所有権は絶対
「所有権の絶対」は、契約自由の原則、過失責任の原則と並んで、近代法の大原則です。法律家にとって、身についている考え方と言えます。
自分の物は自分で勝手に処分してもよいとか、自分の土地を何に使うのも自由だとかいった具合です。その点について、民法は、「所有者は、…**自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する」(206条)「土地の所有権は、…**その土地の上下に及ぶ」(207条)とわかりやすく規定しています。
なお、「…**」部分は、「法令の制限内において」となっており、所有権の絶対性を前提としたうえでの制限という構成となっています。
隣の人から建物の修繕をするために、所有地への立ち入りを認めてほしいと言ってきた場合、原則は認める必要はありませんが、「修繕するために必要な範囲内」で請求することが出来るとしている(209条)のも、そのような考え方に拠っています。
自分の土地上に建物を建てる場合、境界線から50cm以上離して建てなければならない(234条)というのも、そのようにして建てれば、後は自分の所有地内で何をしてもよいということを前提としていると思います。
「土地の所有権はその土地の上下に及ぶ」となっているので、原則として、地上高く、地下深く建物を建ててもよいことになります。
そうだとして、北陸新幹線の延伸計画の京都府内の多くが、「地下トンネル」ですので、その部分の地上の土地所有者の同意をとる(ないし買収する)のは大変だろうと思っていました。しかし、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」という法令により、土地所有者の同意はなくとも、地下トンネルを掘ることは出来るとのことです(安全性とかを含め、大丈夫でしょうか)。