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民主主義を支える表現の自由

2022年5月7日

 ミャンマー国軍のクーデターから2022年2月1日で1年が経過しました。クーデター直後には、各地で市民の抗議デモや職場放棄の「不服従運動」が起きましたが、現在では、治安部隊の武力行使や弾圧によって平和的な抗議も困難となっています。
 ロシアでも、ウクライナ侵攻に反対するデモは鎮圧されています。プーチン政権の意向に沿う放送を続けるロシア国営テレビでは、3月14日、ニュース番組を放送中のスタジオに女性職員が入り「戦争やめて!」と叫び、「戦争反対。プロパガンダを信じないで。」等と手書きした紙を掲げるという事件が起きました。女性は逮捕され、3万ルーブルの罰金を科せられました。表現の自由を抑圧するプーチン政権は、ナチズムからウクライナを解放しているなどと宣伝して80%以上の支持率を誇っています。
 日本では、自衛隊が、2020年に「予想される新たな戦いの様相」に“反戦デモ”を記載した文書を作成していたことや、米海軍横瀬貯油所で米軍基地反対を訴える街頭の市民を排除する訓練を米軍と実施していたことが判明しました。主権者として行動する市民を敵視・排除の対象としていたとして批判が起こっています。
 他方、札幌地方裁判所は、3月25日、2019年参議院議員選挙の際にJR札幌駅などで演説中の安倍首相に「安倍辞めろ」、「増税反対」などのヤジを飛ばして警察官に排除された2人の市民が提訴した国家賠償請求事件で、危険な事態や犯罪を発生させておらず、違法な排除行為で表現の自由を侵害したとして、北海道に対し、2人に合計88万円の支払いを命じる画期的判決を言い渡しました。
 最近の世界と日本の動きは、表現の自由が国民主権を支える重要な基本的人権であり、表現の自由を守る不断の努力の重要性を教えています。

弁護士 杉山潔志

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