やましろのくに 山背<やましろ>の国のよいこと・よいもの・よいところ…
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No.98 河港・伏見のにぎわい(京都市)




 伏見のまちを訪れると、歴史は「身近な日々」であることを思わされます。鳥羽伏見の戦いの際の弾痕が残る家に、今日も人の営みが続いていたり、通りを歩くと水運で栄えた都市の構造が鮮明に見えてくるからです。また、今ひとつの水─良質の地下水が全国に名を知られた銘酒を生み続けています。
 豊臣秀吉の時代、伏見城の築城に伴って軍事・経済の見地から日本最大の河港がこの地に作られました。江戸時代に入ると、角倉了以の高瀬川開削を機に伏見は水運河港都市としてさらに発展します。京─大坂を結んだ舟運は、人、物資、文化を伝え、繁栄をもたらしたと歴史は語ります。
 絵は「都名所図絵」を参考にしたその昔の京橋のあたり、さまざまな人と舟の往来と、人間らしい交歓の場を再構成しました。現代の社会が失ったものを改めて考えさせられます。いま、復活した三十石舟が桜や柳を背景に流れを往復しています 。

(切り絵と文 川越 義夫)
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