拙速審議と「無反応国会」の閉幕
菅政権初の204回通常国会が2021年6月16日に閉会しました。
今国会で成立したデジタル関連6法は、国家による国民監視の危険性があり、プライバシー権や自治体共同クラウドによる住民要求の切り捨て、個人情報の営利的利用に対する懸念が指摘されています。また、成立した土地取引規正法は、政府が自衛隊・米軍基地、原子力発電所などの周辺地域の土地を調査して住民に土地利用に関する勧告をし、政府による土地の買い取り等を定めたもので、戦前の要塞地帯法を彷彿させる内容です。憲法改正国民投票法も改正されましたが、改正運動の際のマスコミ規制などは先送りされました。これらの法案には人権や民主主義にかかわる重要な論点があるにもかかわらず、拙速審理で成立させられました。
他方、新型コロナウイルスや東京オリンピック・パラリンピック開催問題では、菅首相はひたすら「国民の命と健康を守っていく」と繰り返しただけで、「政治とカネ」の問題も疑惑解明のないまま国会は閉会しました。今国会は「無反応国会」などと呼ばれています。
日本国憲法は、国会を国権の最高機関と規定し(第41条)、内閣総理大臣とその他の国務大臣は、議案について発言するために議院へ出席することができ、答弁または説明のために求められたときは出席しなければならない(第63条)と定めています。今国会の拙速審議は国権の最高機関としての役割を自ら放棄するものであり、菅首相の対応は答弁と説明の義務を尽くしたとは評価できません。
国会や内閣のあり方を是正するには、国民の意思が重要ですが、国民世論を正しく反映しない小選挙区制という選挙制度にも「無反応国会」を許す一因があると思われます。