京都市財政危機はどうなった?! ―大型公共事業の聖域化は許せない― 弁護士/井関佳法

 令和3年2~4月号の市民しんぶんに「京都市のお金の事情」という特集が掲載され、京都市財政が危機に陥っており数年後には財政再建団体転落の可能性があること、その原因は、他都市よりも充実した市民サービスを続けてきたこと、地方交付税が削減されたこと、さらにコロナで市税収入が落ち込んだことだと説明されました。

 しかし、京都市の財政危機の原因は、地下鉄東西線(市負担967億円)、梅小路水族館(H3~10年、530億円)、京都コンサートホール(H3~7年、190億円)、鉄道高架事業(JR山陰線、近鉄京都線)(H1~15年、610億円)等の大型公共事業にあります。市民しんぶんはこの点に全く触れていません。
 京都市は、地方自治体の預貯金である財政調整基金を使い切って残高はほぼ0となっており、さらに借金返済目的で積み立てておかなければならない公債償還基金にまで手を付け、2300億円のうち550億円も取り崩して収支不足分に充ててしまっています(2022年時点)。この調子だとあと数年で公債償還基金も底を突く事態に立ち至っていました。

 京都市は、この危機解決のためとして、敬老乗車証制度の負担増や学童クラブ利用料を値上げする等、幅広い項目での利用者負担増・公費負担削減を反対の声を押し切って進めています。

 ところが令和5年度予算では、一転、京都市は「22年ぶりに収支が均衡した」、「財政難克服への道筋をつけることができた」と宣伝するに至っています。収支均衡はよいことなのですが、その原因はコロナ収束に伴う税収増と国の地方交付税増額であり、「敬老乗車証」や「学童保育料」の負担増等福祉と市民サービス切捨てと人件費削減等、犠牲は市民に押し付けられた格好です。

 財政危機に陥ってしまっている以上、支出の見直しや収入増の努力は必要でしょう。しかし、ここでも大型公共事業には一切触れていないのはどうしたことでしょうか。
 現在進行形の大型公共事業、市庁舎建替えの工事費は262億円(現時点)、漆塗エレベーターやZEST御池との地下通路等ぜいたくすぎないか、本当に必要かとの声が上がるのは当然です。さらに、そもそも市庁舎建替えはスペース不足で民間オフィスを賃貸して賃料が年4億円もかかっていた問題の解決のために始められたはずが、ここにきて建替え後も職員1000名が新庁舎に入りきらないことが明らかとなっています。京都市は、区役所業務の一部を本庁に集約した為やむを得ないというのですが、区役所業務集約化は以前から計画されており、計画見直しの機会はあり納得できません。こうした声を受けて、市民ウォッチャーは住民監査請求を申立てました。
 さらに北陸新幹線延伸が計画されており、当初工費の2兆1000億円を前提としても、1000億円にものぼるとされる地元負担は京都府市と関係自治体で分担することとなります。さらに、京都市は新駅周辺整備に巨額の費用が予想されます。今の京都市にこうした負担を担う余裕はありません。地下水や残土等環境破壊だけでなく、財政面からも中止しなければなりません。

 大型公共事業に手を付けないまま進められている福祉と市民サービスの削減に道理はありません。市民のいのちと暮らしを守りながら財政健全化を目指す道を探るべきです。


(2023年5月)

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