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安倍元首相の国葬

2022年10月4日

 9月27日、国民の世論を無視し、日本武道館で安倍元首相の国葬が行われ、外国の要人、秋篠宮夫妻ら皇族7名、国会議員、政府関係者、その他の国民4,183人が参列しました。京都府からは、知事や京都市長が参列し、京都府庁や京都市役所などに半旗が掲げられました。
 国葬は、国家の大典として国費で行う葬儀(広辞苑第四版)で、戦前には、国葬令にもとづき“天皇と臣民が皇族や功臣の死に対する悲しみを共有する場”として行われました。国葬令は日本国憲法の施行に伴って失効し、天皇、上皇が崩じた際に大喪の礼を行う旨規定した皇室典範及び皇室典範特例法以外に、国葬に関する法律は制定されていません。
 過去には、吉田茂元首相の死に際して「国葬儀」が行われましたが、佐藤栄作元首相の死の際には、当時の内閣法制局長官の指摘などを受け、内閣・自民党・国民有志による国民葬とされました。
 岸田首相は、内閣府設置法第4条第3項33号に規定された国・内閣の儀式を根拠に「国葬儀」として行う旨説明しましたが、この法律は内閣の設置と所掌事務を規定したもので、法律事項について法律の定めがない場合に内閣府にその実施権限を付与するものではありません。名称を「国葬儀」としても、政府が主宰し、全額国費で行う限り、国葬であることに変わりなく、立憲主義に反するといわざるを得ません。
 また、このような儀式に、京都府知事や京都市長の公費による参列や庁舎への半旗を掲揚しての弔意の表明も府市民の思想良心の自由(憲法第19条)に抵触すると思われます。
 岸田首相には、政治と旧統一協会との関係、安倍内閣のもとで生じた森友学園、加計学園、桜を見る会などの全容を解明し、政治に対する信頼を回復することに力を注いでもらいたいものです。

弁護士 杉山潔志

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