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日本国憲法における基本的人権

 日本国憲法第11条は「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。」と規定し、また、第97条は「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」と規定しています。
 日本国憲法には

    (1)幸福追求権や法の下の平等という包括的基本権
    (2)自由権
     *精神的自由権
      内面的精神の自由(思想・良心の自由、信教の自由、学問の自由)
      外面的精神の自由(表現の自由、集会・結社の自由、通信の秘密)
     *経済的自由権
      居住・移転の自由、移動・国籍離脱の自由、職業選択の自由、財産権の保障
     *身体的自由権
      奴隷的拘束・苦役からの自由、刑罰以外の意に反する使役の禁止、法定手続きの保障、公務員による拷問・残虐な刑罰の禁止、提示裁判の公開原則と刑事被告人の権利の保障
    (3)社会権   
      労働基本権や社会保障を受ける権利、生存権、教育を受ける権利、勤労の権利、居住の権利など
    (4)参政権   
      選挙権や被選挙権、公務員の選定・罷免の権利、憲法改正や地方自治特別法制定同意権などの国民投票や国民審査など
    (5)国務請求・受益権   
      請願権、裁判を受ける権利、刑事補償請求権、国家賠償・補償請求権、直接請求権など
    (6)平和的生存権
を保障する規定を置いており、これらの権利が基本的人権を構成しています。
 基本的人権は、人が人であることによって基づいて享有する侵すことのできない基本的な権利(天賦の人権)と考えられています。このような考え方は、アメリカ独立革命やフランス革命、恐怖と欠乏から免れ人間としての尊厳や生活を実現するための人類の多年にわたるたたかいの中で自覚されて、かちとられ、発展してきました。日本国憲法の保障する基本的人権は、このような原理に基づいているのです。したがって、国会や地方議会の多数決によって成立する法律や条例によっても、基本的人権を恣意的に制限することは許されません。この点で、戦前の大日本帝国憲法が法律の範囲内で臣民の権利を認めていた権利保障のあり方と根本的に異なっています。日本国憲法は、国民が享有する基本的人権を保障するため、憲法の条規に反する法律、命令、詔勅、国務に関するその他の行為の全部又は一部が効力を有しないと宣言し(第98条1項)、裁判所に法律や命令、規則、処分が憲法に適合しているか否かを決定する権限を与えています(第81条)。
 他方で、日本国憲法は、国民が自由と権利を濫用してはならず、公共の福祉のために利用する責任を負う旨の規定を置いています(第12条後段、第13条)。公共の福祉は、居住・移転・職業選択の自由を制限し(第22条)、財産権の内容を定める原理としても用いられています(第29条)。そこで、基本的人権を制約する公共の福祉の内容が問題となりますが、基本的人権の性質上、権力を行使する者が公共の福祉の内容を自由・勝手に決めることはできません。公共の福祉は、人権を内在的に制約し、または政策的に規制する原理であると考えられています。内在的制約は、ある人の権利の行使が他の人の権利を侵害しないようにし、基本的な憲法秩序を害さないことを目的とする制約で、消極目的規制、自由国家的公共の福祉とも言われ、内心の自由を除くすべての人権に適用するとされています。表現の自由の保障があるといっても、人種差別や民族差別を助長するようなヘイト・スピーチが許されないとの規制は、このような考え方に基いています。
 これに対し、政策的規制は、形式的公平に伴う弊害を除去して個人の尊厳を護り、社会・経済全体の向上を図るという観点から行われる規制で、弱者保護や社会の調和ある発展を実現するために経済的自由権を政策的に規制するもので、積極目的規制、社会国家的公共の福祉などとも言われています。
 日本国憲法は国民に基本的人権を侵すことのできない永久の権利として保障すると謳っていますが、基本的人権の蹂躙に抗して、これを護る力がなければ憲法の人権保障は絵に描いた餅となってしまいます。日本国憲法は、この点についても、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」との規定(第12条前段)を置いています。日本国憲法は、基本的人権の保障によって利益を受ける国民が自らの力によって憲法を保持するように訴えているのです。

(弁護士 杉山 潔志)

(情報更新:2015年2月)


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