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懲役と禁錮を一体化した拘禁刑の施行

2025年3月3日
■☐ 拘禁刑を創設した改正刑法の施行

政府は、2024年11月7日、懲役刑(刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる)と禁錮刑(刑事施設に拘置する)を一本化して拘禁刑とする改正刑法(2022年6月成立)の施行日を2025年6月1日とする政令を閣議決定しました。
明治以降、日本の刑罰は、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収の7種類でしたが、2025年6月1日からは6種類となり、拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができると定められています(刑法第12条3項)。

■☐ 拘禁刑が創設された背景

ドイツなどの諸外国に続いて日本で拘禁刑が創設された背景には、最近の再犯者が6割近くに達し、受刑者が高年齢化しているなどの事情があります。薬物事件の受刑者には、作業よりも薬物を断つための治療やグループワークのほうが大きな効果を得られ、若年者に対しては、基礎的な学習や職業訓練のほうが社会復帰後の再犯防止の効果が大きいと思われます。
また、高齢受刑者の増大で刑務所が老人ホーム化し、刑務作業といえないような作業の名目でリハビリが取り組まれている実態もあります。

■☐ 拘禁刑の課題と運用

受刑者が作業や刑務官の処遇指導を拒むことも考えられます。政府は作業や処遇の義務付けや懲罰も必要と考えていますが、更生の実を挙げるためには、受刑者自身が更生の意欲をもって作業や処遇に取り組んでいく必要があります。ここに拘禁刑が抱える刑罰としての側面と更生・再犯防止の理念を両立させることの課題がありそうです。受刑者に再犯防止・更生の動機付けを行う刑務官の力量と責任感が求められます。

弁護士 杉山潔志

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