沖縄「先島諸島」を訪ねて 弁護士/井関 佳法

航空自衛隊宮古島分屯基地のレーダー
航空自衛隊宮古島分屯基地のレーダー
 自由法曹団京都支部創立60周年記念の石垣・与那国・宮古調査旅行に、自衛隊基地やミサイル配備がどこまで進んでいるか、地元はどう受け止めているかを直接見たい聴きたいと思い、行って来ました。
 これら島々は鹿児島から台湾までつながる南西諸島の西いりおもて端の先島諸島にあり、イリオモテヤマネコが生息する西表島じまや、与那国はドラマ「Dr.コトー診療所」のロケ地となった所です。日本最西端の与那国は沖縄本島から500kmですが、台湾までは100kmしかなく、天気がよければ台湾の島影が見える位置にあります。そんな島々に、ここ10年で自衛隊基地が次々と新設、拡張されてきました。それらは、赤瓦と赤いシーサーで瀟洒なデザインとなっていますが、門前では自動小銃をぶら下げた自衛官がピリピリと警備していました。ミサイルを積んだ大型トラック(自走式多連装ミサイル)が配備されているのが見え、そのミサイルを入れておく巨大な御土居のような弾薬庫がいくつも造られ、巨大なレーダー群が異様に林立していました。

 宮古には従前から米軍から引き継いだレーダー基地がありましたが、それ以外にこれら島々に自衛隊基地はなく、農漁業、観光、特に台湾との交流で豊かな時間の流れる所でした。例えば、与那国は台湾花蓮市と姉妹都市を結んでおり、以前は高速船も就航し、「自立ビジョン」で「平和な国境と近隣諸国との友好に寄与する『国境の島守』として生きる」と宣言(2005年)していました。

陸上自衛隊石垣駐屯地の弾薬庫
陸上自衛隊石垣駐屯地の弾薬庫
 ところが米中対立が激化して台湾がその焦点とされる中、南西諸島を対中「軍事要塞」とする動きが一気に進められてきました。国は、宮古では「弾薬庫はつくらない」と説明していたのに弾薬庫を造り、与那国でもミサイル配備の説明はしていなかったのにミサイルを配備するなど、なりふり構わぬ姿勢で基地建設とミサイル配備を強行してきました。
 これに対して、住民は反対や懸念の声を上げ、反対運動に取り組んでいました。例えば、石垣では、2015年5月に自衛隊配備が打診されると直ちに「止める会」が活動を始め、2016年には地元3自治会が配備撤回を要請しました。ところが2016年に市議会が突如として配備を求める決議を可決したため、2019年には若者が中心になって取り組んで4割の住民が自衛隊配備の賛否を問う住民投票を請求しました。結果を恐れた市がこれを無視したため、現在、住民投票を実施しなかったことの違法を問う裁判に発展しています。さらに2022年には市議会が「反撃能力を持つ長射程ミサイル配備は到底容認できない」と決議するに至っており、自衛隊駐屯地前では毎週、抗議行動が続けられていました。

 南西諸島で起きていることは私たちの問題です。万一、戦争になれば戦場は南西諸島だけでなく日本全土に広がることを肝に銘じ、南西諸島の住民と連帯して反対の声を上げることが求められています。私たちの地元京都にも、丹後のXバンドレーダー基地問題、祝園弾薬庫で弾薬庫8棟が増設されようとしている問題があり、これらにしっかり取り組むことが必要だと思いました。

(2024年4月)

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