メンバーの素顔紹介 吉田眞佐子

お薦めの1冊
 『離婚で壊れる子どもたち…心理臨床家からの警告』(棚瀬一代著 光文社新書)


 著者は,離婚が子どもに与える重大な影響を指摘し,「子どもの最善の利益は何か」という視点から,現在の単独親権制度を見直し,離婚後も原則として両親が子どもの養育に関り続ける方向への法改正を求めている。
 弁護士が関与するのは,調停や裁判に至る高葛藤の離婚事件であり,元配偶者とは二度と会いたくない心情の人がほとんどだ。
 共同親権制度に対しては「当事者の負担が大きい」「子育てについて双方が譲らず紛争が続けば,当事者はますます傷つき疲弊する」「サポート体制もないのに無理」等という反対意見や慎重論は多い。
 著者は,別れた父母が葛藤を超えて「よりよい離婚」を成功させるために,養育計画・養育費の取り決めの義務付けや,親教育プログラムの充実,面会交流の支援システムなどの具体的提案をしている。著者は家事調停委員の経験があり,諸外国の法制度や実例の紹介も豊富である。
 日本では,未成年の子どもがいる夫婦の離婚の場合でも,親権者を決めるだけで協議離婚ができる。養育費や面会交流等についての取り決めが不要である現行制度は,見直しが必要と感じる。子どもの最善の利益の保障のためには,当事者まかせではなく,家庭裁判所の関与が望ましい。共同親権制度あるいはそれに近い制度となれば,家裁の果たすべき役割は一層大きくなる。
(2010年5月27日記)