コラム 中尾 誠 
ウイルス由来の感染症対策の今後

 新型コロナウイルス感染症が終息したとしても、近い将来において、他のウイルス由来の感染症が発生しわが国においてまん延する可能性がないとは言えません。今のうちから、対策をとっておいたほうがよいと思う2つの点について、記載します。

1 保健所の増設
 この間のコロナ対策において、住民との関係において最前線で活動しているのが、保健所であり保健所の職員であることは、誰の目から見ても明らかだと思います。しかし、決定的に問題なのは、その保健所の数がこの間減らされ続けている―852(1990年)から470(2021年)―ことです。
 元の水準への回復・増設の検討に、速やかに着手すべきです。

2 BSL4施設の稼働
 今年の7月末に長崎大学にBSL4施設が完成し、来年以降の稼働を目指しているとされています。
 BSLとはバイオセーフティーレベルのことで、1〜4(病原性の強さなどに応じて)まであり、4は最上位のレベルで、エボラなどのウイルスを取り扱うことができ、ウイルスの特性を解明するほか、感染から発症までのメカニズムの分析、ワクチンや治療薬の開発などを行うことになります(なお、新型コロナウイルスはレベル3扱い)。
 現在、日本には、BSL4稼働可能施設としては2か所あるものの、いずれも、レベル4相当のウイルスの研究のためには稼働していません。
 わが国におけるウイルス研究の発展(自国の研究者を育てることを含めて)のため、早期の複数施設での稼働が必要と思います。
 
2021年11月