コラム 杉山 潔志 
デジタル関連6法案の危険性

 政府は、本年2月9日、デジタル関連6法案を国会に提出しました。関連法案は、デジタル社会形成基本法案、デジタル庁設置法案、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案、地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案などの6法案です。法案は、個人情報を個人番号とリンクさせ、地方自治体との連携を通じてデジタル庁で一元的に管理することや匿名加工情報の事業活動への利用などを内容としています。
 設置法案に対しては、監視社会の強化に繋がるとの懸念が出されています。
 標準化法案は、地方自治体事務を標準化し、クラウドの共同利用による地方行政デジタル化の促進を目指すものです。富山県上市町では、「65歳以上の重度障害者の医療費窓口免除」などの議員提案に対し、町長が「自治体クラウドを採用しており、町独自のシステムのカスタマイズはできない」と答弁したそうです。このようなデジタル化は地方自治における団体自治と住民自治を骨抜きにします。
 整備法案は、行政機関が保有する個人情報を加工して作成される匿名加工情報の事業利用提案を定めていますが、事業者が匿名加工情報の作成のために個人情報にアクセスできるとすれば、その過程でのプライバシー侵害が生じます。また、複数の匿名データに対するプロファイリングで個人が特定できるとの指摘もあります。
 行政のデジタル化を一律に否定することはできないでしょう。デジタル化の際には個人情報の保護や地方自治の本旨などの憲法的価値を護る制度化が必要です。

2021年4月