向日町競輪場臨時従事員離職せん別金事件解決の報告 弁護士/杉山 潔志

 田中さんは、平成5年4月、京都府に臨時従事員として採用され、京都向日町競輪場で車券発売・払戻し業務などに従事してきました。京都府は、京都向日町競輪場で主催するレース(本場開催)だけでなく、他の自治体が施行するレース(場外開催)の車券の発売払戻し業務を始め、その業務を拡大しました。臨時従事員の使用者は、形式上、場外開催の場合には場外開催施行者とされましたが、実質的な使用者は京都府でした。
 バブル経済崩壊で京都向日町競輪場の経営は低迷し、京都府は、臨時従事員の募集をやめ、従事員共済会への補助金交付の形式で行っていた離職せん別金(退職手当)の額を平成16年3月で凍結する旨競輪労組と合意しました。その後も臨時従事員数は減少し、田中さんの平成20年ころ以降の月間勤務日数は20日〜24日になっていました。
 そのような中、最高裁判所は、平成28年7月15日、鳴門競艇従事員共済会への補助金交付による離職せん別金が実質的に退職手当に該当し、その支給は条例に根拠がなく違法との判決を言い渡しました。そのため、京都府も従事員共済会への補助金交付をやめ、同年9月30日で離職する田中さんには離職せん別金が支給されませんでした。
 田中さんは、退職手当の支給が可能な勤務実態にも関わらず、臨時従事員に退職手当の支給を可能とする条例制定などを怠ったとして、京都府に対し、損害賠償請求訴訟を提起しました。
 この裁判は、令和元年10月、京都府が離職せん別金と年末賞与に当たる増加賃金額の4割を支払うという和解の成立によって解決しました。
(2019年11月)

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