監査役登記がなされている従業員の労働者性が認められました 弁護士/毛利 崇

 Aさんは、勤務する会社で主に事務作業を行う従業員として勤務していましたが、2002年に会社の体制が変わったこと等にともない、株主総会の決議を受けて監査役として登記されることになりました。しかし、その後もAさんの業務内容は、以前となんら変わることはなく、社長の指揮命令に基づいてFAX送信業務を行うなど、事務作業に従事していました。  ところが、2014年8月、会社の臨時株主総会でAさんは監査役を解任され、会社に出勤することを禁じられ、給与の支払いもなされなくなりました。会社の言い分は、Aさんは会社の従業員(労働者)ではなく監査役であり、しかも、監査役と労働者の兼務は法律で禁じられているのだから、解雇手続きをしなくても、株主総会で監査役を解任すれば足りるというものでした。  これに対し、Aさんは、確かに登記上は監査役となっているが、実態は労働者であるから監査役を解任されたとしても、正当な理由をもって解雇されない以上労働者としての地位は失わないとして、勤務する会社を相手取り京都地方裁判所に労働審判を申し立て、さらに訴訟で争うことにしました。  2019年1月、京都地方裁判所は、(1)Aさんが、FAX 送信や電話の応対、掃除などの業務に従事していたこと、(2)監査役に登記された後も同じ業務を継続していたこと、(3)社長がAさんにメールを通じてFAX送信などの業務命令をしていたことなどを認め、さらに「Aさんが決まった時間に出勤していない」という会社側の主張を退けるなどして、Aさんが労働者であることを認めました。  このように、労働者であるか否かは、登記などの形式で 決まるのではなく仕事の実態で判断するというのが法律上の常識です。

(2019年5月)

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