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孤独・孤立の状態に対する支援

2023年8月2日
◆211回通常国会で成立した孤独・孤立対策推進法
80代の親と引きこもりの50代の子どもの生活を支えるという「8050問題」が社会問題化しています。また、本年5月には、長野県中野市で「ひとりぼっち」とバカにされていると思った31歳の男が散歩中の2人の女性を刺殺、駆けつけた2人の警察官が猟銃で射殺される事件がおきました。
このような社会的背景をうけて、2023年の211回通常国会で、「孤独・孤立対策推進法」が成立し、2024年4月1日から施行されます。
対策推進法は、孤独・孤立状態の予防、孤独・孤立状態にある者への支援、孤独・孤立状態からの脱却のため、内閣府に対策本部を設置し、地方自治体に対策地域協議会を置くと定めています。国や地方自治体は、孤独・孤立状態にある者などへの支援者の確保・養成・資質の向上に必要な施策、支援者の活動支援のための情報の提供、実態調査を行うと規定されていますが、対策本部設置以外の施策・措置は努力義務とされています。
◆民生委員制度の状況
孤独・孤立対策と関連する制度に民生委員制度があります。民生委員は無給で3年任期とされ、必要に応じた住民の生活状態の把握、要援助者に対する生活相談・助言などの援助、福祉サービス情報の提供、社会福祉事業者などとの連携と事業・活動の支援、福祉事務所等への協力などの職務を担当区域で行います(民生委員法)。
民生委員の定数は、厚生労働大臣の定める基準を斟酌して都道府県・指定都市の条例で定められますが、近年では高齢化が進み、慢性的な不足状態となっており、2022年12月改選では全国で定数24万0547人に対し委嘱数22万5356人(93.7%、前回:96.2%)でした。また、職務の過重や個人情報保護法による住民の生活状態情報の把握の困難性などの問題も指摘されています。
◆孤独・孤立対策推進法の実効性
このような中で、具体的な制度内容が明確でない行政の孤独・孤立対策が、その理念や目的にそった運用ができるか危惧されます。施策の具体化、支援活動者の確保と支援策などに対する行政の役割が求められます。
弁護士 杉山 潔志

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