児童手当の振込口座の差押は違法!
鳥取県は、滞納税金を徴収するために、滞納処分として、児童手当の振り込まれる口座を差し押さえ、振り込まれていた児童手当を滞納税金の支払いに充てました。(租税の場合、確実能率的な徴収を図るため、国や自治体に、裁判所を利用せずに自ら差し押さえをする権限が認められています。)
しかし、鳥取地裁、その控訴審である広島高裁松江支部は、このような差し押さえは許されないとして、差し押さえ金額のほぼ全額の返還を命ずる判決を下しました。
児童手当を支払ってもらう権利は、児童の健やかな成長と家庭生活の安定に必要なお金であるとの理由から、差し押さえが禁止されています。しかし、児童手当が一旦口座に振り込まれると、それ以外のお金と混ざってしまいますし、それを差し押えてはいけないと定めた直接の規定はありません。鳥取県は、そこに目を付けて差し押さたのです。
しかし判決は、県は児童手当が振り込まれる日であることを認識した上で、振り込まれた9分後に差し押さえしており、しかも口座には振り込まれた児童手当以外には殆ど残金がなかったことから、差し押えたのは預金口座であるが、差し押さえが禁止されている児童手当を支払ってもらう権利を差し押えたのと変わりないとの理由から、差し押さえを禁止した児童手当法の趣旨に反して違法だと断罪しました。
この判決の考え方は、差し押さえが禁止されている生活保護や年金にも当てはまるばかりでなく、租税以外の公営住宅家賃や公立病医医療費回収のための民事上の強制執行にも先例として参考になると言われています。
これは重要な判例ですが、未だ行政の現場担当者に周知されていないようです。しっかり監視していきましょう。