コラム 杉山 潔志 
国民共同のとりくみ強化を  〜立憲主義を取り戻すために〜
 安倍首相は、年頭会見や補正予算審議などで憲法改正の姿勢を明らかにし、改憲勢力で改正発議に必要な3分の2の議席確保を7月の参議院選挙の目標としています。他方で、神社本庁は各地の神社で改憲署名を集め、日本会議は改憲を求める意見書の採択運動を進め、33の都府県議会が採択しています。
 改憲論者は、大災害への対処のため憲法に緊急事態条項が必要と主張しています。緊急事態条項は、国家の緊急事態に、国家の権力を総理大臣に"集中"し、権力行使の手続きを"省略"し、国民の権利を"制約"するものです。しかし、災害については、災害救助法などに救助への従事命令や物資の収用権限などが定められており、憲法に緊急事態条項を盛り込む必要がないばかりか、災害現地の裁量を認めるほうが適切な対応ができるとされており、災害対処は"口実"です。安倍首相の本音は、「外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱」(自民党日本国憲法改正草案(改正草案)第98条)への対応で、「戦争する国」の緊急事態条項つくりです。この議論では、ワイマール憲法下のドイツで大統領の緊急命令がナチスの独裁への道を開いたことを想起すべきです。
 安倍首相の最終目的は改正草案の実現です。近代憲法の原理に立脚する日本国憲法が、基本的人権を個人が生まれながらに有し、国家が侵害できない権利とするのに対し、改正草案は、公益によって国民の権利を制限できるとし、国防軍の創設などと併せ戦争を想定した憲法となっています。
 7月実施の参議院選挙に向けて、安倍首相の明文改憲を阻止するだけでなく、憲法違反の安全保障関連法を廃止して立憲主義を取り戻すために国民共同の取り組みを強めることが重要です。
 
2016年6月