事故の現場検証
人身事故があると、現場検証が行われて実況見分調書が作成される。この実況見分調書は、事故の原因、過失割合等を明らかにする上で重要な証拠、しばしば決定的な証拠となる。
実況見分調書上には、「加害者はA点で初めて被害者がa点を走行するのを発見した、加害者はB点でブレーキをかけその時被害者はb点を走行しており、×点で衝突した、そして加害者はC点に停車し被害者はc点に転倒した状態で停車した」というように、現場図面上に双方の動きが記入される。裁判官は、この実況見分調書をもとに、各点間の距離や所要時間などを計算して「緻密に」責任を究明していく。
実際は、「あっ」と思ったら、あるいはせいぜい「あっー」と思ったらドッカーンである。「あっ」と思った場所やぶつかった場所が何処なのかは、そんなに簡単に分かるものではない。
しかも、現場検証は交通をストップしておこなわれるわけではない。事故当事者は、再現走行車両に乗せてもらって各点が何処なのかを確認させてもらえるわけではない。車がビュンビュン走行する道路の脇で、歩行者目線でそれらの場所を確認させられるだけである。しかし、高速で走行する運転席からの視野と道路脇の歩行者視界は必ずしも同じではない。
従って、現場検証が後日行われる場合には、予め事故現場を車で走行してみて事故時の記憶を喚起してみるべきである。事故直後に現場検証が行われる場合には、慎重に、よくよく思い出して説明すべきである。事故を起こした負い目から、警察官に言われるままに各点を決めてはならない。
さらに問題なのは、軽微な事故の場合などには、加害者の立ち会いだけで、被害者の立ち会いなしで、現場検証が済まされて事件が処理されることがある。交通事故の当事者となった場合には、必ず現場検証に立ち会わせてもらって、事故状況の説明をさせてもらわなければならない。すでに現場検証が終わっている場合でも、再度の実施が可能である。