京都南法律事務所 新法・改正法の紹介

地域住民にとっての住宅宿泊事業法(民泊新法)

 朝、通りに出ると、大きな旅行カバンをゴロゴロと引いている外国人の一団に出会うことがよくあります。近くに、旅館・ホテルは無いのにおかしいなと思っているうちに、どんどん、その数が増えたように思います。いわゆる「民泊」に泊まっているのでしょうが、その場所は、どこか分からないことが多くあります。
 京都市観光総合調査(2016年)では、無許可民泊宿泊者数は、年間約110万人程度と推計されています。宿泊者が、夜中に騒いだり、ごみを勝手に路上に出したりすることもあります。地域の住民にとって、最も不安なのは、火の不始末からの火災の発生です。

(平成30年6月15日に施行)
 本来、宿泊代をもらって人を泊めるためには、旅館業法の許可(許可されている施設は、自治体のHPなどで確認できます)が必要です。また、例外的に、平成28年から国家戦略特区法に基づいて、特区民泊が認められています(京都府・京都市は対象とはなっていません)。
 よって、多くの民泊は、違法なものでしたが、民泊新法が制定され、住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置をとることを条件にして、届出(都道府県、ないし、保健所設置市)をすることにより、認められることになりました。それに合わせて、京都市と京都府においても、条例が制定され、法律を含めて、平成30年6月15日に施行されます。

(近隣住民への説明)
 旅行者の安全な宿泊環境を確保するとともに、近隣住民の生活が害されないことが必要ですが、届出(許可ではなく)を基本とする制度設計のこの法律は、実効性に疑問があります。
 とはいえ、民泊を営もうとする者は、その届出をする前に、予定地に事業計画を掲示し、また、近隣住民にその内容を説明する義務があります。ほかに、努力義務ですが、町内会などから説明会の開催などを求められたら、真摯に対応することとされています。
 よって、届出に先立つ、その機会を活用することが、近隣住民にとっては、大切になります。

(違法な民泊のみつけ方)
 民泊新法によって届出のあった民泊は、見えやすい場所に届出番号などが記載された標識が掲示されます。また、京都市、京都府のHPにも、届出のあった民泊が掲載されます。
 よって、標識のない家屋での「民泊」は、違法な営業ということになり、罰則も科せられます。


(参考のHP)
 民泊制度ポータルサイト(観光庁ほか)
 http://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/
 京都市情報館−住宅宿泊事業
 http://www.city.kyoto.lg.jp/menu3/category/40-12-0-0-0-0-0-0-0-0.html

弁護士 中尾 誠

情報更新:2018年6月
 
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