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国に対する 「住民訴訟」

2015年12月6日

 総工費2,520億円の新国立競技場の建設計画が白紙撤回となりました。また、東京五輪のエンブレム(佐野氏が作成)について、使用を中止し、再募集することになりました。その損害は、新国立競技場については、少なくとも59億円と報道されています。
 国をはじめとするこの問題の関係者は、謝罪したり、辞任したりしています。大変な無駄遣いであり、その損害は税金で賄われることになると思いますが、関係者は誰一人として、損害の補填をするとは言っていません。
 これが自治体プロパーな出来事であれば、その損害の原因を作った首長、自治体の職員らに対して、住民の訴えに基づいて、損賠賠償の請求(損害を被った自治体に対する損害の補填)をすることができます。いわゆる、住民訴訟です(地自法242条の2)。
 この10年間だけでも、首長や職員に対して1億円以上の損害賠償が命じられたものは、10件に及びます。京都の例でいえば、京都市がゴルフ場開発用地を著しく高額で買い取った、いわゆるポンポン山事件について、当時の市長に対して約26億円の支払いが命じられました。
 住民訴訟は、自治体の住民が自治体の財務行為の違法をチェックし損害を回復する制度です。この制度の活用により、自治体の無駄遣いが是正されてきました。国が動かすお金は大きく、国民が監視するような制度がない中、無駄遣いの程度は、自治体の比ではないと思います。
 「国民」が「国」の財務行為の違法をチェックし損害の回復を図る制度として、国に対する「住民訴訟」制度を、早急に創るべきと思います。
 この制度ができれば、私たち国民も、もっと税金の使い道に対して注意を払うようになるという効果も期待できます。

弁護士 中尾 誠

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