京都南法律事務所
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早わかり法律相談 交通事故

5.物損事故について

 過失の物損事故については、刑事事件とはならないので、刑事記録のような資料がありません。よって、事故の態様を含めて、損害内容・額について被害者が証明しなければならないことになります。なお、強制保険(自賠責保険)は物損事故(ないし、物損部分)への適用はありません。

●車両の損害
車の損傷について、修理費とその間の代車料金が請求の基本です。格落損害について問題となりますが、車両の主要な骨格部分の損傷がなければ認められません。また、古い車が全損した場合について、新車の請求をする人がいますが、事故時の車両価格が経済的損失とされ、通常は新車の請求は認められません。

●犬の死亡は、慰謝料はもらえるか
物損については、原則として慰謝料は認められません。犬が交通事故で死亡した場合も、犬は『物』として扱われているので同様です。しかし、近時、医療ミスなどの事案で犬の死亡について慰謝料を認めている判決が出ています。よって、請求してみる価値はありそうです。

6.金額算定の方法は(過失相殺を含めて)

 請求する具体的な金額は、次のように算定します。
 「全損害額(人身分+物損分)× 過失割合−損害填補額」
 例えば、全損害額が300万円で、すでに加害者から50万円を受け取っている場合で、被害者の過失が40%(加害者の過失が60%)あるとすれば、今後請求できる額は、130万円となります。過失相殺は、治療費を含めてすべての損害にかかってきますので、その割合がどうなるかは大きな問題です。
  300万円×(1−0.4)−50万円=130万円
 過失割合について、警察は決めてくれませんので、当事者間で協議することになります。その事故について刑事事件になっていれば、刑事処分の内容および刑事記録は、その際の重要な資料になります。
 よって、被害者としても、捜査機関とのコンタクトを取り事故内容などについてわかる事実については十分に説明をすることが大切です。仮に、加害者が不起訴になった場合も、一定の資料については取り寄せができます。
 損益相殺とは、被害者が事故を原因として何らかの利益を得た場合にその性質に応じて損害の補填であるとして、請求金額から差し引かれるものです。事故の加害者からの支払いは当然のことですが、他に、社会保険給付があった場合も問題となります。

 7.いつの時期に請求するか

 保険会社との交渉のなかで、仮払いを受けている時に、事故による傷害の症状固定の時期が問題となります。症状固定の後に後遺障害の有無を決めて、最終的に損害金額が明らかになるので、その時点で、全体としての請求をすることになります
 通常は保険会社からの提案がありますが、それを待っていては時効にかかる場合がありますので要注意です。

時効
 強制保険(自賠責保険)の請求は、事故時から3年、死亡事故は死亡時から3年、後遺障害については、症状固定時から3年であり、民事請求自体も、損害と加害者を知った時から5年、権利を行使できるときから20年(物損事故の場合は10年)という時効があります。ただし、一部支払いを受けるなどで時効の更新が認められる場合がありますが、とにかく、強制保険(自賠責保険)は3年、相手方(任意保険)への請求も3年と思っていたほうがよいと思います。
 単なる相手方への請求だけでは時効は更新せず、加害者と被害者との間で時効の完成猶予の合意を行うか、調停申立ないし裁判をしないといけませんのでその点も注意してください。

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