京都南法律事務所 新法・改正法の紹介

マンション建替え円滑化法の改正
 2014年6月18日、マンション建替え円滑化法が改正され、同年12月24日施行予定です。法改正の背景には、日本に存在する約590万戸のマンションのうち、昭和56年5月31日以前の旧耐震基準で建築されたマンションが約106万戸存在し、その多くが耐震不足と考えられているにもかかわらず、これまでに建替えられたのは183件、約1万4000戸にとどまっており、巨大地震の発生に備えて耐震化の促進が緊急の課題となっているという事情があります。
 これまでのマンションの建替えは、(1)建物区分所有法、(2)被災区分所有建物再建特別措置法(被災マンション法)、(3)改正前のマンション建替え円滑法にもとづいて行なわれてきました。被災マンション法は大規模災害で全部が滅失した区分所有建物だけが対象であり、老朽化したマンションや耐震不足マンションは、区分所有法や改正前のマンション建替え円滑法によって建替えをするか、建築物耐震改修促進法にもとづく制度を利用した耐震改修を行なうこととされていました。
 建物区分所有法による建替えの場合、集会の2か月以上前に集会召集通知をして、集会の1か月以上前に説明会を行い、集会で区分所有者及び議決権の5分の4以上の多数で建物建替え決議をし、建替えに参加するか否かの回答を求め、参加しない区分所有者に区分所有権の売渡し請求をして、全員が建物建替え同意の状態にした後、建物の取壊しを行なって、建替えを行ないます。建替え決議、売渡し請求については建物区分所有法の規定(第62条、第63条)によって行ないますが、建替え自体は民法の一般規定にもとづいて実行することになります。
 マンション建替え円滑化法は、建物区分所有法にもとづく建替え決議を経た後、建替え合意者でマンション建替事業を行なうことができ、その際法人格のあるマンション建替組合を設立することができます。建替組合は、建替不参加の区分所有者から区分所有権を買い取り、5分の4以上の賛成で権利変換計画を決議することになり、決議された権利変換期日にマンションは建替組合の所有となり、区分所有権に設定されていた賃借権、担保権は消滅します。その上で、マンションを取壊して、新しいマンションを建築することになり、建替えられたマンションや敷地が新所有者の権利となり、賃借権や担保権は新区分所有権に原始的に取得されます。
 しかし、建物区分所有法やマンション建替え円滑化法での建替えは、権利者相互の意見や権利の調整の負担が大きいことや容積率に余裕がないために建替え費用の回収ができず経済的な負担が大きいことなどが、耐震不足マンションの建替えが進まない理由としてして指摘されてきました。
 平成26年の改正マンション建替え円滑化法では、除却の必要性のあるマンションについて、次のようなマンション敷地売却制度が新設されました。ためには,厳罰化のみではなく,自分と人の命を守るというドライバーの自覚強化のための交通教育の一層の充実が求められます。

(1) 耐震性不足の認定を受けたマンションは、区分所有者、議決権及び敷地利用権持分の5分の4以上の賛成で、マンション及びその敷地の売却決議をできる。
(2) 決議にかかるマンションを買い受けようとする者は、決議前に買受け計画を作成し、都道府県知事の認可を受け、認可を受けた者だけが買い受けることができる。
(3) 決議合意者は、決議合意者等の4分の3以上の同意にて都道府県知事の認可を受けてマンション敷地売却組合を設立できる。
(4) 組合は、決議に反対した区分所有者及び敷地利用権を時価での売渡し請求ができる。
(5) 都道府県知事の認可を受けた分配金取得計画で定める権利消滅期日にマンションとその敷地は組合に帰属し、マンション及び敷地件に係る賃借権、担保権は消滅する。
(6) 組合は、権利消滅期日までに、決議に合意した区分所有者に分配金を支払い、借家権者に補償金を支払う。
(7) 耐震性不足の認定を受けたマンションの建替えによって新たに建築されるマンションであって、一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについては特定行政庁(建築主事を置く区域の市町村長、その他の区域の都道府県知事)の許可によって容積率制限の緩和する。

 既存のマンションの区分所有者が、ディベロッパーなどのマンションや敷地の買受け業者との間で、買受け計画の中で売却した敷地に建てられるマンションを購入する権利を規定するなどの条項を入れた売買契約を締結することによって、新しいマンションに入居することも可能になると思われます。
 今回のマンション建替え円滑化法は、建替え以外に、マンション敷地の売却や容積率の緩和の制度を導入することによって、耐震不足マンションの建替えの促進を目的としたものです。南海トラフ地震などの大規模災害が予測されており、被害が拡大する前に、耐震不足マンションの建替えを促進する必要がありそうです。

弁護士 杉山 潔志

情報更新:2014年12月
 
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