コラム 杉山 潔志 
ウクライナに対する防弾チョッキの提供

 ロシアは、2月24日、ウクライナ東部住民の保護を名目にウクライナに侵攻しました。プーチン大統領からは核兵器使用威迫発言も発せられています。  西欧諸国は、ウクライナに対戦車・対空兵器や小銃、弾薬などの軍事援助を行っています。日本政府は、防弾チョッキ、ヘルメット、防寒服の提供を決め、3月8日には航空自衛隊小牧基地から、10日には美保基地から輸送機がポーランドに飛び立ちました。
 武器は戦争に用いる諸般の器具と解されており(広辞苑第四版)、甲冑などと同様、防御的な装備である防弾チョッキやヘルメットも武器に該当します。
 安倍内閣は武器輸出三原則を防衛装備移転三原則へ変更し、武器輸出基準を緩和しましたが、紛争当事国への移転禁止は維持されました。今回の防弾チョッキ等の提供は、国際社会と結束したロシアの国際法違反に対する行動が日本の安全保障にも積極的意義を有すること、移転先がウクライナ政府であること、日本の安全保障上の問題がないことを理由に運用指針の“改正”によって行われました。
 毎日新聞の世論調査では、「妥当である」が61%、「もっと積極的な軍事支援を検討すべきだ」が22%、「軍事支援は必要ない」が11%で、概ね国民の理解を得ているようです。しかし、自民党国会議員には「武器の輸出先を広げるべきである」とか「台湾有事には弾薬も送るべきだ」などの意見もあり、武器輸出の拡大が懸念されます。運用指針だけによる武器提供には問題があると言わざるを得ません。

2022年5月