京都南法律事務所 気になる話題から

気になる話題から
 話題になっているちょっと気になる法律関係の話を取り上げています。

INDEX

No.79
お給料の時効はなぜ2年?
 給料日に勤務先からお給料を支払ってもらえなかった場合、その給料日から2年間放っておくと、お給料を支払ってもらう権利がなくなってしまいます。このように一定期間経過すると権利が無くなってしまう「消滅時効」という制度の基本的な仕組みは民法という法律に定めがあるのですが、お給料については、特別に労働基準法115条で時効の期間を2年とすると定められているのです。では、なぜ労働基準法は民法と異なる特別の規定を設けているのでしょうか。
 民法上は、お金を請求する権利の消滅時効の期間は原則10年と決まっていますが、民法174条がその例外として「次に掲げる債権は、1年間行使しないときは消滅する。(1)月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料にかかる債権 (2)以下略」と定めているので、お給料をもらう権利は1年で消滅してしまいます。しかし、これはあまりに短すぎて労働者の保護の観点からよくないという理由から、労働基準法で特別に2年に延ばされたのです。つまり、労働基準法は、労働者を保護するために民法と異なる特別の規定を設けているのです。
 ところが、今年6月2日に公布(但し、まだ適用はされません)された新しい民法では、この民法174条の規定は削除され、さらにお金を請求する権利の消滅時効の期間は原則5年になりました。つまり、民法上は、お給料を払ってもらう権利の時効期間は1年から5年になったのです。しかし、労働基準法115条の規定が残ったままになっているので、逆に民法の原則より短い2年でお給料をもらう権利が消えて無くなってしまうということになりました。本来は、労働者の権利を守る為に民法に定められた短い時効期間を延ばす為に定められた労働基準法の規定が、今度は、労働者の権利を制限する規定に変わってしまったのです。
 このような逆転現象は、労働者保護という労働基準法115条の趣旨に反しています。「お給料の時効は1年」という例外規定が無くなり時効期間が5年になったのですから、労働基準法115条も削除してお給料の時効期間を民法の原則に合わせるべきだと思います。
(弁護士 毛利 崇)
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No.78
成年後見制度の利用をお考えの場合の留意点
 認知症や成年後見という言葉を身近に聞かれることが増えていると思います。ご親族などの認知症などが進行し、成年後見人を付ける事を検討されることがあるかも知れません。
 成年後見制度とは、物事を判断する能力が十分ではない方の権利を守る援助者として成年後見人等を選んで,ご本人の財産を維持管理し守るための制度です。もちろん、重要で有効な制度であることは間違いありません。
 しかし、制度の仕組みが十分理解されておらず、成年後見人が選ばれた後になって、こんなはずではなかったと困惑される場合もあるかも知れません。
(1) まず、ご家族やご親族が成年後見人に選任されるとは限りません。適当と考える候補者を書いて出すことは出来ますが、誰を成年後見人に選任するかを決めるのは家庭裁判所です。ご親族以外の、例えば弁護士や司法書士など専門職が後見人に選任される場合もあります。この家裁の決定に不服申立は認められていません。
(2) 次に、成年後見人が一旦選任されてしまうと、「やっぱり成年後見人はいらない」とか、「成年後見はやめてほしい」と言うことは出来ないとお考えください(ご本人の認知症が良くなったりしない限り)。
(3) そして、ご本人の財産は成年後見人が引渡しを受けて管理することになります。施設等への支払いは成年後見人から支払われますし、ご本人が必用なお金も成年後見人からもらうことになります。判断能力が十分でない方の財産を守るためではありますが、厳格で窮屈な制度でもあります。
 裁判所が作成している詳しいパンフレットがありますので、よく読まれることをお勧めします。
(弁護士 井関 佳法)
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No.77
雇用保険の高齢者への適用拡大と介護休業給付金
★雇用保険は,平成29年1月1日より65歳以上の方も適用対象となりました。。
 雇用保険は,1週間の所定労働時間が20時間以上であり,31日以上の雇用見込みがあれば,原則として適用の対象となります。
 
★高年齢求職者給付金
 65歳以上の労働者は「高年齢被保険者」となり,離職した場合,受給要件を満たすごとに,高年齢求職者給付金が支給されます。年金との併給が可能です。
 具体的には,離職後にハローワークに行き,求職の申込みをした上で受給資格の決定を受けます。受給資格の要件は、(1)離職していること (2)積極的に就職する意思がありいつでも就職できるが仕事が見つからない状態にあること (3)離職前1年間に雇用保険に加入していた期間が通算して6か月以上あること(賃金支払の基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算)です。
 被保険者であった期間が1年以上の場合は基本手当日額の50日分,1年未満の場合は30日分が一時金として支給されます。
 
★介護休業給付金
 高年齢被保険者として介護休業をする場合,要件を満たせば介護休業給付金の支給対象となります。
 介護休業給付金は,平成28年8月1日以降に開始した場合は,給付率は賃金の67%(それ以前は40%)です。介護休業の対象家族も拡大しました(祖父母,兄弟姉妹,孫の「同居かつ扶養」の要件の廃止)。
 同一の対象家族・同一の要介護状態の場合,原則1回,93日限度となっていましたが,本年1月より通算93日分を最大3回まで分割取得可能となりました。
 
★社会保障制度を積極的に活用しましょう
 少子高齢化が進み,働く意欲と能力のある高齢者の方の働く機会を確保することが求められる社会状況です。社会保障制度は次々と変更されます。各窓口で制度を調べ,積極的に活用しましょう。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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No.76
刑法が改正されました 〜性犯罪の厳罰化について〜
 2017年6月16日、刑法改正案が可決・成立しました。施行されるのは同年7月13日です。主な改正点は以下のとおりです。
 
◆強姦罪を強制性交等罪に改め、被害者を女性のみとしていた限定を外し、性別に関わらず強制性交等罪の被害者になると定めた。また、法定刑の下限を3年から5年に引き上げた。
◆監護者わいせつ及び監護者性交等罪を新設した。18歳未満の者の監護者がその影響力に乗じてわいせつな行為や性交等をした場合、強制わいせつ罪や強制性交等罪の罰則が適用される。この場合、暴行や脅迫がなくても罪が成立する。
◆強制性交等又は監護者性交等によって被害者を死傷させた場合の法定刑の下限を5年から6年に引き上げた。
◆強制わいせつ罪、強姦罪(強制性交等罪)、準強制わいせつ罪、準強姦罪(準強制性交等罪)について、告訴がなければ公訴を提起できないとしていた規定を削除した。これにより、被害者の告訴がなくても、被疑者を起訴することが可能となる。
 
 なお、改正刑法の施行前にした行為の処罰は、改正前の刑法が適用されます。ただし、改正前にした行為であっても、改正刑法の施行後は、原則として被害者の告訴が不要となります。
 今回の改正は、近年における性犯罪の実情を考慮し、実態に即したものとするためと説明されています。また、施行後3年を目途にして、性犯罪の実態に即した見直しを行う可能性もあります。
(弁護士 清洲 真理)
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No.75
労基法38条1項を知ってますか?
★増える兼業・副業
 民間企業で働く労働者のうち、非正規の方の割合が40%を超えています。賃金が低く1ヶ所での勤務では生計を立てることが難しいこともあり、2カ所で働くということが増えています。1ヶ所での労働時間が短い場合、3カ所を掛け持ちしているという話も聞いたことがあります。
 企業によっては、就業規則で兼業禁止規定を設けている所もありますので、問題となる場合があります。また、自治体の一般職の臨時職員の場合は、自治体当局の許可がなければ、他の場所で働くことができないことになっています。そこだけの安い給料では生活できないのに、他で働くことの許可がいるというのは、おかしいことです。

★2カ所の労働時間を通算
 労基法は、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」(38条1項)としており、「事業場を異にする場合」には、事業主を異にする場合も含むとされています。
 例えば、ある人が、A社で6時間働いてその後B社で5時間働いた場合、B社の3時間はその日としては8時間労働を超えるため、残業代を支払わなければならず、その前提として、B社は36協定(残業協定)を結んでいなければなりません。
 しかし、B社は、その人がA社で働いているかどうかは知らないことが通常であり、実際そのような処理(36協定を結んで、残業代を支払う)をしている職場は、見かけません。
 ほかに、社会保険はどちらの職場で入るのか、A社からB社に行く途中の通勤災害はどうなるのかなど、兼業・副業に伴う厄介な問題は多くあります。
 私自身、この規定が労基法にあることを知りました。みなさんご存知でしたか。
(弁護士 中尾 誠)
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No.74
自転車にスピード違反ってあるの?
 近年、自転車にも自動車と同じような規制があるということが意識されるようになってきて「お酒を飲んで自転車に乗ったら飲酒運転やで〜。」などと言う人も見かけるようになりました。それでは、自転車にも自動車と同じように「スピード違反」はあるのでしょうか。
 いわゆる原付(原動機付自転車)に乗る方や乗らなくても自動車の免許を持っている方などは、原付が時速30qしかスピードを出してはいけないと法律で定められていることをご存じのことと思います。ですから「原動機付自転車が時速30qなんだから、普通の自転車は当然それ以下のスピードで走らないといけないんじゃないの?」と思うのも自然な流れかも知れません。ところが、法律では、そのような定めになっていないのです。
 道路交通法では、自転車も自動車と同じ「車両」の一種とされ(2条1項8号、11号)、車両は道路標識や政令などで定められた最高速度を超えてはならない(22条1項)とされています。
 そして、政令では、自動車の最高速度は時速60q(高速道路除く)、原付の最高速度は30qと定められています。自転車については、この政令の定めはありません。つまり、自転車の最高速度は、道路標識のある道路ではその速度、道路標識のない道路ではなしということに法律上はなっているのです。
 もっとも、交通事故などの裁判例上は、自転車が時速30qに近い速度で走っていて事故を起こした場合には、落ち度が大きいと判断されるようですので、ロードバイクなどのスピードのでる自転車に乗っている場合や下り坂などの際にはお気をつけ下さい。
(弁護士 毛利 崇)
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No.73
預貯金の相続に関する最高裁判例が変更されました
 12月19日、最高裁は、共同相続された普通預金債権・通常貯金債権及び定期貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となると判断しました。
 これまで最高裁は、相続が発生した場合、預貯金は当然に法定相続分に応じて分割され、相続人間の話合いがなくても、単独で相続分に応じた払戻しを受ける権利があるとしてきました。これは、可分債権(分けられる債権)は、相続の発生と同時に当然に分割されるという原則があり、預貯金は金融機関への債権ですから、この原則に当たるという考え方に基づいています。他方で、故人から生前贈与を受けた相続人がいる場合、相続人間の不公平解消のため、遺産分割協議の際に考慮されます(特別受益)が、預貯金しか遺産がない場合は、当然分割とされてしまい、生前贈与を考慮できず、不公平が生じていました。
 そのため、このような原則がありつつも、実際には、預貯金についても、相続人全員の同意を得て、他の遺産と同様に遺産分割協議の対象に含める運用が行われていました。相続人間の不公平を防ぎ、柔軟な解決を図って納得を得やすくなるからです。また、金融機関によっては、トラブルを防ぐため、1人の相続人が相続分に基づいた払戻しを請求した場合であっても、他の相続人の承諾を得るまでは応じない、といった対応をとるところもありました。今回の判例変更で、預貯金も相続人全員の共有となり、協議が成立するまで払い戻すことが出来なくなりました。また、生前贈与を受けた相続人が、預貯金を遺産分割協議の対象とすることを拒否することも出来なくなりました。
 他方で、故人の葬儀費用を用意しなければならない等、早急に支払いが必要な場合であっても、相続人が払戻しを受けることは出来なくなります。
 自分に何かあった場合、どのような準備をしておけば、相続人が困ることなく、全員が納得できるだろうか。いざという時のことも考え、早めに専門家に相談し遺言を作成するなどして、準備をしておくことをおすすめします。
(弁護士 清洲 真理)
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No.72
アメリカ大統領選挙の結果に思う
 2016年アメリカ大統領選挙は、全体の得票数でクリントン氏に劣ったものの、前回民主党が制したフロリダ、オハイオなどの州で接戦を制したトランプ氏が次期大統領に当選しました。
 トランプ氏は、「メキシコ移民が入って来ないよう国境に壁を作る」、「イスラム教徒は入国禁止」などの暴言や女性蔑視発言を続け、共和党の有力者からも不支持表明が続きましたが、根強い支持率を維持し「トランプ現象」といわれました。日本に関しても「日本の核武装は結構いい」とか「日本や他の国を守るかぎり、アメリカは大金を失う。守り続ける訳にはいかない」などと発言していました。
 トランプ氏勝利の背景として、支配層への国民の批判や格差社会を放置してきた政治への反発などが挙げられています。しかし、トランプ氏は富裕層・大企業減税の推進、医療保険制度改革(オバマケア)の中止などを公言しており、トランプ氏に投票した有権者が期待する政治が実現されるかは疑問です。
 人権や平等などの価値観を標榜するアメリカでのトランプ氏の当選は、民主主義という政治原理の脆弱性を窺わせます。ベルサイユ体制と世界恐慌に苦しめられたワイマール憲法下のドイツでナチスが選挙によって台頭したことを思い起こさせました。この点で、日本国憲法96条が憲法改正手続きを厳格にしている意味が再認識させられます。
 アメリカは憲法にもとづいて政治が行なわれる立憲主義の国であり、三権分立の仕組みも有しています。今後アメリカの立憲主義がトランプ氏の暴言に立ちはだかることができるのか注目されます。日本でも、安保法制を進める安倍内閣に対する立憲主義を回復する取り組みを強める必要があると思いました。
(弁護士 杉山 潔志)
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No.71
空き家問題

◆増加する空き家
 空き家の数は、この20年間で1.8倍増加し、全国で820万戸(2013年)となっています。京都市内の空き家は、約11.4万戸で、空き家率は14.0%で、全国平均(13.5%)を少し上回っています。
 その原因は、世帯人数の減少と、持ち家の増加にあると思います。少ない家族の人が亡くなられたり、転勤で引っ越したりした場合、後に住む人もなく、空き家で放置されることになります。

◆この間の法律・条例の制定
 空き家の増加に伴い、近所の人が迷惑を蒙っているが、空き家の所有者もわからず対処のしようもない、地域の住環境も悪化するという中、「空き家等対策の推進に関する特別措置法」(2015年5月施行)が作られ、更に、この間、自治体において条例(京都市、宇治市)も作られています。
 しかし、この問題を解決するために活用すべき基本的な法令は、特別措置法や条例ではなく「民法」です。

◆対処の方法
 お隣の空き家が倒壊しそうだとか、空き家に知らない人がたむろして用心が悪いなどといったことがある場合、そのことにより被害を受ける人が、その原因となる空き家の持ち主に対して、被害が起こらないよう、また、第三者が立ち入らないように対処を求めることになります。
 困るからといって、勝手に空き家を取り壊したりすることは、出来ません。よって、空き家の所有者が誰かを調べることが必要となりますが、個人では、なかなか難しいのが現状です。
 特別措置法や条例で、自治体は、空き家の所有者を把握することができやすくなりました、また、空き家をそのまま放置すれば倒壊する危険のある場合などには、強制的にその空き家を除去することができるようになりました。
 空き家問題に対処するための根拠を自治体が持つことになりましたので、自治体に相談をすることも解決の1方法となります。

(弁護士 中尾 誠)
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No.70
商品の大量売りつけ行為が規制されるようになりました
 みなさんは、「過量販売」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?「過量販売」とは、およそ使い切らない様な量の商品を売りつける悪徳商法の事です。これまでも、特定商取引法という法律で、訪問販売などの場合における過量販売については、契約を無条件で解除する制度(クーリングオフ)制度が設けられていました。
 しかし、特定商取引法は、訪問販売や電話勧誘販売などの特定の販売方法のみを規制していたので、例えば、着物の展示販売会などに消費者が出かけて行って、数回にわたって、大量の着物やアクセサリーを売りつけられたというような販売方法には対応出来ていませんでした。
 裁判例では、高齢の被害者について、着物の展示会で大量の商品を売りつけられた事例について「公序良俗に反する」という理由で契約の解除を認めて商品代金の返還を認めたものがありますが、すべての人が救済をされてきたわけではありません。
 今年6月に公布された改正消費者契約法は、このような事案にも対応出来るように、販売方法の如何を問わず、過量な商品購入を内容とする契約を取り消すことが出来る制度を新設しました。但し、この法律が効力を持つのは、2017年6月3日からですのでご注意下さい。
 どのレベルを超えると過量になるのかについては様々な議論があり、一定はしていませんが、日本訪問販売協会というところが「通常、過量には当たらないと考えられる分量の目安について」(http://jdsa.or.jp/wp-content/uploads/2015/03/quantity-guideline.pdf)という文書を公表していますので、参考にしてみて下さい。
(弁護士 毛利 崇)
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No.69
子ども会等での川遊びでの事故の責任
今年の夏も暑かったですね!
 子どもさんやお孫さんが、学校、子ども会、少年野球チームなどの企画で泳ぎに行かれたかもしれません。そんな中で、万一事故が起きたときの責任問題を考えてみます。

【高校の修学旅行での海水浴での事故】について
 事前に危険な箇所を調査せず、遊泳範囲を定めなかったとして、引率教員の過失を認めた判決があります(但し、損害額は4割引)。

【子ども会で行った川遊びでの事故(9才)】について
 安全な遊泳区域を定め、区域外で遊泳しないようにする監視が不十分だったとされ、引率者の責任を認めた判決があります(但し、損害額は8割引)。

【少年野球チームで行った海水浴での事故】について
 任意団体の任意の行事である上、正規の海水浴場で、当時海は穏やかだったとして、保護者会長らの責任を否定する判決があります。

   まとめると、◆安全な遊泳範囲を定め、その範囲で遊泳させることが必要ですが、◆ボランティアでも責任問題は生じ、◆ただし、その場合には損害額で考慮される場合があるようです。保険加入は必須でしょう。十分な準備をして、自然とふれあう機会を作ってあげたいですね。
(弁護士 井関 佳法)
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No.68
18歳選挙権がはじまりました
 公職選挙法が改正され、これまで「20歳以上」だった有権者の年齢が「18歳以上」に引き下げられました。対象となる人は、この夏の参議員選挙で投票が可能になります。新たに有権者となる18歳〜19歳の人数は約240万人で、全有権者の約2%にものぼるそうです。
 有権者になるということは、選挙で投票できるだけでなく、選挙運動も行えるということです。選挙運動は、選挙の告示日から投票日の前日まで行えます。どのような選挙運動もできるというわけではなく、公職選挙法で禁止される選挙運動があります。ところが、極めて複雑な規定で、適法行為と違法行為の線引きの判断はとても難しいものとなっています。
 例を挙げると、若い有権者に身近なインターネット上のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス:Facebook・ツイッターなど)やブログ、動画共有サイトを使って選挙運動をすることはできます。しかし、電子メールを使った選挙運動は禁止されています。ちなみにLINEは、電子メールとは異なり「ウェブサイト等」に当たると解釈されています。つまり、LINEでつながっている友人などに投票を呼びかけることは自由です。しかし、ネットを使った選挙運動の何が適法で、何が違法かの区別が分かりにくいとの声が出ており、分かりやすい広報が求められています。
 私が大学生の頃は、SNSといえばミクシイで、法科大学院生の頃には、Facebookが全盛期でした。しかし、今では若い人は主にツイッターやインスタグラム(写真共有サービス)を利用しているそうです。たった数年で、発信手段が目まぐるしく変わっていきます。
 若い有権者は、インターネット上で自身の考えを発信することに慣れている方が多く、また、リツイートによって簡単に情報が拡散していきます。若い有権者が加わることで、選挙にどのような影響が出てくるのか、今後の動向が注目されます。
(弁護士 清洲 真理)
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No.67
衆議院の解散
 安倍首相は、年頭会見、補正予算審議などで憲法改正の姿勢を明らかにしました。そして、衆議院を解散して7月参議院議員選挙を衆参同日選挙とするとの憶測も流れました。
 一般に、同日選挙では投票率が上って浮動票に依存する政党に有利となり、衆議院解散は野党に準備不足を生じさせ、各政党が衆議院の議席獲得に動いて選挙協力が成立し難いといわれています。過去2度の衆参同日選挙は、いずれも与党の圧勝でした。安倍首相は、安保法制や経済政策などで切迫する政局の打開や消費税10%移行前を狙って衆参同日選挙を目論んだといわれており、現時点でも同日選挙の可能性がなくなった訳ではありません。
 日本国憲法には、衆議院の解散に関し、内閣の助言と承認によって天皇が行なう衆議院の解散(第7条3号)と、内閣不信任決議案の可決又は信任決議案の否決のときに衆議院が解散されない場合の内閣総辞職(第69条)の規定があります。衆議院の解散権は内閣にあるとされていますが、内閣はこれまで憲法第7条に基づき幅広い解散権を持つとの立場で衆議院を解散してきました。しかし、衆議院の解散は内閣が不信任された場合に限られるとの考え方も有力です。
 ドイツでは、議院内閣の連邦首相ではなく、連邦大統領に連邦議会の解散権がありますが、解散は、連邦議会で3回の首相指名選挙が行われても指名できない場合と連邦首相に対する不信任が決議された場合に限られ、不信任の成立は、戦前のワイマール憲法下で内閣不信任案の乱発がナチスの権力掌握をもたらした経験を踏まえ、不信任と同時に新首相が指名された場合に制限されています。
 日本の場合も、衆議院の解散・総選挙には国民の声を国政に反映させるという側面があるものの、党利党略による解散を自由にできるとするのはいかがなものでしょうか。
(弁護士 杉山 潔志)
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No.66
ドローンを飛ばす際には、ご注意を!
 「ドローン」という言葉を最近よく耳にするようになりました。元々は遠隔操縦機一般を指す言葉でしたが、最近は、小型のラジコンクワッドコプターなどを指す言葉として使われています。安価で手に入り、カメラなどを取り付けて、素人でも簡単に上空からの動画を撮ることができるようになったので、実際に見たことがある人も多いのではないでしょうか。
 一方で、操縦ミスからくる墜落などがおこり、一歩間違えれば人が怪我をする可能性がある事態も生じてきました。そこで、航空法が改正され人口密集地(人口密度が4000人以上/?の地域)や空港の近く、お祭りやイベントで人が多く集まる場所、高度150メートル以上では、200グラム以上のドローンを勝手に飛ばしてはいけないことになりました(例えば、京都市内の多くの場所は人口密集地に当たります)。また、それ以外の場所で飛ばす場合にも、「日中に目視できる範囲でとばすこと」「人や建物と30メートル以上の距離を保つこと」「危険物を輸送しないこと」などの規制が設けられました。
 これらの規制に違反した場合には、50万円以下の罰金という刑罰規定も設けられています。
 また、「国会議事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等、外国公館等及び原子力事業所の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」という法律が別に制定されて、国の重要施設や大使館などの上空でドローンを飛ばすことも禁止されました。
 手軽に空を飛ばせるツールとして愛好家も多いと思いますが、このように新しい規制が出来ていますので、人に危害を加えない為にもご注意下さい。
(弁護士 毛利 崇)
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No.65
マンション管理組合役員の責任 〜 会計担当者が横領した場合
 マンション住まいをいたしますと、管理組合の役員が回ってまいります。組織活動や事務処理ができる方には白羽の矢が立ちます。本業が忙しくても、ボランティア精神で一肌脱がざるを得ないこともあるでしょう。やってみれば、役員さん達だけでなくご近所とのつき合いも広がり深まり、充実した任期を全うできたという方も多いと思います。
 管理組合で扱うお金は、大きなマンションだと、修繕積立金等、大変な金額にのぼります。以下でご紹介する判例は、少し深刻なケースです。役員を後任に交代した後、会計担当役員が横領していたことが発覚しました。管理組合は、会計担当者を告訴するとともに損害賠償を請求しましたが、会計担当者は経済的に窮しており全額の弁償ができませんでした。すると、管理組合が、当時の役員らにも(理事長や副理事長、会計監査)管理責任違反を理由に損害賠償を請求して訴えを起こしたのです。
 判決(東京地裁平成27年3月30日判決)は、副理事長には責任はなかったとしましたが、理事長と会計監査に対しては管理義務違反を理由に横領した会計担当役員と同額(残額)の賠償を命じました。会計担当役員は、理事長と会計監査にワープロで作成した偽造の残高証明書を示していましたが、その体裁から安易に信用したことに疑問を呈し、通帳確認を怠ったことに過失があったと判断しました。
 ボランティア精神で引き受けた役員で、互いに仲良くやっていても、特にお金に関しては厳格なチェックが求められます。この判例は、役員を引き受ける方々に注意を喚起していると考えられます。
(弁護士 井関 佳法)
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No.64
改正道路交通法と自転車事故の対策
 2015年6月1日に改正道路交通法が施行され,自転車の安全対策が強化されました。危険な自転車運転を繰り返す人には安全講習を義務づけ,一定期間内に受講しないと5万円以下の罰金を科されるという内容です。
 自転車の講習につながる危険行為は,信号無視,酒酔い運転,一時停止の無視,安全運転義務違反(傘さしや携帯電話使用の片手運転で事故を起こした等)などの14項目であり,3年以内に2回以上の違反があると受講命令が出されます。
 国内の交通事故の約2割が自転車関連事故です。自転車は免許不要で手軽ですが,自動車のような強制保険はありません。しかし,小学生の自転車にはねられた女性が寝たきり状態になり,小学生の親に9500万円の賠償を命じた判決など高額賠償の判決が相次いでいます。
 自動車の任意保険や火災保険に附帯して個人賠償責任保険を付けると,日常生活における事故である自転車事故も補償対象となります。示談代行サービス付きの保険や弁護士費用が出る保険もあります。同居の親族や別居の未婚の子も補償されるなど広範囲であり,保険料は年間2000円程度です。ただし,日常生活ではない仕事中の事故には保険が出ません。なお,自転車店での点検整備により交付される「TSマーク」(1年間有効)は,その自転車に搭乗中の人の事故についての損害賠償保険金がありますが,基本は死亡と重度後遺障害対象であり,十分な補償とは言えません。
 自転車を利用者される方は,交通ルールを守るとともに,ヘルメットの着用などでご自身の身を守ること,そして,万一の事故に備えた保険の加入をお勧めします。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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No.63
婚姻をめぐる最高裁判例のご紹介 〜再婚禁止期間と夫婦同姓制度〜
1 再婚禁止期間、初の違憲判断
 民法733条1項は「女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」と定めています。この再婚禁止期間をめぐって、平成27年12月16日、最高裁は、条文のうち100日を超える部分について、憲法14条1項及び24条2項に違反すると判断しました。これにより、100日を超える部分は無効となり、近く改正されることになります。なお、最高裁は、100日間の再婚禁止期間を設けること自体は合憲であると判断しています。これは、父子の嫡出推定(民法772条)が、離婚した元夫及び再婚した夫の両者に重複してしまうことを避けるためといえます。
 全ての女性に一律に再婚禁止期間が課されることについて、最高裁の6人の裁判官は補足意見で、例外的に、女性に子が生まれないことが生物学上確実である・前婚の解消時点で妊娠していない等の場合は、医師の証明書等の客観的証拠があることを条件にして、再婚禁止期間の適用を除外する方法もありうるのではないかと検討しています。
 女性の婚姻に関する自由への制約と、子の身分関係の法的安定性をどのように考えるか、科学技術が発展した現代社会で、違憲判断が出てもなお、検討すべき課題は残っているように思います。
2 夫婦同姓制度、合憲とされるも…
 一方で、民法750条の夫婦同姓制度について、最高裁は、同日、憲法に違反しないと判断しました。もっとも、最高裁は、判決文の中で、選択的夫婦別姓制度等を採用するかどうかについては、国会における議論が必要と指摘しています。
3 上記2つの判断は、いずれも婚姻をめぐる問題であり、一人ひとりの生き方に関わってきます。司法判断で完結するのではなく、国民的な議論が必要と考えます。
(弁護士 清洲 真理)
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No.62
うるう秒
 2015年7月1日午前8時59分59秒と午前9時00分00秒の間に8時59分60秒が挿入されました。この60秒は"うるう秒"です。今回の実施は、2012年7月1日に次いで26回目となります。
 地球の自転は、長期的には地球と月との潮汐作用によって次第に遅くなっている上、短期的には、潮流と海底の摩擦や地球内部のマントルの動きなどの影響で不規則に変化しています。かつての世界時は、地球の自転を24時間として天文学的に決められていましたが、現在の協定世界時は厳格な原子時計で1秒の長さが決められているため、地球の自転時間と差異が生じ、"うるう秒"が実施されているのです。今回の"うるう秒"の実施は、総務省と情報通信研究機構の連名で本年1月16日に告知されました。
 時間については、英国グリニッジ天文台子午儀の中心を経過する子午線を経度の本初の子午線とし、東経135度の子午線をもって日本の標準時と定めるとの明治19年の勅令、従来の標準時を中央標準時と称するとの明治28年の勅令が存し、(国)情報通信研究機構法第14条1項3号に情報通信研究機構の業務として「周波数標準値を設定し、標準電波を発射し、及び標準時を通報すること」との規定がありますが、"うるう秒"の実施には確たる法的根拠はありません。
 コンピューターが"うるう秒"を適切に処理できないと、様々な問題が生じます。前回の実施の際には、インターネット交流サイト「ミクシィ」でシステム障害が発生しました。近年、"うるう秒"廃止論が大きくなっています。廃止論は、航空管制などのシステム障害やGPS時刻との誤差の回避などを根拠とし、存続論は、天体観測機器のトラブル回避、地球自転と同期している市民生活などを根拠としています。
 国際電気通信連合でも、本年11月に存廃が最終決定される予定でしたが、2023年に再び検討することになりました。さて、どのように考えますか?

(□存続 □廃止 □どちらでもよい)

(弁護士 杉山 潔志)
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No.61
国に対する 「住民訴訟」
 総工費2,520億円の新国立競技場の建設計画が白紙撤回となりました。また、東京五輪のエンブレム(佐野氏が作成)について、使用を中止し、再募集することになりました。その損害は、新国立競技場については、少なくとも59億円と報道されています。
 国をはじめとするこの問題の関係者は、謝罪したり、辞任したりしています。大変な無駄遣いであり、その損害は税金で賄われることになると思いますが、関係者は誰一人として、損害の補填をするとは言っていません。
 これが自治体プロパーな出来事であれば、その損害の原因を作った首長、自治体の職員らに対して、住民の訴えに基づいて、損賠賠償の請求(損害を被った自治体に対する損害の補填)をすることができます。いわゆる、住民訴訟です(地自法242条の2)。
 この10年間だけでも、首長や職員に対して1億円以上の損害賠償が命じられたものは、10件に及びます。京都の例でいえば、京都市がゴルフ場開発用地を著しく高額で買い取った、いわゆるポンポン山事件について、当時の市長に対して約26億円の支払いが命じられました。
 住民訴訟は、自治体の住民が自治体の財務行為の違法をチェックし損害を回復する制度です。この制度の活用により、自治体の無駄遣いが是正されてきました。国が動かすお金は大きく、国民が監視するような制度がない中、無駄遣いの程度は、自治体の比ではないと思います。
 「国民」が「国」の財務行為の違法をチェックし損害の回復を図る制度として、国に対する「住民訴訟」制度を、早急に創るべきと思います。  この制度ができれば、私たち国民も、もっと税金の使い道に対して注意を払うようになるという効果も期待できます。
(弁護士 中尾 誠)
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No.60
戦争法案が強行採決で可決成立
 2015年9月19日未明、いわゆる戦争法案が参議院で強行採決され、可決成立しました。2日前の17日には、参議院の特別委員会でも強行採決がなされましたが、採決時に議場が騒然となり議事録からもどのような発言が行われたのか全く分からない、手続上許されない手法で採決がなされました。このような政権与党のやり方は、議会制民主主義を踏みにじるもので絶対に許されるべきではありません。
 さらに、この法案については、全国の憲法学者、弁護士会をはじめ、元最高裁判所長官、元内閣法制局長官など、憲法の解釈に携わる専門家の大多数が違憲であるという見解を表明していました。加えて10万人を超える市民が国会を包囲して抗議行動を起こし、連日全国で反対のデモがおこるなど、民主主義、国民主権の観点からも、国会で採決が強行されることがあってはならない法案でした。しかし、これらの意見に全く耳をかたむけない政権与党などの数の暴力によって憲法違反の法律ができてしまったのです。
 もっとも、国会で可決されたからといって憲法違反の法律が合憲になることはありません。憲法98条は「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と定めています。つまり、憲法違反の法律を国会が作ることはできませんし、国会がそのような法律を作ったとしても無効なのです。
 今後、戦争法を根拠にした様々な動きが出てきたとしても、私たちは「違憲の法律に基づいた行動はできない!」と主張することができます。安倍政権の目指す憲法9条の改悪を絶対に阻止して、戦争法を使わせない取組を継続することがますます重要になっています。
(弁護士 毛利 崇)
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No.59
見切り発車されるマイナンバー制度
 住民票を有する全ての方に一生使うことになる12桁の番号が付けられます。これを個人番号(マイナンバー)と言います。本年10月以降、市町村から、住民票の住所地にマイナンバーの通知カードが簡易書留郵便(転送不可)で送られます。
 住民票の住所地と異なるところにお住まいの方は、予め市町村に実際に住んでいる場所(居所)を登録して、マイナンバーの通知カードの送付を受けることになります。東日本大震災やDVなどの理由で住民票と異なるところにお住まいの方も少なくありません。マイナンバーの通知カードを受け取れないと、様々な支障が生じますので、居所の登録を行なって下さい。
 マイナンバー制度は、来年1月からスタートします。税、社会保障、災害対策の手続きで、マイナンバーの確認と本人確認(身元確認)が行なわれます。1月以降、マイナンバーカードの発行を請求できます。これがあれば、マイナンバー確認と本人確認が一度に出来ます。住民票と免許証等で確認を受けることも出来ます。
 事業者の方は、社会保障関係の手続や税務関係の申告・調書に取引相手のマイナンバー(法人の場合は法人番号)を記載しなければならなくなります。従業員や取引相手のマイナンバーを取得し、適切に管理しなければなりません。
 とても面倒な制度で、莫大な予算が投入されます。
 どうしてこんな制度を導入するのでしょうか?「公平公正な社会の実現、行政の効率化、国民の利便性の向上」のためと説明されています。しかし、IT産業のための仕事づくりであり、国民総背番号制で、情報流出の危険を伴い、国民のプライバシー権に抵触し、侵害する危険があります。
 問題点をしっかり見るとともに、導入への対応も遺漏なく行ないたいものです。この問題での学習会の要請に応じられますので、お気軽にお声かけ下さい。
(弁護士 井関 佳法)
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No.58
親子関係をめぐる最高裁判例の紹介〜血縁関係がない法的親子関係について〜
 2014年、親子関係について4本の最高裁判例が出ました。
 父親が、認知した子が自分の子ではないと分かったことから認知無効を求めた2件の判決では、血縁関係がないことを理由に、認知無効が認められました。
 他方で、法律上の夫婦の婚姻中にできた子など嫡出推定が働く子について、親子関係不存在を求めた2件の判決では、DNA鑑定で他の男性との間の子であることが明らかになっても、親子関係の取消が認められませんでした。子の側からの請求も認められませんでした。
 これらの判例から考えると、血縁関係がない父子が法的な親子関係を否定する場合、非嫡出子(認知など)・推定されない嫡出子(婚姻中であるが夫が刑務所に入所中に妊娠したなど)・推定される嫡出子で結論が分かれうることになります。判例によると、推定される嫡出子が親子関係不存在を求める場合、血縁関係がないことが明らかでも法的な親子関係が否定されないため、争うのは非常に困難です。推定される嫡出子の場合、父が子の出生を知ってから1年以内に嫡出否認を求める方法をするしかなさそうです。
 なお、2013年の最高裁判例では、性同一性障害特例法に基づき性別の取扱いを変更した夫(元女性)と妻との間に人工授精で生まれた子について、推定される嫡出子として父子関係が認められました。
 親子関係をめぐる法的問題は様々ですが、私は、子の福祉という観点が重要と考えます。その点で、子からの親子関係不存在の訴えを認めなかった最高裁判例には疑問が残ります。
(弁護士 清洲 真理)
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No.57
動産が動産でなくなるとき ー付合について
 賃借人が賃借建物の明け渡しをする際に「賃借人が建物内に存置、設置している動産は賃借人が収去して建物を明け渡す。」と合意し、離婚の際に、「婚姻後に取得した動産は妻が取得する。」などと合意することがあります。テレビやタンスが動産であることは容易に理解できますが、建物に設置された給湯器やエアコンはどうでしょう。当事者の認識が一致していないと、収去や取得の際に揉めることになりそうです。
 民法第86条は「(1)土地及びその定着物は、不動産とする。(2)不動産以外の物は、すべて動産とする。」と定めています。しかし動産である給湯器やエアコンが建物に設置された場合はどうなるのでしょう。
 民法242条は、「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。」と規定しています。付合とは、1つの物に他の物が結合することです。付合の有無は、本体の物と不分離、一体となって毀損しなければ分離できない状態となっているか否かで判断されますが、物理的な結合だけでなく、経済的一体性や持続性、附属時の関係者の意思なども考慮されます。たとえば、室内に貼った壁紙は付合して建物所有者のものとなり、賃借権や小作権を有していない者が農地に蒔いた種から生育した苗は、地主(土地所有者)の所有物となります(最判昭和31年6月19日)。裁判例では、アンカーボルトで設置されたエレベーターやネオン看板については付合が否定され、壁の内部の配管を用いた空調設備では付合が認められています。
 建物建築後に取り付けられ、建物を毀損しないで取り外せる給湯器やエアコンは、建物に付合しないと判断される場合が多いと思われますが、事後の紛争防止のため、借家の明け渡しや離婚の合意をする際に、個々の動産について収去の有無や取得者を決めておくとよいでしょう。
(弁護士 杉山 潔志)
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No.56
変な条例
 この3月に兵庫県議会で、自転車の購入者に保険の加入を義務付ける条例・「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が制定されました。近時、自転車事故によって多額の損害賠償が認められる例があることから、そのための対処(ないし、被害者救済)としてのものと思われます。変な条例だなと思っていたところ、京都府でも、平成19年に同じような条例・「京都府自転車の安全な利用の促進に関する条例」が制定されていました。保険に関しては、「加入するよう努めなければならない」とされており、努力義務です。このようなことを、自治体が、住民に対して、条例で義務づける(努力義務の場合を含めて)ことが必要でしょうか。
 また、京都府の条例は、「歩行者が通行している歩道等においては、傘を使用しながら運転をしないこと」を励行することがうたわれています。確かにその通りですが、わざわざ条例にすること(行政が関与すること)が、必要なことでしょうか。
 変な条例と言えば、平成25年1月には、京都市議会において、「京都市清酒の普及の促進に関する省令」が制定されています。この種の条例は、全国で初めてということで、その後、同様の条例制定の動き(「秋田の酒による乾杯を推進する条例(秋田県)」「地元本格焼酎による乾杯を推進する条例(宮崎県日南市)」など)が全国に広まっているとのことです。
 京都市の条例は、「清酒による乾杯の習慣を広めること」を目的としているほか、「市民の協力」として、京都市(ないし事業者)が清酒の普及の促進に必要な処置を講じる取組をすることに、「市民は協力するよう努めるものとする」としています。清酒が苦手な市民もおり、そんなことを行政から言われることはないと思いませんか。
 「特に害はないのでは?」と言われればそれまでですが、皆さんは、どう思われますか。
(弁護士 中尾 誠)
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No.55
憲法9条をないがしろにする「我が軍」発言
 安倍首相は、3月20日、自衛隊の訓練の目的について参議院予算委員会で質問を受けたことに対し「我が軍の透明性を上げていくことにおいては、大きな成果をあげている」と、自衛隊が軍隊であるという前提での発言をしました。
 そもそも、憲法9条は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」と明記しており、日本が軍隊を持つことは憲法上許されません。そこで、歴代の政府は、自衛隊を「必要最小限度の実力」と定義して、「戦力」や「軍隊」にはあたらないとの立場を取ってきたのです。この論法自体が詭弁だと思いますが、少なくとも歴代の政権は、自衛隊を憲法9条の枠組みの中に納めないといけない、憲法の枠組みを外れてはいけないという意識をもっていたと言えます。これに対し、安倍首相の上記発言は、憲法9条の枠組みを全く逸脱した発言で、建前であっても憲法9条というルールを逸脱してはならないという意識がないことを表しています。
 このような問題発言を受けて、国会の内外で批判の声が上がりましたが、その批判に対し同月25日、菅官房長官は「自衛隊は我が国の防衛を主たる任務としている。このような組織を軍隊と呼ぶのであれば、自衛隊も軍隊の一つということだ。」と開き直り発言を行いました。憲法9条の下では、自衛隊は軍隊と定義づけられる存在であってはならないという原則を全く無視しています。安倍首相は、その後、「我が軍」という言葉について「こうした答弁によって大切な予算委の時間が使われるなら、そういう言葉は私は使いません」と発言をしていますが、これも事の本質を全く理解していない発言です。
 憲法9条をないがしろにする安倍政権に対して、「憲法9条を守れ!」「戦争NO!」の声を一層大きくしていきましょう。
(弁護士 毛利 崇)
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No.54
京都市の生活保護廃止処分を違法とする判例が出されましたので、紹介します。
 (最高裁平成26年10月23日判決)
 Aさんは、昭和61年からずっと自宅で白地の反物に手描きで柄を付ける手描き友禅の仕事をしてきましたが、平成8年から生活保護を受けていました。受給当初の仕事の収入は月額13万円程でしたが、平成12年以降は月額2〜6万円程度で推移していました。Aさんは、平成6年に小型自動車を買い、現在まで仕事に使ってきました。
 京都市は、平成18年5月、Aさんに「友禅の仕事の収入を月額11万円(必要経費を除く)まで増額してください」という指示書を渡しました。収入を増やすことができるはずもなく、京都市は同年9月に「指示が守られていない」と言って生活保護を廃止したのでした。ひどいですね!
 京都地裁は、Aさんを勝訴させましたが、大阪高裁では逆転敗訴でした。大阪高裁は、指示書には「友禅の仕事の収入を月額11万円(必要経費を除く)まで増額してください」としか書かれていないけれど、仮に収入を増額できなくても、車を手放せば生活保護の廃止はしないという趣旨であったから、京都市の指示は現実不可能だったとは言えないと言ったのでした。
 これに対して最高裁は、Aさんを再び勝たせました。生活保護法上、福祉事務所は指示や指導ができ、従わない場合は生活保護の廃止ができるとされていますが、生活保護法施行規則上、その指示は書面でなされなければならないと定めています。最高裁は、書面による指示を求める趣旨は、福祉事務所の恣意を抑制し、保護受給者の権利を擁護するためであり、この点で高裁は間違った判断をしているので、判断のやり直し(差戻)を命じたのでした。
 生活保護への攻撃が強められ、生活保護法も改悪された中、保護受給者の権利を正当に認めた判決として注目されるべきでしょう。
(弁護士 井関 佳法)
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No.53
時効あれこれ
 「戦争犯罪に時効はない」とか、「もう時効なので、今だから話をしますが…」とかいう形で、この言葉を耳にすることがあります。
 前者は、刑事の時効に関連する言葉です。2010年に法律が改正されるまでは、どんな重い罪を犯した場合でも、25年が経過すれば、時効で処罰されないことになっていました。「しかし、戦争犯罪は別」という思いがこもっていました(2010年の改正で、殺人罪についての時効はなくなりましたので、今は、インパクトが弱くなっていますが)。
 後者は、そのことが起こった当時であれば差し障りがあることでも、時の経過の中で大丈夫になることが、往々にしてあることを表しています。
 うちあけ話の是非はともかく、民事の時効について、いくつか注意点を。
 *飲み屋のツケは、1年経過すれば、支払わなくてもよくなります。消滅時効が2年のものは、売掛代金、また、請負代金と病院代は3年です。いずれも請求ができる時からですが、その行為のあった時(お酒を飲んだ時、工事をした時)からと考えた方が間違いないです。
 *業者の方で、売掛金の回収のために、請求書を毎月欠かさず送っておられる例があります。請求することは、時効を中断するための方法ですが、請求をした後6か月以内に、訴訟を提起したりしないと、「中断」とはなりません。請求書を送り続けても、それだけでは、時効が成立してしまいます。
 *以前にサラ金から借りて、その後10年以上支払っていない債務(株式会社からの借り入れは5年、それ以外からの借り入れは10年で時効)について、債権を譲り受けたとする業者から通知書が送られてくることがあります。あわてて連絡をして、業者から、「1,000円だけでもとりあえず支払ってくれ」などと言われ、支払いをすれば、「時効の中断」となってしまいます。
(弁護士 中尾 誠)
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No.52
男女雇用機会均等法に定める「間接差別」の範囲が拡大しました
 男女雇用機会均等法は、法の下の平等を定める日本国憲法の理念に従って、性別によって雇用の機会や待遇の差別がなされることがないようにすることや女性労働者の妊娠中、出産後の健康の確保を図ることなどを目的として定められた法律です。
 この法律は、「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と定めて、性別を理由とする差別の禁止をうたっています。このように、性別を直接的な理由として差別することを「直接差別」といいます。これに対して、性別を直接的な条件にはしていないが、ある条件をつけることで結果としてどちらか一方の性別が不利な結果となる条件付けのことを「間接差別」といいます。
 間接差別の代表的なものとして男女雇用機会均等法は「合理的な理由がないにもかかわらず転勤要件を設けること」を禁止してきました。なぜなら全国転勤を前提とした場合には、子育てなどの関係で一般的には女性が就労しにくくなるからです。もっとも、不当な転勤要件が禁止されてきたのは、これまでは「総合職の募集」に限定されていました。
 しかし、2014年7月1日からは「すべての労働者の募集、採用、昇進、職種の変更をする際に、合理的な理由がないにも関わらず転勤要件を設けること」が禁止されました。これによって、例えば「部長への昇進にあたって、全国展開する支店などがないのに、全国転勤を要件とすること」や「労働者の募集に当たって、長期間にわたる転居を伴う転勤の実態がないのに、全国転勤を要件とすること」はできなくなりました。
 この改正によってすべての転勤要件が違法になるわけではありませんが、転勤を理由に昇進などをあきらめる労働者が減ることにつながればいいと思います。
(弁護士 毛利 崇)
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No.51
「ブラック企業」をなくそう!
 入社した労働者の能力・技術・時間・心身を薄給で浪費させて次々と食い潰し、労働者を消耗品同然に扱う企業が「ブラック企業」と呼ばれ、社会問題となっています。「ブラック企業」は、2013年の新語・流行語大賞に入選しました。
 「ブラック企業」では、合理的理由のないリストラ、偽装請負、名ばかり管理職、サービス残業の強要、パワハラ、精神疾患や過労死などが蔓延し、労働者に対するマインドコントロールや脅迫的通告、訴訟などでの徹底抗戦を行い、不当労働行為や労働災害からの責任を逃れようとしています。これに対し、労働者や法律関係者による告発、労働組合の結成・加入や是正に向けた運動も進んでいます。他方で、「ブラック企業」として告発されていない企業や自治体、学校などの職場でも"ブラック化"が進んでいると言われ、公然とサービス残業を求める、時間外賃金を支払わないなどの相談も後を絶ちません。
 このような中で、2014年6月、「過労死等防止対策推進法」が成立し、この法律で過労死等防止啓発月間と定められた11月にも施行される見通しです。この法律は、国に過労死等の防止対策を推進する責務を認め、国が過労死等の防止対策の大綱を定め、過労死の概要と施策を国会に報告するとともに、過労死等の実態調査、過労死等の防止に関する調査研究を行うものと規定しています。また、国と自治体は、過労死等の防止の啓発、相談の機会の確保、産業医等の研修機会の確保のための施策を講ずるとも定めています。
 しかし、法律ができただけで過労死がなくなる訳ではありません。「ブラック企業」や過労死をなくしていくためには国民の取り組みが重要です。どのような働き方をするかという問題は、どのような社会をつくっていくのかという問題です。過労死等防止対策推進法の成立の機会に、私たちの働き方を見つめ直してみる必要がありそうです。
(弁護士 杉山 潔志)
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No.50
児童手当の振込口座の差押は違法!
 鳥取県は、滞納税金を徴収するために、滞納処分として、児童手当の振り込まれる口座を差し押さえ、振り込まれていた児童手当を滞納税金の支払いに充てました。(租税の場合、確実能率的な徴収を図るため、国や自治体に、裁判所を利用せずに自ら差し押さえをする権限が認められています。)
 しかし、鳥取地裁、その控訴審である広島高裁松江支部は、このような差し押さえは許されないとして、差し押さえ金額のほぼ全額の返還を命ずる判決を下しました。
 児童手当を支払ってもらう権利は、児童の健やかな成長と家庭生活の安定に必要なお金であるとの理由から、差し押さえが禁止されています。しかし、児童手当が一旦口座に振り込まれると、それ以外のお金と混ざってしまいますし、それを差し押えてはいけないと定めた直接の規定はありません。鳥取県は、そこに目を付けて差し押さたのです。
 しかし判決は、県は児童手当が振り込まれる日であることを認識した上で、振り込まれた9分後に差し押さえしており、しかも口座には振り込まれた児童手当以外には殆ど残金がなかったことから、差し押えたのは預金口座であるが、差し押さえが禁止されている児童手当を支払ってもらう権利を差し押えたのと変わりないとの理由から、差し押さえを禁止した児童手当法の趣旨に反して違法だと断罪しました。
 この判決の考え方は、差し押さえが禁止されている生活保護や年金にも当てはまるばかりでなく、租税以外の公営住宅家賃や公立病医医療費回収のための民事上の強制執行にも先例として参考になると言われています。
 これは重要な判例ですが、未だ行政の現場担当者に周知されていないようです。しっかり監視していきましょう。
(弁護士 井関 佳法)
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No.49
特殊公務災害 −震災と自治体職員
★震災と特殊公務災害
 東日本大震災の直後に、津波が襲来する直前まで、防災無線放送で住民の皆さんに避難を呼びかけ、津波の犠牲となった南三陸町の女性職員のことを覚えていますか。
 自治体職員が仕事中に災害に遭った場合は、公務災害として損害の補償がされます。また、警察官、消防職員、災害応急対策従事職員などについては、「高度の危険が予測される公務中の災害」の場合は、通常の1.5倍の補償を受けることが出来ます。特殊公務災害と言います。
 震災の時、上記の女性職員をはじめ、多くの自治体職員の方が、住民の避難の指示・誘導などを行っている中で亡くなられています。私は、当然、このような場合、特殊公務災害が認められると思っていました。しかし、基金支部(公務災害の認定をする機関)において、多くの事例について、非該当になっているという記事を見ることが多くありました。
★審査会での認定・新たな通知
 その後、支部審査会(非該当となった事案を再度審査する機関)で、特殊公務災害が認められる事案が相次ぎました。国会での議論もあり、基金(基金支部との関係では本部)がこれまでの処理を見直すことになり、この5月1日にその旨の通知(事務連絡・平成26年5月1日)を震災の事案を担当する各基金支部に出しました。
 具体的には、「支部審査会において取消裁決の出された事案の概要一覧」を示して、「既に特殊公務災害に該当しないと判断された事案についても、再度、特殊公務災害の認定請求が行われた場合には改めて審査を行うこと」としています。
 通常、一度手続きが終了したものについて、再度同じ手続きはできません。また、これから申請する場合も、これまでよりは広く認めることになりますので、大きな前進です。
 みなさんとは直接関係ないことかもしれませんが、被災地ではこのようなことも起きています。
(弁護士 中尾 誠)
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No.48
生活保護法と私たちの生活
 2013年8月1日から、生活保護基準の引き下げが実施され、3年間で最大10%、総額670億円の削減が計画されていますが、安倍内閣は、2013年の臨時国会で、特定秘密保護法を成立させた陰で、生活保護法も「改正」しました。
 今回の「改正」の主要な点は、第1に、口頭でもできた保護開始申請を原則として書面によるものとしたことです。次に、福祉事務所の調査権限を拡大し、扶養義務者への照会が大幅に強化されました。また、安定した職業に就いて保護から脱却した人に一時金(単身世帯10万円、多人数世帯15万円)を支給することにしました。さらに、不正・不適正受給者に対する罰則を強化されました。このような法「改正」は、保護申請を抑え込み、保護からの脱却を推進し、さらなる保護費削減を狙ったものです。
 これらに先立って、"生活保護バッシング"が行われましたが、生活保護制度は、憲法25条の生存権を支える重要な柱であり、保護を受けていない人にも様々な関係を持っています。たとえば、最低賃金が定められる際には、常に生活保護基準との整合性が議論されます。また、自治体が行っている就学援助や保育料は、生活保護基準を目安として利用条件や料金が設定され、住民税の非課税基準も生活保護基準と連動しています。
 朝日訴訟と呼ばれた生活保護裁判で、東京地方裁判所は、昭和35年10月19日、国内における低所得者層の人々が維持している生活水準をもって生活保護法の保障する「健康で文化的な生活水準」に当たると解してはならず、最低限度の水準は決して予算の有無によって決定されるものではなく、むしろこれを指導支配すべきものであると判示しました(浅沼判決)。当時の働く人たちの大きな支援運動が世論を動かし、画期的な判決を勝ち取る力になったのです。
 格差社会が進行し、非正規労働者やワーキングプアが増大する中で社会保障制度が後退させられています。社会保障制度の後退をやめさせ、新しい福祉社会を創っていくために、浅沼判決を勝ち取った運動にまさるような取り組みが必要です。
(弁護士 杉山 潔志)
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No.47
犯罪被害 −法改正−
 犯罪被害にあうことは、心身ともに大変辛いことです。犯罪被害者の保護を図る方向で法改正がありましたのでご報告いたします。

 順番にご説明します。犯罪の被害にあった場合、早く被害届を提出することが必要です。さらに処罰を求める意思を明らかにする告訴も検討すべきです。告訴があれば、事件は必ず検察に送致され、処分結果が通知されます。強姦罪等一部の性犯罪や、名誉毀損、器物損壊などは、告訴がなければ起訴できません(親告罪)。

 一定の犯罪の被害者は、警察から被疑者の氏名や年齢、逮捕の事実、起訴・不起訴等の処分結果を連絡してもらうことができます。殺人、傷害、強制わいせつ、強姦、ひき逃げや交通事故の死亡事故等です。

 上記一定の犯罪被害者は、起訴されて刑事裁判が始れば、裁判へ正式に参加することができます(裁判所の許可を得て被害者参加人となる)。その場合には、裁判への出席、検察官に意見を述べ説明を受けること、裁判で意見を陳述すること等が認められます。これらについて、弁護士を頼むことができます。経済的に余裕がない場合は、国選弁護制度もあります。

 この度、被害者参加人が裁判所に出頭するための旅費等が支給してもらえるようになりました。国選弁護の利用基準が緩和されました。

 不起訴にされ納得できない場合は、検察審査会に審査請求することができます。
(弁護士 井関 佳法)
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No.46
架空請求・無許可の債権回収会社の請求に気をつけて!
1 突然,知らない業者から「未納のサイト利用料の譲渡を受けた」「カード債権を譲り受けた」という郵便・電報が来ることがあります。通知文には「ただちに強制回収の手続をとる」「大至急電話せよ」などと書かれているケースも。「覚えてないけど払える金額だから」「昔の借金が残っていたかも」と思い連絡をとったり支払ったりすると,その後も繰り返しいろいろな形で請求されることがあります。
 知らない業者からの請求の場合,具体的な対処法は次のとおりです。
(1)相手に連絡をとらないこと。電話番号や勤務先などの個人情報を聞き出されてさらなる被害を受けるおそれあり。
(2)請求の手紙や葉書などは大切に保管すること。後でトラブルになったときの証拠になる。
(3)正当な請求かどうか不安がある時は,自分で相手に接触はせず,弁護士など専門家・専門機関に相談する。借りた覚えがあっても過払いであったり,消滅時効を主張できる可能性あり。
(4)悪質な行為が繰り返されるときは,警察に届け出る。
2 実は,債権回収業務は,弁護士でない者が行うことは禁止されています。そして,「何人も,他人の権利を譲り受けて,訴訟,調停,和解その他の手段によって,その権利の実行をすることを業とすることができない」(弁護士法73条)のであり,違反すると刑罰の対象となります。
 例外として許されるのは,債権管理回収業者(サービサー)として法務大臣が許可した債権回収会社のみです。資本金5億円以上で取締役に弁護士が入っているなどの厳しい要件があり,許可業者名は法務省のホームページで確認できます。許可業者のなりすましの場合もあるので,正しい連絡先を確認することが必要です。
 貸金業者から債権を買取り無許可で債権回収業を行っていた業者がサービサー法違反で有罪になっています(最高裁平成24年2月6日決定)。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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No.45
過労死防止基本法の制定に向けて〜働きすぎを防止するために〜
1.「ブラック企業」問題
 昨年の流行語大賞で「ブラック企業」という言葉が入賞し、若者を過酷な仕事で使いつぶす企業が社会問題となりました。9月に厚労省が実施した調査では、対象企業の8割以上に違法残業などの労基法違反が発覚、是正勧告されています。

2.過労死・過労自殺の増加
 昨年5月、国連は日本政府に異例の勧告を行い、長時間労働を是正し、過労死対策をとるよう求めました。しかし、8〜9月に実施された調査では、日本の有給休暇消化率は6年連続世界ワースト1位を記録するなど、長時間労働は解消されていません。厚労省によると、12年度に脳・心臓疾患による過労死で労災認定されたのは123人、精神疾患による過労自殺は過去最高の93人です。20代に限ってみると、過労のために自殺を選ぶ若者が過労死人数の10倍以上となっています。

3.過労死防止基本法の制定を
 過労死・過労自殺した若者の遺族から、国に総合的な対策を求める基本法の制定をという声が高まり、過労死防止基本法が今年の通常国会に提出、制定を目指す予定です。法のポイントは(1)労働者も含む勤労市民全体の過労死防止という基本理念を掲げる(2)国と自治体、雇用者の責務を明確にする(3)過労死・過労自殺についての調査・研究と、それに基づく総合対策を国などが行うことです。
 これはいわゆる理念法で、具体的な権利や義務が発生するわけではありません。しかし、全ての働く人を対象とした総合政策を行うことが可能となるため、「働きすぎによる死の防止」という観点から、法整備のきっかけとなることができます。
 過酷な労働は命を奪うことが世間に広まった今、過労死防止基本法の制定が求められています。
(弁護士 清洲 真理)
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No.44
老後と後始末
 おじいちゃん・おばあちゃんから孫へ教育資金を贈与することについて、贈与税がかからない制度が今年4月から実施されています(平成27年12月31日まで)が、取り扱い開始から2か月半で大手信託4行の残高が1,000億円を超えたと言われています。
 日本の高い教育費を是正することが、本来の国の役割だと思いますが、高齢者の気持ち(亡くなってからよりも、生きている間に孫に喜んでもらえたらそれの方がよい)を巧みに利用したもので、国民に自助(家族・親族内)努力を強いるものであり、このような動きには注意が必要です。
 それはともかく、高齢者にとって、その財産をどう相続させるかということが、大きな関心事の1つのようです。私は、「自分の財産なのだから、全部、使ってしまったらいいのでは」ということをよく言いますが、必ずしも、賛成はしてもらえません。
 遺言を書く場合、次のような点を頭に入れておくことが必要です。(1)遺言は、書いた時点での本人の意思ですが、その後、気が変わった時に書き直さないと、本人の意思に反するような遺言が効果を持ちます。(2)認知症などになり、意思能力がなくなる(ないと判断される)と、遺言は書くことができません。(3)相続人間の取り分(法定相続分)とは異なる分け方を決めることが多いですので、そのことにより、亡くなられた後に、揉め事が発生することもあります(もちろん、書かないと揉める場合もありますが)。また、その形式(主には、自筆遺言、公正証書遺言のいずれとするか)についても、検討が必要です。
 どのような遺言を書くか(書かないか)は、その人と家族(相続人)との関係における、最後の関わり方であり、正解は、それぞれによって異なります。じっくりとお考えください。
(弁護士 中尾 誠)
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No.43
"特定秘密保護法"に反対しましょう!
 政府は、臨時国会に特定秘密保護法案を提出し、現在、衆議院の特別委員会で審議がされています。特定秘密保護法は「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」の4分野について、国が一方的に情報を「特定秘密」に指定し、この秘密を漏らしたり、漏らすことをそそのかした人を懲役10年という重罰に処することを内容とした法律です。
 しかし、この法律は、権力者が都合の悪い事実を秘密にして国民に知られないようにすることを可能にするものです。4分野に限定されているとは言っても、国の扱う情報は多かれ少なかれ「防衛」や「外交」に関わっています。また、例えば「テロの防止」という名目で、国民の反原発運動を阻止するために原発の新規設置の情報が隠されるという事態も十分に想定されるのです。
 国民が権力者の権力行使を監視して、それを是正させることは、国民主権、民主主義の基本です。戦前の日本では、軍機保護法や国防保安法によって情報が隠され、多くの国民が実は日本が敗戦の道を突き進んでいるということを知りませんでした。権力者による自由な情報隠しを許せば、民主主義の根本が崩されてしまうのです。
 しかも、特定秘密に関わる人やその友人、家族は、活動歴や資産、傷病歴などの高度なプライバシー情報を調査されることになっています。これは市民のプライバシー権という基本的人権を侵害するものです。権力者が誰かのプライバシー情報を合法的に取得するために、例えば、同級生に特定秘密に関わる人がいるという口実を使うなど、この法律が悪用される危険性もあります。また、重罰が課されることでメディアの取材活動が萎縮することも考えられます。
 国民の知る権利やプライバシー権を侵害する特定秘密保護法に反対しましょう。
(弁護士 毛利 崇)
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No.42
非嫡出子(婚外子)相続差別違憲判決の意味
 民法第900条4号は、非嫡出子(婚外子)の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1とすると定めています。最高裁判所は、婚外子からこの規定にしたがって行われた遺産分割審判に対する不服申立(特別抗告)に対し、民法が法律婚主義を採用していることを根拠として繰り返し抗告申立を退けてきました。)
 ところが、最高裁判所は、2013年9月4日、子にとっては自ら選択、修正する余地のないこと(父母が婚姻関係になかったこと)を理由として、その子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、権利を保障すべきだという考え方が確立されてきており、2001年7月当時には嫡出子と非嫡出子の相続分を区別する規定の合理的根拠が失われ、憲法第14条に違反していたと判断しました。ただし、既に行われた遺産分割には判決の影響は及ばないと判示しています。)
 この違憲決定は、政府に民法第900条4号の改正を促すことになりますが、影響はそれだけに留まらないと思われます。)
 まず、法制審議会総会は、1996年に家族法の改正を決定し、嫡出子と非嫡出子の相続分の同等だけでなく、選択的夫婦別姓などの改正も政府に答申しました。しかし、自民党内の保守的な潮流の抵抗にあって、家族法改正が阻まれてきました。この違憲決定は、家族法の見直しにも影響を与えそうです。)
 次に、憲法改正論議への影響です。自民党は、2012年、日本国憲法改正草案を発表しました。改正案では家族を尊重されるべき社会の自然かつ基礎的な単位ととらえています。この違憲決定は、法律婚家族を重視する改正草案の考え方を批判する内容を含んでいます。)
 この違憲決定は、憲法が国民の人権意識に支えられてその内容を豊かにすること、不断の努力によって自由と権利を保持しなければならないこと(憲法第12条)の意味を私たちに示すものとなっています。
(弁護士 杉山 潔志)
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No.41
非嫡出子の相続権
 結婚している両親から生まれた子を嫡出子と言い、結婚していない両親から生まれた子を非嫡出子と言います。民法は、嫡出子と非嫡出子がいる親が死んで相続が発生する場合、非嫡出子の相続分(相続の権利)を嫡出子の2分の1しか認めておらず(民法第900条4号但書前段)、明治時代から変わっていません。この民法の規定は不合理な差別で違憲ではないかが争われてきました。
 最高裁判決は、これまで何度も、民法の採用する法律婚主義を保護しようとするもので合憲だと判断しました。つまり、非嫡出子の相続権を制限することが、結婚する際に事実婚ではなく法律婚の選択を推し進めると考えているのです。何の責任もない子が不利益を受けるのはおかしいですね。また結婚や家族に対する国民の意識等背景事情も、明治時代から大きく変化してきています。諸外国でも非嫡出子の相続権制限を解消する方向で立法整備が進んでいます。この最高裁の判例に対しても、違憲だとの批判が続いていました。
 今、この点を争う事件が2件、最高裁にかかっており、7月10日に弁論(裁判)が開かれ、この秋にも判決が予定されています。いずれも高裁判決では、民法の規定を合憲としていましたが、最高裁は、高裁判決をひっくり返す場合にだけ弁論を開きます。またこれらの事件は、最高裁の中で、違憲判断や判例変更する際にだけ回される大法廷にかかっており、最高裁がいよいよ非嫡出子の相続権を制限している民法規定に違憲判決を出すのではないかと注目されています。
(2013年8月20日記)

【追加】
 9月4日、最高裁は、非嫡出子を差別する民法の規定を、法の下の平等を定めた憲法に違反すると、全員一致で決定しました!
 政府と国会は、一刻も早い民法改正が求められています。
(2013年9月20日記)
(弁護士 井関 佳法)
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No.40
「いじめ防止対策推進法」と大津市いじめ事件
 2013年6月28日に「いじめ防止対策推進法」が公布されました(3か月後施行)。
 その特徴は,(1)学校にいじめ防止対策の組織を設置 (2)学校は早期発見のための調査や相談体制の整備 (3)いじめがあった場合,学校はすみやかに事実確認し,被害者側への支援,加害者側への指導助言をする (4)学校はいじめが犯罪行為に当たるときは警察と連携して対処。重大な被害が生じるおそれがある場合は警察に対し通報する義務 (5)加害者側には懲戒や出席停止を行う,などです。

 いじめは,被害者に精神的・身体的苦痛を与えるものであり,重大な人権侵害行為です。特に子どもの場合は,心身の成長や人格形成に重大な影響を与えます。まわりで見ている子も深く傷ついていることが多く,また,加害者も過去に被害経験がある子は少なくありません。教育現場におけるいじめ防止対策はとても重要であり,法律の機械的な適用ではなく,子どもに応じた教育的な配慮をしていく必要があります。
 他方で,管理強化や過重負担により教員が疲弊し,休職や退職に追い込まれています。一人ひとりの子どもに目の届く教育をするためには,教員を増やして少人数教育を実現することが必要です。
また,子ども達が互いの尊厳を認め合う価値観を育んでいくためには,自分の尊厳が十分尊重されていると実感することが不可欠です。教育の場でも,子ども達の人権を保障し,よりよい学校づくりへの意見を表明し参加する権利を認めることが大切です。

 2011年に大津市立中学校の生徒が自死した事件は,社会的に注目され,今回の法制化のきっかけとなりました。第三者調査委員会は,2013年1月に225頁の調査報告書をまとめ,大津市はこれをホームページ上において公表しました。報告書は,詳細な事実認定をし,学校や教育委員会の問題点を指摘しており,大きな教訓を示していると思います。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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No.39
DV問題を考える
 今年に入り、元夫や元交際相手の男性から、女性やその親族が襲われる事件が立て続けに起きました。
 2月には、長野県で、元交際相手の男が、ストーカーの末、元交際相手の女性宅に侵入し、同居していた女性の甥を殺害後、自殺しました。5月には、神奈川県で、元夫が、身元を隠して生活していた妻の居場所を突き止め、路上で妻を切り付けるという殺人未遂事件が起きました。6月には、栃木県で、三男への虐待を理由に服役していた夫が、出所後、妻の母親に暴行し、死亡させた容疑で逮捕されるという痛ましい事件も起きています。さらに、同月、元サッカー日本代表の選手が、妻に対し「今から殺しに行く」と電話し、脅迫容疑で逮捕されました。
 警察による「配偶者からの暴力事案の認知状況」は、平成24年には43,950件で、前年と比較して28%増加し、また、「ストーカー事案の認知状況」は19,920件で、前年比36,3%増と、どちらも大幅に増加しています。これは、相談件数が増えたことに加えて、今までは民事不介入として扱われていたケースにも、警察が介入するようになったことも一因であると考えられ、警察のDV問題に対する姿勢は積極的になっています。
 しかし、女性の住民票の閲覧を制限していた・シェルターに避難していた・警察に相談していた・裁判所からDV防止法に基づく接近禁止命令が出ていた、などの対応がされていたにも関わらず、残念ながら事件となったケースもあり、社会に衝撃を与えました。先にあげた5月の神奈川の事件では、被害女性が自宅前に不審な自転車があったことを警察に相談し、それが探偵関係者のものと判明したにも関わらず、警察から女性への連絡はなく、さらに、事件後には、担当の警察官が「連絡をした」などと虚偽の報告をしていたことが明らかになっています。
 今後もDV被害の相談は増えると考えられます。これらの問題の中で、慎重な対応と関連機関の連携で、未然に防げたであろうものを整理し、今後に役立て、早急に不十分な点を見直していく必要に迫られています。
(弁護士 清洲 真理)
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No.38
離婚あれこれ
 「子供を連れて奥さんが家を出て行った」という相談をよく聞きます。親権者を決める際に、その既成事実が優先され、そのままの状態が維持される(この場合、親権者は奥さんになる)という例が多くあります。(夫と)同じ空気を吸いたくないという気持ちが、離婚の動機だとすれば、別居したいということは、当たり前の要求かもしれません。子供を置いて家を出れば、逆に、親権者は相手方になることが多いということも事実です。離婚後、子供はいずれかで一方と生活をすることになるのは已むを得ないとしても、「過渡期」をどうすれば、要らぬトラブル(最大の被害者は子供ですが)を防ぐことが出来るかについて、なかなか良い案はありません。
 バブルの時代、離婚の財産分与と言えば、購入した不動産を売却して、ローン分を差し引いて残ったお金を折半するというケースがよくありました。しかし、今では、土地の値上がりもほとんどなく、建物の価値は低くなるので、オーバーローンになるケースがよくあります。財産が不動産だけの場合、借主が一方の場合、負債(オーバーローン分)は財産分与として、相手方に半分負担させることは出来ません(判決上)ので、大変なことになります。もちろん、他に財産があれば、その分は、合わせて算定しますし、調停ないし話し合いの場面では、そのことを考慮して解決している例が多くありますが。また、夫婦の収入を当てにしてローンを組んでいる場合も、離婚により予定が狂うことになります。
 これから不動産を購入される方は、離婚のことも、ちらっとで結構ですので、思い浮かべてはいかがでしょうか。
 また、離婚を考えている方は、早めに弁護士に相談されることを、お勧めします。
(弁護士 中尾 誠)
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No.37
改正労働契約法が施行されました
 有期雇用労働者の雇用の安定を図るという目的で改正された労働契約法が、4月1日から完全施行されました。今回の改正の大きな目玉は、5年を超えて有期雇用契約を更新された労働者が使用者に対して無期雇用にするように申し出れば、期間の定めのない雇用に転換されるという制度ができたことです。
 これまで、半年や1年といった単位で契約の更新をし続けて、長年同じ職場で仕事をしてきたのに、有期雇用であるが故に、ある日突然、次の更新の時は更新しないからと使用者から通告されるという事態が多く生じてきました。有期雇用から無期雇用に転換する制度ができたことは、このような現状を見ると一歩前進だと思います。
 しかし、一方で、この制度ができたが故に5年で雇い止めにするといった事態が横行するのではないかと危惧されています。最初から更新は1年毎で4回までと契約書に記載されることも予想されます。また、無期に転換する際に労働条件を低下させることで無期転換の申出をしにくくしたり、口頭での申出であるのをいいことに申出を聞いていないなどと主張する使用者も出てくるでしょう。
 無期転換の制度は一歩前進であることは間違いありませんが、上記のような欠陥も併せ持つ制度です。労働者が安心して働くことができるようにさらなる制度の改善が求められます。また、有期雇用労働者の生活を守るという目的で改正された労働契約法のために、逆に有期雇用労働者が職を失うという本末転倒の事態が起こらないようにするためにも、制度をしっかりと理解して活用する必要があります。当事務所では、労働法の学習会への講師派遣も受け付けています。興味を持たれた方は、当事務所までお問い合わせ下さい。
(弁護士 毛利 崇)
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No.36
保証債務について考える
 先日、自営業の方の破産事件を申し立てました。申立をした御主人には、金融機関から200万円〜2000万円の借金が数件ありました。最初の借入の際に奥さんが連帯保証しましたが、借用時の契約書は見当たらないものの最初の借入はほとんど残っておらず、奥さんの保証債務はほとんどないとのことでした。ところが、申立手続きの中で、奥さんの保証は根保証で、奥さんも2000万円余の保証債務が存することが判明しました。
 このように、保証債務には、根保証や身元保証、賃借債務の保証などのように、保証債務の期間や範囲が不明確で、保証人に過酷な結果をもたらすものがあります。そのうち、法律で責任の範囲を制限しているのは身元保証だけです。
 法務省の法制審議会民法部会は、2013年2月26日、債権法改正の中間試案をまとめました。中間試案には、中小企業が借金する時に、経営者の親族や知人の個人保証を禁止する規定が盛り込まれました。不十分な理解で保証人となった者と中小企業経営者との人間関係が経営悪化によって滅茶苦茶になるのを防止する効果や保証の有無でなく事業の将来性を考えて融資する姿勢に金融機関を誘導するという効果を狙ったもののようです。
 しかし、中小企業には担保となる資産がないところが多く、保証人規制が金融機関の貸し渋りを助長するという危惧や、経営に関与していない親族・知人を「経営者」として保証させる形の脱法の危険性が指摘されています。どの範囲で保証人資格を線引きするかが今後の焦点となりますが、保証債務には、範囲や期間など検討すべき課題が山積しているという状況です。
(弁護士 杉山 潔志)
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No.35
高年齢者雇用安定法が改正されました
 自営業者の年金は、以前から65歳からの支給でしたが、会社員は、60歳定年制とセットで60歳から年金が支給されてきました。しかし、2001年から60〜65歳までの年金が徐々に減額され、2013年4月からは支給開始年齢が61歳に引き上げられ、その後3年ごとに支給年齢が1歳ずつ引き上げられ、2025年4月からは65歳までが無年金とされます。社会保障がバッサリ削減されているわけです。
 その穴を埋めるための法律が高年齢者雇用安定法です。2004年に制定され、事業主に65歳定年制か、定年後の高齢者の継続雇用制度の導入を義務付けましたが、対象者を限定する労使協定を結べば、定年後の高齢者を全員継続雇用しなくてよい、とされていました。
 25年4月1日に施行される改正法は、この点、継続雇用の対象を希望者全員にするよう改めました。ただ、平成25年3月31日までに対象者を限定する労使協定を結んでいる場合は、年金支給年齢以上の年齢の者について、継続雇用制度の対象者を限定することを認めています。
 一方では、高年齢者の雇用確保が遺漏なく保障されるよう監視が必要です。他方では、この制度が、年金削減の繕い物であることも見ておかなければなりません。
(弁護士 井関 佳法)
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No.34
家庭裁判所の調停・審判の手続が変わります! …家事事件手続法のポイント…
 2013年1月1日より,家事事件手続法が施行され,家庭裁判所の調停・審判の手続が,大きく変わります。
 家事事件とは,夫婦間の紛争や遺産分割など家庭に関する事件のことを言います。
 家事事件手続法のポイントは,(1)手続の透明化,当事者の手続保障の拡充 (2)手続をより利用しやすいものとすること (3)子どもの地位の強化,などです。
 主な改正点の第1は,原則として申立書の写しを相手方に送付するという点です。これまでは,調停前の話し合いがない場合,調停の相手方は,調停期日に初めて,調停委員を通じて,申立人の主張の内容を知ることがほとんどでした。その意味では,相手方に対する手続保障になります。
 しかし,申立書に申立人の主張を詳細に記載すると,かえって感情的対立が激化し,調停による解決が困難になるおそれがあり,注意が必要です。離婚事件などでは,家庭裁判所の定型書式は,簡単なチェック方式となっています。
 また,ドメスティックバイオレンスによる離婚調停など,申立人が相手方には住所や連絡先などを知られたくない場合でも,申立書に住所や電話番号を記載すると,相手方に知られることになります。この場合の記載方法等は,家庭裁判所の窓口や弁護士と十分ご相談下さい。
 第2は,家事審判事件では,当事者による記録の閲覧謄写が原則として許可されることです。裁判所に陳述書や資料等を提出する際は,調停段階であっても審判に移行すれば相手方が見ることを前提にする必要があります。
 第3は,当事者が遠隔地に居住しているときには,電話会議又はテレビ会議システムの利用が可能になりました。
 第4は,子どもの意見表明権の保障及び子どもの手続代理人の新設です。
 家事事件手続法が適用されるのは,2013年1月1日以降に申し立てられた家事事件です。
 なお,今回の改正を契機として,家庭裁判所によっては,家事調停事件の期日開始時と終了時に双方当事者の立会いの上での調停委員の手続説明等を実施し,あるいは検討しているところがあります。これまでの調停では,待合室も別々であり,当事者双方が同席することは成立時以外ほとんどありませんでした。同席を拒む事情等がある場合は,事前に裁判所に説明をしておく方がよいでしょう。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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No.33
「マイナンバー法案」の危険性
 国民一人一人に番号をつけるいわゆる「マイナンバー」の導入を政府・国会が検討しています。確かにマイナンバーで個人情報が検索できれば便利かもしれません。しかし、この制度は、重大な人権侵害を起こす危険性があるので、簡単に導入をしてよい制度ではないと思います。
 マイナンバー制度は、個人情報を集約して番号一つで検索できるようにする制度ですから、本来の目的以外に利用されるおそれがあります。例えば、警察などの捜査機関が、令状がないと取得できない個人情報を秘密裏に取得して捜査に利用する可能性があります。個人情報を勝手に収集・利用されない権利は憲法上認められた重要な人権ですが、これが簡単に侵害される危険性があるのです。
 また、集められた個人情報は電子データとしてコンピューターに保管されます。人間のやることに絶対はありませんし、これまでも行政内部の電子データが流出した事件は多くあります。電子データは短時間にコピーを作成することが簡単にできますし、住所、氏名はもちろんのこと、勤務先や取引の状況、利用している医療機関、収入や資産の状況、親戚関係、取得している資格や免許などの情報が大量にインターネットなどの公開の場に流出する危険性があるのです。
 国による個人情報の収得と集積は、私たちのプライバシー権などを侵害し、個人情報の不法利用や流出、拡散などの危険性をもたらすものです。利便性と危険性とは表裏一体であることを忘れてはいけないと思います。
(弁護士 毛利 崇)
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No.32
国際司法裁判所ってどんな仕組み?
 尖閣諸島・竹島等、領土問題が連日マスコミをにぎわしています。北方領土問題も未解決のままです。政府は8月17日、竹島問題について国際司法裁判所に提訴する方針を表明しました。
 国際司法裁判所(ICJ)は国際司法裁判所規程に基づいて設立され、国際連合と同時に1945年6月発足(効力発生は10月)した国連の主要な司法機関です。所在地は、2回にわたる「万国平和会議」の開催、世界のNGOが結集し日本の憲法9条にふれたことで有名な1999年の「国際平和会議」が開催されたオランダのハ−グです。選挙で選ばれた15名の裁判官から構成され、日本からは、これまで田中耕太郎氏、小田滋氏が選ばれており、現在は小和田恆氏(外務省条約局長、国連大使等を歴任、雅子皇太子妃の実父)が選出されています。国のみが原告または被告となる資格があり、同裁判所の判決は一審のみで、どちらも上訴はできません。但し、決定的な要素に関する事実についての証拠で裁判当時見つからなかったものを発見した場合は6カ月以内に限り再審請求ができます。判決については、個別の裁判官は、日本の最高裁判決と同様、多数意見に対する反対意見あるいは補足意見を表明できます。裁判費用については裁判所自体に関する費用は国連が負担し、各当事者の費用は各自の負担です。これまで、世界遺産をめぐるカンボジア・タイの国境紛争で両国部隊の即時撤退を命ずる等の実績があります。
 問題は「裁判管轄」です。相手方が、全ての事件について管轄を受諾する宣言(強制管轄受諾宣言)をしているか、提訴に対して「応訴」しない限り、裁判は始まりません。日本はすでに強制管轄受諾宣言をしていますが、韓国も中国も同宣言はしておらず、応訴も拒否する意向を表明しています。領土三問題は、それぞれ性格が異なります。特に竹島は日本が韓国の外交権を事実上奪い併合の直前に領土編入したという経過があります。徒に対立を煽るのではなく、国連憲章2条4項(紛争の平和的解決)の精神に即し、歴史的経過に真摯に向き合い、正確な事実と道理に基づく交渉と国際社会へのアピールが大切です。
(弁護士 岩佐 英夫)
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No.31
コンプガチャってなにが問題?
 消費者庁がコンプガチャと呼ばれるゲームについて「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(http://www.caa.go.jp/representation/pdf/100121premiums_8.pdf)の5項に該当し、景表法に違反するという理由で規制すると発表しました。簡単に言うと、複数のカードを集めると新しい貴重なカードがもらえるというようなゲームは射幸心をあおるからダメだということです。
 しかし、問題の本質は、必ずしもこのような商品の提供形態のみにあるのではないと思います(ちなみに、景表法は、昭和37年にできた法律で現在のようなデジタルメディアの発達を想定して定められた法律ではありません)。
 コンプガチャ問題の本質は、「携帯電話という密行性の高い道具」を使って(「未成年」が「親に内緒」で)「電話代に上乗せという形」で「ゲームに大金をつぎ込める」というシステムにもあると思います。目の前で現金が出ていかない形で、射幸心をあおるゲーム(要はバクチ)に財布に入っているお金以上の大金がつぎこめるというのは、クレジットカードでパチンコができるようなものです。
 携帯電話を利用して、いちいち現金決済をしなくても、買い物ができたり、口座振替ができたり、チケットが予約できたりするのはもちろん便利なのですが、一方で管理をきちんとしないととんでもないことになります。お子さんに携帯電話をもたせている親御さんも多いと思いますが、この機会に、是非、「子どもが勝手に大金を使うことができるようになっていないか」をチェックしてみてはいかがでしょうか。
 もし、身に覚えのない大金の請求が来たときには、法律家にご相談ください。
(弁護士 毛利 崇)
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No.30
老朽化した「空き家」問題
  ・・・固定資産税,解体工事費用・・・
(相談1)Aさんは,両親が亡くなり空き家を相続したが,収入が減り,固定資産税を払えない。家土地の買い手はなく,行政に寄付を申し出たところ,「建物を解体し,更地にしたら寄付を受けつける」とのこと。しかし,建物解体費用は100万円以上かかり,Aさんは負担できない状況。

(相談2)老朽化がすすみ,倒壊の危険がある空き家。所有者Bさんは,費用のかかる解体工事や補修工事をする気がないが,近所の住民から苦情が来る。

 Aさんは,相続放棄をしたいと考えましたが,相続放棄の期間(相続開始を知ってから3か月間)を経過していました。価値があると思っていた不動産が固定資産税や解体費用のかかるマイナスの財産になるとは思いもよらなかったというケースです。
 Bさんは,更地にすると,固定資産税が上るからそのまま放置しているとのこと。しかし,倒壊などにより第三者に損害を与えた場合は,所有者は不法行為責任を負うこととなり,早期の対策が必要です。
 少子高齢化のすすむ日本の人口は減り続け,空き家はますます増加します。
 秋田県大仙市は,行政代執行により,危険な空き家を撤去する条例を施行し,2012年3月に全国初の代執行をしたとの報道がありました。長崎市は,空き家の解体費用を肩代わりするかわりに,所有者に土地ごと寄付してもらい,避難場所も兼ねた公園に整備。すると人口流出が止まらなかった地域に移り住む人が出てくるという効果が出たとのこと。空き家の対策及び有効活用で,街の活性化をはかる政策が求められています。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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No.29
祇園の暴走事故で賠償金が支払われるか?
  〜任意保険の免責条項・雇用主の責任・車の所有者の責任〜
 ご存じのとおり京都の祇園で痛ましい自動車事故が起きました。また、この事件の衝撃がまだ癒えぬうちに今度は亀岡市で無免許運転自動車の暴走事故でも死傷者が出ることとなりました。心からお悔やみ、お見舞いを申し上げます。ご遺族や怪我をされた方の中に「あんなものは殺人だ!」「無免許で怪我をさせるなんてわざと怪我をさせたのと同じだ!」と考えて重罰を求める方もおられるのも当然の感情だと思います。
 しかし、損害賠償の側面から考えると祇園の事故が「わざとはねた」ということになると、被害者の方の不利益になることがあります。それが、保険の免責条項です。自動車を所有しておられる多くのかたは、自賠責保険以外に、任意保険をかけておられると思います。通常の人身事故であれば、保険会社が加害者に代わって賠償金を払ってくれます。しかし、特殊な事故の場合には、保険会社が保険金を払わないことがあるのです。例えば、「故意の殺人」だった場合や「無免許運転」だった場合がこれにあたります。亀岡の事故(無免許運転)や仮に祇園事故が殺人だった場合には、保険会社は賠償金を支払わないでしょう。
 祇園の事故は業務中の事故のようですが、その場合は雇い主に責任を問えることもあります(使用者責任)。また、車の所有者も責任を問われることがあります(運行供用者責任)。ですので、祇園事件や亀岡事件の自動車の所有者も賠償請求される可能性があります。しかし、かなりのお金持ちや大企業ならともかく、あれだけの事故の賠償金をぽんと払える人はそうそういないでしょう。もし保険会社が保険金を支払わなければ、被害者の方が賠償金を満額払ってもらえないという理不尽とともに、被害者はもちろん車の所有者も一生をかけて賠償金を払い続けなければならない、雇い主である会社は倒産してしまうということになりかねません。被害者はおろか加害者の周辺の方の人生までもが一変してしまう危険があるのです。
 皆さんも、一度、免責条項について自分の自動車保険がどうなっているのか確認をされてはいかがでしょうか?殺人や無免許運転まで行かなくても「え?こんな場合にも払ってもらえないの?」ということになっているかも知れません。
(弁護士 毛利 崇)
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No.28
会社更生法と民事再生法、どうちがうの?
 世界3位、日本で唯一のパソコンなどに使用される半導体のDRAMメーカーのエピルーダメモリが、2月27日、4480億円の債務を抱え、東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請し、受理されました。
 会社更生手続きは、比較的大規模の株式会社を想定した再建型の倒産手続で、会社の経営権が更生管財人に引き継がれ、従来の経営者は会社の経営から離脱します。会社の財産に設定されていた担保権は、更生手続によって処理され、手続外で担保権の行使はできません。管財人が更生計画を作成し、更生債権者等の決議に付されます。更生計画は管財人のもとで遂行され、旧株式の消却、新たな株式の募集の手続きが行われ、裁判所の更生手続終結決定により、新たな株主によって会社経営が継続されます。
 再建型の倒産手続には民事再生手続もあり、そごうなどがこの手続で再建されました。民事再生は、破産のおそれのある法人・個人が申立てることができ、手続の開始後も、従来の経営者が経営を続けます。裁判所は、必要に応じて監督委員、保全管理人、管財人を選任します。担保権は、手続外で執行可能で、事業継続に必要な場合に、裁判所に価格相当額を納付して消滅の許可を得ることができるだけです。申立人が再生計画を作成し、再生債権者の決議を経て認可されると、申立人が執行します。民事再生には、再生債権額が5000万円以下の場合に適用される小規模個人再生、給与所得者再生の手続があります。
 マイカルは民事再生の申立をしましたが、債権者やスポンサーの理解が得られず、会社更生手続に切り替えられました。
(弁護士 杉山 潔志)
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No.27
高齢者の財産管理について
 高齢者の財産が食い物にされているという相談が少なくありません。その高齢者が、財産管理を行うのに必要な能力を保持しているか、すでに失っているかがまず問題になります。
 財産管理能力があれば、それは食い物にされているのではなく、原則として援助であったり贈与であるということになります。いずれにしても、その高齢者が財産を渡したくないと思ってくれなければ、まわりの者が手助けすることができません。
 財産管理能力のない状態になっていれば、財産を守ることを任務とする成年後見人を家庭裁判所に選任してもらうことが必要です。四親等内の親族であれば成年後見人選任の申立てができます。財産管理能力の有無は、精神科などで成年後見用の診断書を書いてもらうことで確認することができます(裁判所のHPに書式が載っています)。この診断書を添えて申し立てるのが好ましいのですが、高齢者が食い物にしている者の支配管理下にあって、精神科に連れて行けない場合は、診断書なしでも申立ては受理されます。こうした紛争性の強いケースでは、親族からではなく弁護士など法律専門家が後見人に選任されることが多くなります。成年後見人が選任されれば、成年被後見人の財産は成年後見人の管理するところとなりますので、食い物にされることはなくなります。しかし、過去に食い物にされた財産を取り返すことまでは、容易ではないと考えたほうがよいようです。
 従って、おかしいと思ったら、早く動いてあげることが必要でしょう。
(弁護士 井関 佳法)
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No.26
自転車事故に気をつけて …自転車は自動車?
 「車両は、車道を通行しなければならない」と道交法17条で決められています。ご存知でしたか。例外的に、(1)自転車専用道などと指定された歩道、(2)13歳未満の子供、(3)70歳以上のお年寄り、(4)自転車の通行の安全を確保するためにやむ得ない場合、には歩道を運転することができます。車道を通ることが原則なのです。
 バス停などに人が大勢いるときに、ベルを鳴らしたりしていませんか。横に並んで歩いている学生さん達の真ん中を、速度を落とさずにすり抜けようとしたことはありませんか。
 そんな時に通行人にけがを負わせたら、原則として、あなたが悪いことになります。自転車と歩行者の間の事故は増え続けています。万一に備えて、保険に入っておくことも検討ください。自動車保険、火災保険などに付けられていることもありますので、確認をしてください。
 今日は新年会だから自動車は乗らず、自転車で家まで帰ろうとしたことはありませんか?もしも警察に捕まったら、自動車の飲酒運転と同じように刑罰が科せられます。法律では、2人乗りももちろん禁止されています(6歳未満の子供を乗せることは大丈夫ですが)。また、2台の自転車が並んで進むこともだめです。
 実態と合っていないですね。車道を通るときは、左側通行ですので、後ろから来る自動車は見えにくい状態です。また、自動車を運転している人も、自転車を邪魔者扱いにすることが多いので、正直言って、法律を守ることは大変です。
 警視庁は昨年10月に、「自転車は車道を走るのが原則」という方針を打ち出しましたが、自転車専用道路ないし専用レーンを作り、安心して自転車に乗ることができる道路の整備を行うことが先決だと思います。
(弁護士 中尾 誠)
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No.25
パワハラにご注意! ・・・職場のメンタルヘルス・・・
 最近,職場における「パワハラ」が社会問題化しています。
 パワー・ハラスメントとは,職務上の権限や地位を背景に,本来の業務の範囲を超えて人格や尊厳を傷つけるような言動を繰り返すことをいいます
 職場におけるいじめや嫌がらせは,従来は「個人の問題」「本人の性格」「会社は関係ない」とされ,あまり問題視されてきませんでした。
 しかし,執拗な非難叱責,威圧的言動,不適切な行為の強要,集団によるいじめなどが繰り返されることにより,精神疾患の原因となったり,自殺にまで追い詰められる場合があります。最近は,労災認定されたり,損害賠償請求裁判で会社に対しても高額の賠償が認められる事例も出ています。
 職場の労働強化,ノルマ強化の中で,そのストレスが女性や高齢者,非正規社員など弱い立場の者への攻撃となっている場合があります。リストラがらみの退職強要の目的が背景にある場合もあります。
 パワハラは,セクハラと同様,重大な人権侵害であるのみならず,職場環境の悪化,生産性の低下につながり,会社の社会的評価を下げ,経営にも重大な影響を与えます。
 雇用主は,労働者に対する安全配慮義務(健康配慮義務)があり,労働契約法5条で明文化されました。職場におけるハラスメント発生予防のために,研修などの監督教育,苦情相談等の手続の整備が必要です。また,具体的な被害があった場合には,雇用主は迅速適切に調査し,被害の拡大や再発防止の対策が必要です。加害者は懲戒処分を受けることもあります。
 パワハラ被害にあった人,あるいは被害を見た人は,まずは身近な人に相談しましょう。男性は誰にも相談しない人が多く,裁判例を見ても「うつ」で自殺に至るのは,男性が多いと感じます。
 ハラスメントがなく,お互いの人格を尊重しあう働きやすい職場環境づくりは,雇用主にとっても労働者にとっても重要です。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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No.24
「TPP」は農業だけの問題ではありません!
 最近、新聞やテレビで「TPP」という言葉を聞いたことがありませんか?TPPは、環太平洋経済連携協定の略称です。「関税を廃止して外国の安い農産物が日本でも売れるようにする仕組みだよね。農家の人は反対してるみたいだけど、野菜が安く買えるならいいんじゃないの。」などと思っている人もおり、そのような報道もなされていますが、大きな間違いです。
 TPPは、関税はもちろん、「すべての分野において外国と国内の条件を同じにしなさい」「関税以外でも同じ条件にするのに妨げになるもの(「非関税障壁」といいます)を撤廃しなさい」ということを要求しています。例えば、外国で承認されている農薬について、危険性があることを理由に日本が独自の規制を設けることはできなくなり、その結果、その農薬が使用されている農作物の輸入を拒否できなくなるとか、日本が独自に設けている労働者保護のための規制について、海外企業が日本で営業をする際の足かせになるから撤廃しろと要求される危険性があります。
 アジア40億人の市場に参入していくためにはTPPに参加することが不可欠だという見解を持っている人もいるようですが、アジアで1位、2位の人口を有する中国、インドは、TPPに参加する予定はありません。開国をしなければ世界の潮流に乗り遅れるという人もいますが、世界的にみても日本の関税率は低く、今以上に開国をする必要はありません。日本がTPPに参加する理由はないのです。TPPは、高失業率に悩むアメリカが、雇用を確保するために、日本の市場に簡単に参入できるよう非関税障壁を撤廃させるための仕組みです。TPPに参加すれば、日本の雇用や医療などが徹底的に破壊される危険性が高く、絶対に参加を許してはならないと思います。
(弁護士 毛利 崇)
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No.23
電気窃盗はイケマセン
 東海道・山陽新幹線で採用されているN700系新幹線は、グリーン車の全座席と普通車の窓側席にコンセントが設置されており、移動中にパソコンや携帯電話の充電ができ、たいへん便利です。しかし、外出先のコンビニや喫茶店、立ち寄り先の建物で、そこにコンセントがあるからといって、勝手に電気を使うと「窃盗罪」にあたることになるので注意が必要です。
 旧刑法では、「モノではない電気」を電力会社に無断で勝手に使用する「電気窃盗」を想定していなかったため、法廷では「電気が財物にあたるのか」が激しく争われました。1907年に施行された刑法では、「電気は財物とみなす」と規定し(現行刑法245条)、電気の窃盗は犯罪であることが明確にされました。
 電気窃盗の裁判例では、電力会社に無断で勝手に架線して電気を「かすめ取ってしまう」という大掛か りな犯罪として問題になりました。しかし、最近では、パソコンやラジカセを使用するために、およそ5分程度、自動販売機等のコンセントを無断使用したところで逮捕されたという例もあるようです(もっとも、これらの場合は被害金額が小さいため、起訴猶予処分になったと思われます)。
 携帯電話をはじめとして、便利な携帯型生活家電製品は私たちの身の回りにあふれています。N700系新幹線のように、コンセント(電気)の使用をサービスの一つとしているところは問題ないのですが、立ち寄った喫茶店で席のそばにコンセントがあったからといって、勝手に使ってはいけません。パソコンや携帯電話の充電が必要な緊急事態であれば、店主にひとこと断りをいれてから使わせていただくのがマナーというものです。電気窃盗は、マナー違反を通り越して犯罪になってしまうことをお忘れなく。
(弁護士 中村 直美)
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No.22
親権停止制度が成立(民法など改正)
 児童虐待が深刻な社会問題となっています。2009年度の児童相談所への相談件数は、10年前の約4倍にあたる4万4211件に達し、悲惨な児童虐待のニュースがマスコミに取り上げられることも多くなっています。
 児童虐待を防止するため、親権を「最長2年間停止できる」ことを柱とした民法や児童福祉法の改正案が、2011年5月27日、国会で成立しました。
 親権は、未成年の子どもを養育するための親の権利の総称で、親は子のために適正に親権を行使する義務があります。民法第818条1項は、成年に達しない子は、父母の親権に服すると規定しており、子の監護及び教育の権利及び義務、居所指定権、懲戒権、職業許可権、子の財産管理権及び法律行為の代表が親権の内容として定められています。親権の濫用や著しい不行跡があるときは、子の親族、検察官、児童相談所の所長の請求によって家庭裁判所が親権喪失を宣告することができると定められています。
 しかし、親権喪失制度には期限の定めがないため、親子関係の断絶につながりかねないとの懸念があり、必ずしも虐待防止の有効な手段となりえないとの指摘がなされていました。このような事情を背景に、最長2年間の親権停止制度が創設され、子ども本人や未成年後見人も親権停止の請求権者に加えられました。また、懲戒権については、監護・教育に必要な範囲と限定が明確化され、懲戒場へ入れるとの条文は削除されました。さらに、児童擁護施設長は、親権者の意に反しても必要な対応がとれるようになりました。
 これらの改正法は、平成24年4月から施行の予定ですが、虐待から子どもを守るためには児童福祉司の増員、親権制限や強制入所を判断する家庭裁判所や児童相談所の体制の強化、親への援助などの措置が必要です。
(弁護士 杉山 潔志)
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No.21
相続の手続と「熟慮期間」
 身内の人が亡くなって相続が開始され、自分が法定相続人であるとき、(1)全ての権利も義務(借金)も引き継ぐ「単純承認」、(2)一切の権利も義務も引き継がない「放棄」、(3)借金と財産のどちらが多いかわからないときには、相続によって得る財産の限度で借金を返済し、それでも返済できない借金は引き継がない「限定承認」という、3つの方法のいずれかを選択できます。
 この選択は、相続が開始されたことを知ってから3ヶ月以内にしなければなりません(この期間を「熟慮期間」といいます)。何もしないまま3ヶ月を経過すると、自動的に「単純承認」とみなされます。
 「単純承認」を選択する場合は特別な手続はいりませんが、「放棄」または「限定承認」をするには、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に「申述」という手続を、相続が開始されたことを知ってから3ヶ月以内にとることが必要です。3ヶ月以内に財産や借金の調査を完了させることが困難で、どの方法を選ぶか判断ができない場合には、家庭裁判所に「熟慮期間」の延長の申立ができます。
 なお、東日本大震災に伴う特例として、2011年3月11日当時に被災地(福島県・宮城県・岩手県の全て、及び青森・茨城・栃木・千葉・新潟・長野の各県の指定された市町村)に住所を有していた相続人で、2010年12月11日以降に自分のために相続が開始されたことを知った人は「熟慮期間」が2011年11月30日まで延長されています。この特例は、3月11日の相続人の住所を基準としており、被相続人の最後の住所地は関係がありません。
(弁護士 岩佐 英夫)
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No.20
面接交渉権
 離婚する際、あるいはその後、財産分与・慰謝料・養育費という金銭問題とともに、未成年の子がいる場合には、親権者の指定と面接交渉権の問題が出てくる。面接交渉権とは、離婚後、子と一緒に暮らさない親が子と会う権利である。激しく争われることが少なくない。
 しかし、家庭裁判所のスタンスは、かなりはっきりしている。
 まず、面接交渉権を、子の権利として考えている。親の都合で離婚がなされ、一方の親と一緒に暮らせなくなっても、親子の関係に何らの影響はない。そして、親から大切に思われているということ自体が、子にとって重要である。その最も素直で自然な形は「親と会うこと」であると、家庭裁判所は考えている。
 従って、別に住んでいる親が、不貞をして出ていった親であっても、養育費を送ってこない親であっても、また、かつて他方の親や子に暴力を振ったり暴言を吐いたことがある親であっても、その程度にもよるが、原則として「子に会わせるべきだ」というところから出発して考えている。
 子と暮らしている親の立場では、「相手方の顔も見たくない」「養育費も支払わないのに」という声はよく分るが、家庭裁判所がこうしたスタンスで面接交渉の事件を処理していることは、念頭に置いておくべきであろう。
(弁護士 井関 佳法)
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No.19
ビンラディンの殺害
 アメリカ特殊部隊は、2011年5月1日にパキスタンの潜伏先の住居を急襲し、アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンを殺害した。その状況は現場から映像を交え、刻々とリアルタイムでホワイトハウスに伝えられていた。オバマ大統領らは、殺害の様子も映像で見ていたのかもしれない。
 今回の作戦は、「ジェロニモ」という暗号が使われたという。ジェロニモとは、白人に抵抗したアメリカの先住民族の戦士の名前である。ビンラディン=ジェロニモである。オバマは、やはり「白人」の大統領なのである。
 アメリカではどう表現しているのか知らないが、日本ではビンラディン容疑者というように「容疑者」という表示をしている。法律家の常識では、容疑者は逮捕(身柄拘束)されることはあっても、いきなり殺害されることはない。しかし、新聞報道を見る限りでは、アメリカは身柄拘束をしようとした形跡はない。「殺害ありき」だったのである。
 ビンラディンが9・11事件の首謀者であるのであれば、殺人罪、建造物損壊罪などで、逮捕・起訴すればよいのである。アメリカは、刑事手続きを経ることなくビンラディンを殺害することが出来るのだろうか。そんなことが出来るのであれば、力(今回の場合は、国家権力を盾にした軍事力)さえあれば、何でもできることになる。そのような大きな力のないものは「テロ」に走らざるを得ない。
 仮に、ビンラディンが日本に潜伏していたとして、同じようなことが起こったとすれば、国内で発生した殺人事件について、その容疑者(主犯はオバマ)を、日本の警察・検察は逮捕できる、さらに言えば、国内の治安維持のためには逮捕しなくてはいけない。どうするのだろうか。
(弁護士 中尾 誠)
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No.18
有期雇用規制を実現しよう!
 現在、厚生労働省では、有期雇用(期限付き雇用)を法律で規制する方向で議論がされています。具体的な法律案が、いつ頃、国会に出てくるかは不透明な状況ですが、規制の方向で政府が検討をしているのは間違いありません。

 近年問題となっている非正規労働者の大部分は、正社員と同じ仕事をしても低賃金で、しかも、期間を区切られて雇用(有期雇用)をされています。その結果、いわゆるワーキングプアと呼ばれる生活を余儀なくされるだけでなく、雇用期間満了の時期が迫ると「契約を更新してもらえるのだろうか?」「更新されなかったら、生活はどうなるのだろうか?」といった不安にさいなまれることになります。また、このような不安の為に、本来なら権利として取得できる有給休暇などが取得できない(=権利の主張ができない)状況になっています。龍谷大学の脇田教授は、有期雇用のことを「解雇付き雇用」と言い換えるべきだと提唱されています。また、ヨーロッパでは、事実上、解雇を容易にする有期雇用は違法だとして、厳しく制限をされています。

 雇い主にとっては、「権利が主張できず、解雇しやすく、低賃金で働かざるを得ない有期雇用労働者」の方が、「権利を主張し、解雇しにくく、有期雇用労働者よりは賃金の高い正社員」よりも便利なことは明らかです。有期雇用を規制しなければ、どんどんと正社員は減らされて有期雇用労働者への置き換えが進みます。ですから、この問題は、決して有期雇用労働者のみの問題ではありません。政府が検討を始めている今こそ、私たちは、有期雇用労働者の実態をしっかり学習して、法律で制限をするように訴える必要があると思います。
(弁護士  毛利 崇)
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No.17
相続税は、かかるの?
 昨年末に政府税制調査会が発表した2011(平成23)年度税制改正大綱には、相続税の大幅な強化が盛り込まれています。これまで「相続税がかかるほどの資産は無い」と思っていた人にも、相続税の負担が生じる可能性が出てきました。
 現在の相続税の基礎控除は「5000万円 +(1000万円×法定相続人の数)」ですが、改正案は「3000万円 +(600万円×法定相続人の数)」としており、4割も圧縮されています。
 例えば、夫婦と子供2人の家族で、夫が死亡した場合を考えてみましょう。法定相続人は、妻と2人の子の計3名です。現行制度によれば相続財産8000万円まで基礎控除が受けられますが、改正大綱によれば4800万円までに引き下げられてしまうのです。夫名義で6000万円ほどの相続財産がある場合、現行制度によれば非課税、改正後は60万円の相続税を支払わなければならないと試算されます。このようにして、相続税の課税対象の割合は、現在の4%台から一気に6%台に上ると見込まれます。
 また、相続税の最高税率も、現在の50%から55%に上る予定です。
 さらに、死亡保険金の非課税枠(限度額)は法定相続人1人当り500万円ですが、改正により法定相続人の中の一定の人(未成年者・障害者・同居人)に限られることになり、非課税枠が縮小されました。先ほどの家族で、妻のみが夫と同居、2人の子は独立していたとして、2000万円の生命保険受取金があった場合を考えてみましょう。現行制度によれば、2000万円のうち1500万円が非課税とされますが、改正後は同居していた妻しか非課税枠の対象にならず、500万円が非課税、1500万円を相続財産に加え課税対象になります。非課税枠が縮小された結果、現行で課税対象でないのに改正後は相続税の対象となったり、現行制度の下で相続税がかかる場合でも改正により増税されることになるのです。
 この相続税改正案が3月の通常国会で成立すると、2011(平成23)年4月1日以降に生じた相続に適用されることになります。これまで「相続税は関係ない」と人ごとに思っていた方も、相続税対策を考えなければならないのかもしれません。また、相続税は申告税ですから、課税対象でないと誤解して申告漏れなど無いようにご注意ください。
(弁護士  中村 直美)
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No.16
事故の現場検証
 人身事故があると、現場検証が行われて実況見分調書が作成される。この実況見分調書は、事故の原因、過失割合等を明らかにする上で重要な証拠、しばしば決定的な証拠となる。
 実況見分調書上には、「加害者はA点で初めて被害者がa点を走行するのを発見した、加害者はB点でブレーキをかけその時被害者はb点を走行しており、×点で衝突した、そして加害者はC点に停車し被害者はc点に転倒した状態で停車した」というように、現場図面上に双方の動きが記入される。裁判官は、この実況見分調書をもとに、各点間の距離や所要時間などを計算して「緻密に」責任を究明していく。
 実際は、「あっ」と思ったら、あるいはせいぜい「あっー」と思ったらドッカーンである。「あっ」と思った場所やぶつかった場所が何処なのかは、そんなに簡単に分かるものではない。
 しかも、現場検証は交通をストップしておこなわれるわけではない。事故当事者は、再現走行車両に乗せてもらって各点が何処なのかを確認させてもらえるわけではない。車がビュンビュン走行する道路の脇で、歩行者目線でそれらの場所を確認させられるだけである。しかし、高速で走行する運転席からの視野と道路脇の歩行者視界は必ずしも同じではない。
 従って、現場検証が後日行われる場合には、予め事故現場を車で走行してみて事故時の記憶を喚起してみるべきである。事故直後に現場検証が行われる場合には、慎重に、よくよく思い出して説明すべきである。事故を起こした負い目から、警察官に言われるままに各点を決めてはならない。
 さらに問題なのは、軽微な事故の場合などには、加害者の立ち会いだけで、被害者の立ち会いなしで、現場検証が済まされて事件が処理されることがある。交通事故の当事者となった場合には、必ず現場検証に立ち会わせてもらって、事故状況の説明をさせてもらわなければならない。すでに現場検証が終わっている場合でも、再度の実施が可能である。
(弁護士  井関 佳法)
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No.15
動き出した改正検察審査会
 民主党小沢旧幹事長の政治資金規制法違反事件にかかわる強制起訴や国会喚問のニュースがマスコミをにぎわせています。
 これまで、刑事事件の公訴提起の権限は検察官だけに認められ、検察官は事情によっては公訴を提起しないことができるとされていました。唯一の例外として、付審判請求がありました。この制度は、公務員職権乱用などの事件の不起訴処分に対し、裁判所の審判に付するとの決定により、公訴提起があったとされ、裁判所の指定した弁護士が検察官の職務を行うというものですが、これまでに付審判の決定がなされたのは、極めてわずかです。
 検察官の不起訴処分に対しては、一般の市民から選ばれた検察審査員で構成される検察審査会に対して審査請求ができましたが、起訴相当の判断がなされても、検察官には公訴提起の義務はありません。
 司法制度改革の中で、裁判員制度の創設と並んで検察審査会法が改正され、検察審査会の起訴相当の議決に対する再度の不起訴処分に対し、検察審査会が起訴相当の議決をしたときは、検察官の役割をする弁護士が指定され、指定弁護士が公訴提起を行うことになりました(強制起訴)。
 小沢旧幹事長の政治資金規正法違反事件については、2010年4月に起訴相当議決がなされましたが、再度不起訴処分がなされ、10月4日、検察審査会が再度の起訴相当議決をし、公訴提起されることになりました。明石歩道橋事故事件、福知山線列車脱線事故事件などに続いて4件目の強制起訴です。
 強制起訴の制度については、問題点や課題が指摘されていますが、公衆訴追の導入と公判中心主義の実現に向けた第一歩として評価できると思われます。
(弁護士 杉山 潔志)
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No.14
野良猫殺害事件
 小さい頃、神戸の中華料理店の近くには、ノラ猫がいないとよく言われていました。それは、豚マンの代わりに、ノラ猫を捕まえて、猫マンにしているというのが、専らの噂でした。
 ノラ猫を勝手に捕まえて殺したら、警察に捕まるでしょうか?
 隣の家の飼い猫を捕まえて殺したら、その猫は、刑法上は財物(財産的価値のあるもの、他人の物)であり、窃盗や器物損壊に該当します。しかし、ノラ猫は、「他人が持っている物」ではないので、捕まりませんし、処罰もありません。
 鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律という法律があります。ここで保護されているー捕獲等(捕獲又は殺傷をいう)してはいけないー「鳥獣」とは、「鳥類又は哺乳類に属する野生動物」であり、ノラ猫は、野生動物とはいえないので、関係がありません。ちなみに、カラスは野生動物なので、勝手に捕獲等をしてはいけません。
 しかし、安心は出来ません。動物の愛護及び管理に関する法律には、「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する」という条文があります。そして、愛護動物として、牛、犬などと並んで猫が入っています。残念ですが、やはり、警察に捕まったり、罰せられたりすることになります。
 夜中などにうるさいノラ猫や勝手に庭に糞をするノラ猫はどうすればよいのでしょうか。先の法律(動物愛護管理法)には、所有者の判明しない猫(ノラ猫)の引取りを自治体にしてもらうことができますので、それも1つの方法です。くれぐれも、勝手に殺さないようにしてください。
(弁護士 中尾 誠)
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No.13
前夫との再婚の場合,再婚禁止期間は? …女性の再婚禁止期間とその例外…
 離婚した場合,男性はすぐに再婚が可能です。しかし,女性は6か月経過したあとでなければ再婚はできない,と民法733条1項は定めています。
 Aさん夫婦は,夫婦喧嘩の勢いで協議離婚届を出してしまいましたが,しばらくして仲直りしました。再び婚姻届を出そうとしたところ、知人から「女性の再婚禁止期間」について聞き、その期間は待つしかないのかと思いつつ,生活上の不便さに困っていました。
 再婚禁止期間は,「父性の推定の重複を回避し,父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐ」ために設けられたものとされています。そのため、子どもの父親が不明確になるおそれがない場合は,再婚禁止期間をおく意味はないのです。従って,Aさん夫婦は同じ人との再婚ですから,民法733条1項の適用はありません。
 別の相手と再婚する場合であっても、女性が医学的に妊娠が不可能だったり、夫が3年以上行方不明になり裁判離婚した場合なども、同様に再婚禁止期間をおく意味がないと考えられます。
 そもそも再婚を希望する女性の妊娠の有無や父子関係はそれ自体の証明が容易である現代においては,女性の再婚禁止期間は合理性がなく,女性に対する差別であり廃止されるべき,との意見も有力です。再婚禁止期間のない国,あるいは,存在していても撤廃した国も多いのです。ドイツは1998年,フランスは2004年,韓国は2005年に廃止しています。現実に悩んでいる人は少なくないので,法改正運動も重要と思います。
(弁護士 吉田眞佐子)
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No.12
誰の借金?
 「消費者金融で金を借りるアルバイト」が一時期問題となっていました。サラ金の調査目的で人を集め、借金の申し込みをさせるのです。アルバイトだと思っていたのに返済を催促されて、自分が借金をしていたことに気付きます。
 あるいは、家族や知人に頼まれて、借金のために名義貸しをしたという話もよく聞きます。知人らが順調に返済している場合には何事もないのですが、不払い状態となれば借金の返済請求は名義人に対してなされます。
 このような場合には「私の借金ではない」「私に支払を請求されても困る」と反論したいところですが、名義を貸して消費者金融と契約した人が借金の名義人とされるため、支払いを拒むことはなかなか困難です。
 では、これとは逆に、知人名義でお金を借りていた人が破産することになった場合、知人名義の借金についても自分の債務であるとして破産の手続をすることができるでしょうか?
 前述の例から考えると、「借りた金は名義人に返済義務がある」ということになります。つまり、自分の債務と思っていても、実質的には「知人が消費者金融から借りた金」を、「知人から借りた」ということになるのです。そうすると、知人の消費者金融に対する債務は、その知人自身が返済したり破産等の手続をしない限り、無くならないのです。
 改正貸金業法が2010年6月18日から施行され、借入額が年収の3分の1に規制される等したため、「借りたくても借りることができない」人が増加しているようです。だからと言って、借金のために名義を貸さない・借りないよう、くれぐれもご注意ください。
(弁護士 中村直美)
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No.11
成年後見制度に注目!
 成年後見人ってご存じですか?
 成年後見人は、ご自分で財産管理や施設入所契約等の契約ができなくなった方を保護し、支援するための仕事をします。高齢や病気、事故などの原因で、成年後見の対象となる方が沢山おられ、増えているように思われます。
 これまでは、ご親族や周りの方が、善意で、ご本人の財産管理をしていました。しかし、成年後見の制度ができたこともあり、銀行がご本人のご意志をきちんと確認するようになるなど、社会の対応も変化してこれまでのやり方が通用しにくくなってきています。さらに、財産が食い物にされるなど、不適正な財産管理がされているケースも少なくありません。
 後見人は、ご親族等身近な方から選任されることが多いのですが、紛争性が強いケースでは、私たち弁護士など専門職から選任されることとなります。後見人は、ご本人の看護や介護、預貯金その他の財産管理、場合によっては訴訟をすることもあります。
 申し立ては、ご本人の4親等内の親族が行うこととされていますが、検察官や市長にも申し立てる権利が認められています。診断書で判断できれば費用はほとんどかかりませんが、専門医の鑑定が必要な場合は申立人に鑑定費用がかかります(10〜15万円程度)。
 判断能力のあるうちに、契約で後見業務を依頼しておく任意後見契約も活用されるべきでしょう。気になるケースが身近にある方は、是非一度ご相談下さい。
(弁護士 井関佳法)
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No.10
遺言は元気なうちに
 遺言書の効力が生じるのは、書いた人が亡くなった後ですので、なかなか実感ができないものです。
 遺言書がない場合との一番大きな違いは、遺言書があれば、相続人が何人いても、また、その人たちがどのような考えを持っていたとしても、遺言書に基づいて、不動産・預金などの相続財産の名義移転(遺言書に書かれた内容で)ができることです。遺留分の問題が生じるのは、後のことです。
 遺言がなければ、相続人のうち1人でも反対すれば、何もすることはできません。その場合は、家庭裁判所で調停・審判をして解決を図ることになるので、時間も手間もかかります。
 遺言ができるのは、15歳以上の人です。そして、遺言は自分で行なうことが必要であり、代理人や後見人が行なうことはできません。
 また、遺言をする時に、誰に財産をあげるかについて、法律上有効な意思表示をする能力があることが必要です。そのため、自分でそのような判断ができる能力がなくなった後では、遺言書を作成することはできません。
 そもそも遺言書を作るかどうか、形式は自筆証書か公正証書か、どのような内容にすれば自分が亡くなった後うまくいくかなど、判断に迷うものですが、遺言をするとすれば「元気なうち」という点は、忘れないで下さい。
(弁護士 中尾誠)
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No.9
中小企業金融円滑法が施行されました
 2009年11月30日、中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)が成立し、12月4日に施行されました。この法律は、中小零細企業の事業主や住宅ローンの借主を支援することを目的とした時限立法(2011年3月まで)で、銀行や信用金庫などの金融機関は、中小零細企業や住宅ローンの債務者から申し込みがあった場合、貸付条件の変更などを行うように努めなければならず、貸付条件変更などを適正・円滑に行うための体制の整備とその開示も義務付けられました。
 しかし、『貸付条件の変更などは努力義務とされていること』『住宅金融支援機構(旧、住宅金融公庫)などの政府系の金融機関からの借入が対象外とされていること』など、不十分な点もあります。
 最近の新聞報道によれば、金融機関に専用の相談窓口やフリーダイヤルが設置され、相談が急増しているとのことです。リストラや解雇された人が返済猶予を求めて断られるケースも相当数あるようですが、それなりに応じてもらっているケースもあるようです。債務返済に悩まれている方は、思い切って相談してみてはいかがですか。
(弁護士 杉山潔志)
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No.8
架空請求と違法ダウンロードの禁止
 電子メールや郵便を利用した架空請求、不当請求による被害は、今なお多数発生しています。身に覚えのない契約や、見知らぬ人からの請求に対しては、冷静な対応が必要です。
 不審な請求をしてきた相手に問い合わせをすると、住所や氏名,勤務先や電話番号などの個人情報を知られて、それを悪用されて被害が拡大する恐れがあります。不当請求の電子メールや郵便物などの証拠を保存し、弁護士や消費生活センターなどの相談機関と相談することをお勧めします。
 ところで、著作権法改正(2010年1月1日施行)により、(1)違法にアップロードされた著作物(音楽や映像等)を(2)違法にアップロードされたものであることを知りつつダウンロードする場合は、私的利用目的であっても違法となりました。違反者への罰則はありませんが、著作権者から民事上の損害賠償責任を問われる可能性があります。正規の配信サイトであることを確認して利用しましょう。
 この著作権法改正を契機として、違法なダウンロードを理由にした架空請求や、振込め詐欺が多発することが心配されています。このような支払い請求書が送付されてきた場合には、まずは弁護士に相談して対処しましょう。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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No.7
派遣法「抜本」改正の現状
 昨年の総選挙では、派遣労働者の保護、派遣法抜本改正をマニフェストに掲げた民主党が政権をとりました。現在、厚生労働省では派遣法改正について議論がなされており、最近、大枠が明らかになりましたが、現状よりはましとはいえ派遣労働者保護にはほど遠い内容です。例えば、問題の多い製造業派遣は「全面禁止」にはならず抜け道が残っています。また、「派遣労働者=安くてクビにしやすい労働者」という現状が派遣という働き方の根本的な問題ですが、この点も対策が不十分です。
 企業は、「安くてクビにしやすい労働者」を使い続けたいため、派遣法抜本改正には反対の姿勢です。今の改正議論でも不十分なものが、今後、さらに後退させられる可能性が大いにあります。労働者が安心して働ける世の中を作るためにも、派遣法抜本改正の議論を後退させることは絶対にしてはいけないと思います。
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No.6
2年目を迎える労働契約法
 平成20年3月1日、労働契約法が施行されました。
 近年においては、中途採用の増加、派遣社員や契約社員など採用方法が多様化し、また、成果主義・能力主義の導入など、就業形態が多様化しています。そのため、これまでの年功序列的な賃金制度を前提とした統一的・画一的解決方法によっては、解雇や賃下げなど個別の労働実態に即した問題解決を図りえない事態が生じてしまいます。また、紛争は最終的には裁判で決着をつけることになりますが、その判断については判例の積み重ね(判例法理)に委ねられていました。
 そこで、個別労働関係紛争に対応すべく、労働契約のルールを明確にし、労働者と使用者との良好な労働関係を維持するために定められたのが労働契約法といえます。
 労働契約法は、労使が対等な対場で労働契約を締結する合意原則を明確化し、また、一方的な賃下げなど、就業規則の変更により労働者に不利益に労働条件を変更することはできないとしました。そして、これまで判例に任されていた就業規則の変更が合理的であるための要件を条文化し、就業規則変更の内容面のルールが法律上明らかにされました。
 さらに、懲戒権・解雇権の濫用は無効であること定め、不当な懲戒や解雇等の防止を図っています。
 また、有期契約労働者は、契約期間中の解雇や契約更新の繰り返しなどにより著しく不安定な地位にさらされています。そこで、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がなければ期間満了前に労働者を解雇することができないとするとともに、契約期間が不必要に細切れにならないよう使用者に配慮が求められ、有期契約労働者の地位安定を図っています。
 労働契約法施行からこの3月で2年になりますが、個別労働紛争はさらに増加傾向にあります。団体的解決に馴染まない個別の労働紛争について、労働契約法を実効性あるものとしたいものです。
(弁護士 中村 直美)
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No.5
年収の3分の1を超える借金はできなくなります!
 数年前まで、テレビのコマーシャルはサラ金が占拠していました。高利の無制限な貸し付けが横行し、多重債務問題が深刻化しました。
 そこで、平成18年に貸金業法が改正されました。まず、年20%を超える金利を刑事罰の対象としました。高利が禁止され、サラ金のコマーシャルは駆逐されました。
 次に、返済能力を超える貸付が制限されます。近々(平成22年6月までに)、年収の3分の1を超える貸付が禁止されます。他社での借入も信用情報機関で調べられ、トータルの借入額が問題にされます。思いがけず借り入れできず、返済に行き詰まったり、支払いに窮する事態が想定されます。予めご相談いただき、早期に対処されることが求められます。 (但し、法人向け貸付、個人事業主に対する貸付、不動産購入のための貸付、自動車購入のための貸付、高額医療費の貸付、緊急の医療費の貸付、不動産担保貸付、配偶者と合わせた収入の3分の1以下の貸付等には適用されません。)
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No.4
住宅瑕疵担保履行法が10月1日から施行されます。
 欠陥住宅の社会問題化を受けて、住宅品質確保法が施行され、新築住宅について売主、請負人に10年間の瑕疵担保責任が義務付けられました。しかし、2005年11月に発覚した構造計算書偽装事件は、責任の義務化だけでは不十分であることを明らかにしました。
 住宅瑕疵担保履行法は、2009年10月1日以降に引き渡される新築住宅(建築工事完了日から1年以内の戸建、マンション、賃貸住宅で居住に供されたことのないもの)について、引き渡しを行う建設業者や宅建業者に瑕疵担保責任を履行する資力を確保させるために、一定の金額を供託所に供託するか、損害賠償のための保険契約(住宅瑕疵担保責任保険契約)を締結することを義務付けました。新築住宅の瑕疵は、補修が原則で、供託金の還付や保険金の支払いは瑕疵担保責任を履行した請負人や売主になされますが、請負人や売主が倒産した場合などには、発注者や買主に支払われます。住宅瑕疵担保責任保険をめぐる紛争のあっせん、調停、仲裁のため、京都弁護士会にも住宅紛争審査会が設けられました。
 住宅瑕疵担保履行法には、対象を新築住宅に限っていることや瑕疵を構造耐力上の主要部分や雨水の浸入防止部分に限っていること、瑕疵について故意、重大な過失がある場合に請負人や売主に保険金の支払いがないことなどの不十分点がありますが、欠陥住宅の被害者救済へ一歩前進といえます。
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No.3
遺言書のすすめ・・・のこされた家族への思いやり
 Aさんが亡くなりました。子どもがいないご夫婦でしたから、相続人は妻とAさんの亡兄の子ども、そして弟たち。自宅の相続の手続には相続人全員の同意が必要でした。同意しない人がいたので遺産分割の調停になり、妻は相当の代償金を支払いました。もしもAさんが遺言書を作成していたら、兄弟やその子どもに遺留分はなく、遺産はすべて妻のものになりました。
 Bさんは一人っ子。配偶者、子どもはなく、親も亡くなっていました。Bさんが亡くなると、相続人不存在ですから、原則としてすべての遺産は国庫に入ることになります。
 人間誰でも自分が死ぬことなど考えたくないものです。でも、相続対象となる財産をお持ちの方は、のこされる家族への思いやりとして遺言書を書かれることをおすすめします。遺言書の作成の仕方は細かく法律で決められていますので、まずは弁護士へのご相談をおすすめします。
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No.2
迷惑メールを撃退しよう!
 昨年12月1日に特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)が施行されました。
 この法律によって、営業目的のメールは、メールを受信する人が事前に承諾をしていないと送ってはいけないことになりました。よくあるものでは、出会い系サイトの勧誘メールや「懸賞に当選しました!」と目を引くタイトルで中身は広告というようなメールなどがこれにあたります。
 事前の承諾なしにメールを送信した業者に対しては、行政機関から改善をするように措置命令というものがなされます。
 (財)日本データ通信協会が、迷惑メール相談センターというホームページ http://www.dekyo.or.jp/soudan/ を設けて迷惑メール情報を集めています。承諾をしていないのに広告メールが来た場合には、このホームページに通報しましょう。
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No.1
2009年5月21日 裁判員制度スタート!?
 いよいよ、5月21日から、国民から選ばれた裁判員が刑事裁判に参加する「裁判員制度」が実施されます。
 裁判員裁判の対象となるのは、一定の重大な犯罪に関する第一審(地方裁判所)の刑事事件です。例えば、殺人、強盗致死傷、現住建物等放火、危険運転致死、傷害致死、保護責任者遺棄致死などが対象事件となります。
 裁判員候補者に対しては、昨年12月ころまでに通知がなされており、調査票が送付されています。すでに通知を受けた裁判員候補者の方々はドキドキしながら5月21日を迎えておられることでしょう。
 では、5月21日当日から、裁判所では裁判員裁判が開廷されるのでしょうか?
 「5月21日から裁判員裁判が実施」と言われていますが、これは「この日以降に起訴された事件が裁判員裁判の対象になる」という意味です。ですから、5月21日以前に起訴された事件や、5月21日の時点ですでに裁判官による審理が進められている事件は、裁判員裁判に付されることにはなりません。
 また、裁判員裁判の対象となる事件は、公判前整理手続により争点と証拠の整理をすることが必要とされています。公判前整理手続は、最初の公判期日の前に、裁判所・検察官・弁護人が行う手続であり、裁判員の関与はありません。そして、この手続は、争点を明確にした上で証拠を厳選し、審理計画を立てることを目的としており、複雑な事件の場合には数か月を要することもあります。
 このようなことから、日本初の裁判員裁判が開廷されるのは、5月21日よりも数か月先となりそうです。
 裁判員に期待されるのは「検察官が合理的な疑いをいれない程度まで犯罪を証明したか」を、国民の目からチェックする役割です。検察官の立証に少しでも疑いが残る場合には有罪とすることはできません。この「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の大原則を再確認し、冤罪のない刑事司法制度実現のために、裁判員制度により国民の声を司法に届けましょう!
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