原発賠償京都訴訟 〜被害実態に見合う賠償を 弁護士/井関 佳法

 原発賠償京都訴訟は、福島原発事故で京都等へ避難してきた原告が、東電と国に対して原発事故によって被った損 害の賠償を求めて提起した裁判です。現在56世帯、171名の原告が、大阪高裁で控訴審をたたかっています。
主な争点は、
  • 1原発を国策として主導し安全管理を怠った国の責任を認めさせること(責任論)
  • 2避難区域外からの避難(自主避難)にも避難の権利を認めさせること(因果関係論)
  • 3被害に見合った十分な額の賠償を認めるさせること(損害論)
 の3点になります。

【責任論】
 一審京都地裁判決は、文科省の地震推進本部が2002年に出した「長期評価」によれば、福島原発敷地を 超える津波が予想でき、回避措置も可能だったのに、東電に規制権限を行使しておらず責任があると明快な判断を下しました。国も反論に躍起になっていますが、現在のところ、責任を否定する判決4件、責任を認める判決7件となっ ています。東電幹部の刑事事件の審理で明らかになった事 実も活用し、控訴審でも国の責任を認めさせるべく全力を 傾注しています。
【因果関係論】
 京都訴訟の原告は、ほとんどが区域外避難者であり、区域外避難者にも避難の権利を認めさせること が大きな課題でした。一審京都地裁判決は、原発から 200km離れた千葉県松戸市から避難した原告にも避難の 権利を認めるなど、概ね評価できる判断を下しました。認 められなかった一部原告にも避難の権利を認めさせること が、高裁での第2の課題です。
【損害論】
 一審京都地裁判決が認めた損害額は不十分でした。被ばくし放射線による健康影響の不安を抱え、慣れない避難生活を強いられたことの慰謝料がわずか30万円でよいはずがありません。
 被害実態理解のために、(1)継続的な調査から原発避難者一般の被害実態を分析した意見書、(2)全ての原 告陳述書を分析して被害実態を浮き彫りにした意見書、(3) 全原告対象のPTSDアンケートテストの結果を分析し、原告の高いストレスを明らかにした意見書等を準備し、被害 実態に見合う賠償を勝ち取るべく努力を重ねています。
 是非、ご支援を!
(2020年5月)

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