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動産が動産でなくなるとき -- 付合について

2015年6月23日

 賃借人が賃借建物の明け渡しをする際に「賃借人が建物内に存置、設置している動産は賃借人が収去して建物を明け渡す。」と合意し、離婚の際に、「婚姻後に取得した動産は妻が取得する。」などと合意することがあります。テレビやタンスが動産であることは容易に理解できますが、建物に設置された給湯器やエアコンはどうでしょう。当事者の認識が一致していないと、収去や取得の際に揉めることになりそうです。
 民法第86条は「(1)土地及びその定着物は、不動産とする。(2)不動産以外の物は、すべて動産とする。」と定めています。しかし動産である給湯器やエアコンが建物に設置された場合はどうなるのでしょう。
 民法242条は、「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。」と規定しています。付合とは、1つの物に他の物が結合することです。付合の有無は、本体の物と不分離、一体となって毀損しなければ分離できない状態となっているか否かで判断されますが、物理的な結合だけでなく、経済的一体性や持続性、附属時の関係者の意思なども考慮されます。たとえば、室内に貼った壁紙は付合して建物所有者のものとなり、賃借権や小作権を有していない者が農地に蒔いた種から生育した苗は、地主(土地所有者)の所有物となります(最判昭和31年6月19日)。裁判例では、アンカーボルトで設置されたエレベーターやネオン看板については付合が否定され、壁の内部の配管を用いた空調設備では付合が認められています。
 建物建築後に取り付けられ、建物を毀損しないで取り外せる給湯器やエアコンは、建物に付合しないと判断される場合が多いと思われますが、事後の紛争防止のため、借家の明け渡しや離婚の合意をする際に、個々の動産について収去の有無や取得者を決めておくとよいでしょう。

弁護士 杉山潔志

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