相続・遺言 Q A
特別受益と遺留分
父は、25年前私に400万円を贈与し、5年前60年連れ添った母に価格2000万円の自宅を贈与し、3000万円の預金を残して死亡しました。父に債務はありません。母と妹の2人に2分の1ずつ相続させるとの遺言があり、預金を半額ずつ相続すると2人から連絡がありました。
相続人は、母、妹、私の3人です。母と妹にどんな請求ができますか。
お父さんの生前贈与や遺言によって、あなたの遺留分(法定相続人に認められた遺産に対する最低限の割合)の侵害があれば、お母さんと妹さんに遺留分侵害額請求が可能です。2019年7月1日施行の民法改正で、遺留分侵害に対しては侵害額請求だけができ、相続人については原則として相続開始前10年以内の贈与が遺留分算定基礎財産(基礎財産)の対象とされました。特別受益持ち戻しに関する改正規定は、遺留分制度へ準用されていません。
遺留分価額は、基礎財産価額に遺留分率と相続分率を乗じ、遺留分権利者が受けた贈与・遺贈・特別受益の額と相続での取得財産額を控除し、相続分に応じて負担する債務額を加えた額とされています。
お父さんの相続での基礎財産価額は、自宅と預貯金の合計5000万円です。あなたの場合、これにあなたの2分の1の遺留分率と4分の1の法定相続分率を乗じた625万円が遺留分額であり、これから生前贈与400万円を控除した225万円が遺留分侵害額です。
あなたのケースのような民法改正後の遺留分負担額に関する裁判例は目にできていませんが、遺留分侵害額は受遺者が先に遺留分を限度として負担するとされているので、お母さんと妹さんが預金の半額から各自の遺留分額を控除した金額の割合で負担することになると思われます。
遺留分侵害額請求は、それを知った時から1年以内に行使しないと時効消滅すると定められています。期間の制限に注意して下さい。
詳しくは法律相談を受けることをお勧めします。