014年9月)


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