やましろのくに 山背<やましろ>の国のよいこと・よいもの・よいところ…
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No.100 三宝院と醍醐の桜




 枝垂れ桜にある「なよやか」の形容には収まりきれない醍醐の枝垂れ桜、雲や風や水の流れを思わせる豪放ともいえる姿です。「醍醐花見図屏風」に見る桜は枝垂れではないので、その後に育てた「桜の宇宙」という方が適切かもしれません。
 古来、日本人が桜によせる思いにはひときわ深いものがあります。昭和の初め、それは巧妙に軍事に利用されました。そしていま、「国を守る気概」の言葉を聞き「美しい国」と言われます。このとき「守る」のは何か、その方法は、「美しい」の内容は--? 同じ言葉を使いながら、全く違うことを意味していることのなんと多いことでしょう。美しい桜を見ながらそんなことを考えてしまうのは現代の不幸、まことになさけないことです。
 三宝院の瓢箪と杯の苔庭と、流れの音が聞こえるような枝垂れ桜はよく似合います。なにものにもとらわれない自由闊達な想像力がこの取り合わせを生んだのでしょう 。

(切り絵と文 川越 義夫)
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