遺言書 〜遺言で遺産をもらう人が先に亡くなった場合〜
2018年8月28日
遺言があれば、相続を巡る無用な争いをかなりの程度、防ぐことが出来ます。できれば遺言を書いておかれることをお勧めしています。
しかし、遺言の内容によっては、新たな紛争を引き起こしてしまうこともありますから要注意です。例えば、その遺言により遺産を相続させるとされた推定相続人が、遺言者より先に亡くなってしまう場合です。
その場合、最高裁は、遺言の当該条項は原則無効になると言っています。すなわち、遺言により遺産を相続させるとされた推定相続人(例えば、遺言者の子供)が遺言者より先に亡くなった場合には、その代襲者(例えば、孫)に相続させる意思があったと解釈出来る特段の事情が無い限り、遺言が無効になると言っています。遺言が無効になることの結果として、その遺産は、残った推定相続人らが法定相続分どおり相続することになります。そして、残った推定相続人と代襲者とが、「特段な事情」の有無を巡って争う火種となりうるわけです。
もちろん、遺言者は、その遺言により遺産を相続させるとされた推定相続人が亡くなった後、もう一度、遺言書を書き直すことが出来ますし、新しく遺言を書き直せば、新しい遺言と矛盾する古い遺言は当然に無効になります。しかし、認知症になってしまって、新しい遺言を書けなくなってしまっていることもあるでしょう。
従って、遺言を書く時には、万一、その遺言により遺産を相続させるとされた推定相続人が遺言者より先に亡くなった場合には、その遺産を次に誰に譲りたいかまで書いておくべきこととなります。
弁護士 井関佳法