アベノミクスが拡大した格差社会 弁護士/杉山 潔志

 2018年9月に実施された自民党総裁選挙は、憲法「改正」やアベノミクスの継続を訴えた安倍総裁が3選を果たし、安倍政権がさらに続くことになりました。
 アベノミクスは日本社会の格差構造を一層拡大しました。国際コンサルタント企業キャップジェミニが発表した「World Wealth Report」によると、2017年における100万ドル以上の投資可能な金融資産を保有する日本の富裕層は316.2万人に増え、アメリカに次ぎ世界第2位でした。野村総合研究所の調査でも、安倍政治が始まってから富裕層(純金融資産保有額1億円以上保有する世帯)、超富裕層(同5億円以上)の増加が報告されています。
 他方で、勤労者を資本家階級、新中間階級(専門・管理・事務職)、労働者階級、旧中間階級(従業先規模5人未満の経営者)に区分すると、非正規労働者階級で貧困率が高いものの、旧中間階級は急激に貧困化して4階級の中で最高となり、構成員や子弟が他の階級へ流出するなど、豊かさの連鎖と貧困の連鎖が生じて、日本社会が「格差社会」から「階級社会」へと進んだとの指摘もあります(橋本健二「新・日本の階級社会」(講談社現代新書))。大企業や富裕層を優遇するアベノミクスは、日本社会に分断と階級化をもたらしたのです。
 これを変えるには、安倍政治を退場させ、国や地方自治体の政策を転換し、賃金の引き上げと格差の是正、所得再配分の強化、資産税の導入、奨学金制度の充実などを図る必要があります。この点で、来年4月のいっせい地方選挙と7月の参議院議員選挙は重要な意味を持っているといえます。


(2018年11月)

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