やましろのくに 山背<やましろ>の国のよいこと・よいもの・よいところ…
切り絵とエッセイで紹介します
一覧へ

No.102 男山と安居橋〈あんごばし/通称:たいこ橋〉(八幡市八幡)




 絵は男山の麓を流れる放生川にかかる安居橋。さして大きくはない木造です。かけられたのは15世紀のこと。いま橋脚はコンクリートですが、歩くと柔らかな音と足の裏の感触が伝わってきます。
 グローバル経済が威丈高な現代の社会です。道も橋も人を一定の方向に押し流す通路になり、速さと強さを競わされる人間の姿に生気はありません。ベビーカーの親子が向こう岸に渡り草や石で遊びはじめました。老夫婦が互いにいたわりあいながら通ります。談笑しながら足早に過ぎる少年達は笑顔のサインを送ってくれます。木の反り橋が人の集うやさしい景観をつくり、男山の原生林が人をおおらかに包んでくれます。溢れる陽光と緑、水鳥の姿、この町に住む人の暮らしの営みがそのまま美しい風景を創っています。

(切り絵と文・川越 義夫)
作者プロフィール



home