京都南法律事務所 新法・改正法の紹介

改正労働基準法
(弁護士 毛利 崇)
1 時間外労働賃金について
 基本給は、所定労働時間(雇用契約で約束した労働時間)に対応する賃金ですので、労働者が使用者の指示に基づいて所定労働時間を超えて働いた場合(所定時間外労働をした場合)には、その時間に対応する賃金を基本給とは別に支払をしなければなりません。この賃金を所定時間外労働賃金といいます。
 
2 割増賃金について
 
 1日の労働時間のうち8時間を超えて働いた部分(法定時間外労働時間)については、通常の時給にその25%以上の金員を上乗せした賃金を支払わなければなりません。この上乗せ部分の賃金を割増賃金といいます。
 例えば、労働者が、所定労働時間が9時〜17時(途中1時間休憩)、時給1,000円の職場で19時まで働いた場合、9時から17時まで働いた7時間分(休憩時間1時間除く)の給与7,000円に加えて、17時から19時まで働いた2時間分の時間外労働賃金2,000円、さらに、18時から19時に働いた部分は1日8時間を超えて働いていますから、割増賃金250円以上を支払ってもらわなければなりません。
 このように、1日8時間以上働いた場合に法律上割増賃金が発生するのは、長時間労働を抑制して労働者の命と健康を守ることが目的です。
 
3 労働基準法が変わりました。
 
 この労働者の命と健康を守るという目的をさらに推し進めるために、労働基準法が2010年4月1日から変更されて  
(1) 1ヶ月に60時間を超えて法定時間外労働を行った場合には、50%以上の割増賃金を支払わなければならない。
(2) 1ヶ月に45時間を超えて法定時間外労働を行った場合には、25%を超える割増賃金を支払うよう努力しなければならない。
というように変わりました。
 つまり、60時間を超える部分については、以前の25%にさらに25%上乗せをしなければならなくなり、45時間を超えて60時間以下の部分についても25%にさらに上乗せするよう努力をしなさいということになりました。
 但し、(1)については、中小企業(下記の表のどれかに当てはまる企業)は、適用を猶予されています。
 
  資本金または出資の額 常時使用する労働者
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他 3億円以下 300人以下
 さらに(1)については、25%を上乗せする代わりに、60時間を超える法定時間外労働時間の4分の1に相当する有給休暇を与えてもよいということになっています。
 
4 改正の不十分点
 
 労働者の命と健康を守るために、割増賃金を増やすという改正は、決して後退ではありませんが、しかし、一方で、月60時間を超える法定時間外労働を前提としているところが問題だと思います。本当に労働者の命と健康を守るためには総労働時間の規制が必要です。例えばEUでは、1週間の労働時間の上限が48時間(所定労働時間と所定時間外労働時間の合計です)と決められています。このような規制の中でも、ヨーロッパの企業は、グローバル経済の中できちんと生き残っているのです。
情報更新:2010年11月
 
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