京都南法律事務所 憲法を知ろう

私の中の憲法 憲法を知ろう

現代の踏み絵を許さぬために
 ―マラソン署名事件から沈黙の自由(憲法19条)を考える―

 国や地方自治体が、国民や市民に、内心の表明を強いると言うこと許されるでしょうか。

 実は、2012年3月に開催された第1回京都マラソンの準備の一環で、京都市が全市民を対象に、マラソン当日のマイカー自粛の意向確認を行いました。広くない京都盆地でのフルマラソンの実施には大変な交通渋滞の伴うことが予測され、対策に追われていたのです。市政協力委員(特別職公務員)を動員して、町内会ルートを利用して、実名記入方式のアンケート調査が行われました。同じアンケートに、マイカー自粛の他、「歩く街京都」という門川市長の政策への賛否を問う欄が設けられ、賛成の人はチェックするよう求めていました。全戸に回ってきますから、署名してチェックを付ければ賛成の、署名してチェックを付けなければ反対の、署名しなければ賛成しない意思表明と理解されるでしょう。オンブズマンの市民ウォッチャー京都が、住民裁判でこの問題を追及しています。

 権力者がが、私たち市民に、推し進めようとする政策の賛否の意思表明を強いるということは許されるでしょうか。「歩く街京都」の政策自体は、悪くないかも知れません。しかし、賛否の表明に躊躇を感じる重たい問題もあるでしょう。憲法19条の思想良心の自由は、沈黙の自由を保障しています。キリシタン弾圧の踏み絵を思い起こすまでもなく、権力者に市民の内心をのぞき込ませてはなりません。権力を持つ者がしてはならないことでしょう。

 学校で日の丸君が代をめぐって、教職員が起立や斉唱を強制され、従わぬ者が処分を受けています。思想良心の自由の侵害をも掲げた闘いが続けられています。
 橋下市長が大阪市職員に政治信条などについてアンケート調査を行いました。多くの市職員が思想良心の自由の侵害を裁判で訴えています。
 一般の市民にも矛先が向けられてきたのでしょうか?芽の内に摘み取って、間違ってもこんなことがまかり通らぬよう監視を強めたいと思います。

(弁護士 井関 佳法)

(情報更新:2014年9月)


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