マンションの「押し買い」に御注意を! 弁護士/吉田 眞佐子

 A氏は80代で1人暮らし、都心のマンションをセカンドハウスとして所有しています。不動産業者Bから「マンションを買いたい人がいる」と電話があり、A氏は「売る 気はない」と断りました。Bは何度も電話をかけ、その上でA氏宅を訪問し、売却を強く勧めました。A氏は体調が 悪く、長時間の応対に疲れ果て、Bが持参した契約書にサインをしました。2日後に、A氏は親族に相談し、Bに対し白紙解約を申入れました。しかし、Bは「解約には手付 金の倍返しと仲介手数料が必要」と言いました。BはA氏と初対面の日に、相場よりも格段に安い価格で、Bとの仲 介契約と同時に不動産業者である買主Cとの売買契約を締結させ、手付金としてC振出の小切手を渡していました。契約から3日後が決済予定日でした。
 A氏は決済日の延期を申入れ、直ちに弁護士に依頼し、宅地建物取引業法違反等を根拠に前記仲介契約と売買契約の無効、取消の意思表示をし、その結果、合意による白紙解約ができました。
 宅地建物取引業法は、宅建業者が契約の締結の勧誘をするに際して(1)当該契約締結の判断に必要な時間を与えることを拒むこと(2)契約を締結しない意思を表示したのに勧誘を継続すること(3)迷惑な時間に電話又は訪問すること(4)深夜又は長時間の勧誘など私生活等の平穏を害するような方法でその者を困惑させることなどを禁止しています。
 人気マンションの登記簿を閲覧し、所有者に対し、電話や訪問により執拗に売却を勧める業者が多数存在します。知らない番号の電話には出ない、自宅に業者を入れない、早めに周りに相談する等の対策が必要です。

(2019年5月)

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