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京都市の生活保護廃止処分を違法とする判例が出されましたので紹介します
(最高裁平成26年10月23日判決)

2015年3月17日

 Aさんは、昭和61年からずっと自宅で白地の反物に手描きで柄を付ける手描き友禅の仕事をしてきましたが、平成8年から生活保護を受けていました。受給当初の仕事の収入は月額13万円程でしたが、平成12年以降は月額2〜6万円程度で推移していました。Aさんは、平成6年に小型自動車を買い、現在まで仕事に使ってきました。
 京都市は、平成18年5月、Aさんに「友禅の仕事の収入を月額11万円(必要経費を除く)まで増額してください」という指示書を渡しました。収入を増やすことができるはずもなく、京都市は同年9月に「指示が守られていない」と言って生活保護を廃止したのでした。ひどいですね!
 京都地裁は、Aさんを勝訴させましたが、大阪高裁では逆転敗訴でした。大阪高裁は、指示書には「友禅の仕事の収入を月額11万円(必要経費を除く)まで増額してください」としか書かれていないけれど、仮に収入を増額できなくても、車を手放せば生活保護の廃止はしないという趣旨であったから、京都市の指示は現実不可能だったとは言えないと言ったのでした。
 これに対して最高裁は、Aさんを再び勝たせました。生活保護法上、福祉事務所は指示や指導ができ、従わない場合は生活保護の廃止ができるとされていますが、生活保護法施行規則上、その指示は書面でなされなければならないと定めています。最高裁は、書面による指示を求める趣旨は、福祉事務所の恣意を抑制し、保護受給者の権利を擁護するためであり、この点で高裁は間違った判断をしているので、判断のやり直し(差戻)を命じたのでした。
 生活保護への攻撃が強められ、生活保護法も改悪された中、保護受給者の権利を正当に認めた判決として注目されるべきでしょう。

弁護士 井関佳法

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