荻野労災事件 大阪高裁で逆転勝訴 弁護士/杉山 潔志

 大阪高等裁判所は、2004年9月16日、荻野労災事件について逆転勝訴判決を言い渡しました。その瞬間、傍聴人で溢れた法廷は割れんばかりの拍手に包まれました。荻野恵子教諭が、宇治市立西小倉小学校6年1組の教室で脳出血で倒れてから10年8月、公務災害認定請求から10年6月、亡くなってから9年8月後にやっと過労死が認定されたのです。
 荻野労災の大きな争点は、(1)荻野教諭の職務の過重性、(2)冬休みなどでの疲労の快復、(3)罹病していたもやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の自然的経過と脳出血との関係の3点でした。
 京都地方裁判所は、これらの争点について、いずれも否定的な認定をし、地方公務員災害補償基金京都府支部長の公務外認定処分を支持しました。
 これに対し、大阪高等裁判所は、担任のクラスが学級崩壊寸前か崩壊を始めていたことや通知表作成等の職務、時間外の勤務時間を丁寧に認定して職務が過重であったと判断し、2学期末に蓄積した相当の疲労は冬休み中の時間外勤務や家事労働のため快復できなかったと認め、もやもや血管に存在した類線維素変性からストレスによる血行力学的負荷があり、もやもや病の自然的経過では再出血率を説明できないとして、過重公務がもやもや病の自然的経過を早めて増悪させ脳出血が発症したと判示したのです。
 そして、地方公務員災害補償基金京都府支部は上告することなく、この判決は確定しました。今後は、過労死事件や超過勤務是正訴訟、教育現場での長時間・過重労働の解消のために、この判決を生かしていきたいものです。
(2004年11月)

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