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衆議院の解散

2016年6月13日

 安倍首相は、年頭会見、補正予算審議などで憲法改正の姿勢を明らかにしました。そして、衆議院を解散して7月参議院議員選挙を衆参同日選挙とするとの憶測も流れました。
 一般に、同日選挙では投票率が上って浮動票に依存する政党に有利となり、衆議院解散は野党に準備不足を生じさせ、各政党が衆議院の議席獲得に動いて選挙協力が成立し難いといわれています。過去2度の衆参同日選挙は、いずれも与党の圧勝でした。安倍首相は、安保法制や経済政策などで切迫する政局の打開や消費税10%移行前を狙って衆参同日選挙を目論んだといわれており、現時点でも同日選挙の可能性がなくなった訳ではありません。
 日本国憲法には、衆議院の解散に関し、内閣の助言と承認によって天皇が行なう衆議院の解散(第7条3号)と、内閣不信任決議案の可決又は信任決議案の否決のときに衆議院が解散されない場合の内閣総辞職(第69条)の規定があります。衆議院の解散権は内閣にあるとされていますが、内閣はこれまで憲法第7条に基づき幅広い解散権を持つとの立場で衆議院を解散してきました。しかし、衆議院の解散は内閣が不信任された場合に限られるとの考え方も有力です。
 ドイツでは、議院内閣の連邦首相ではなく、連邦大統領に連邦議会の解散権がありますが、解散は、連邦議会で3回の首相指名選挙が行われても指名できない場合と連邦首相に対する不信任が決議された場合に限られ、不信任の成立は、戦前のワイマール憲法下で内閣不信任案の乱発がナチスの権力掌握をもたらした経験を踏まえ、不信任と同時に新首相が指名された場合に制限されています。
 日本の場合も、衆議院の解散・総選挙には国民の声を国政に反映させるという側面があるものの、党利党略による解散を自由にできるとするのはいかがなものでしょうか。

弁護士 杉山潔志

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