やましろのくに 山背<やましろ>の国のよいこと・よいもの・よいところ…
切り絵とエッセイで紹介します
一覧へ

No.104 長岡の朝市




 まだ風の冷たい3月末、長岡の市民ひろば3ケ所で開かれている朝市を訪ねました。20軒ほどの近くの生産者が集まり、振鈴の合図で市が始まりますが野菜はほぼ10分で売れてしまいます。もう20年続くこの市はすっかり暮らしに溶けこんでいて、売る人と買う人の間には家族のような温かい会話があります。
 京の伝統野菜のうち花菜と筍はここが主産地で、時節柄ひときわ誇らしげに見えます。恵まれた風土の中、作る人の創意と工夫で育てられた野菜、漬物、佃煮、餅などは、京の味と香りと彩です。各地の市が大小を問わず人気なのは、その他の自然と人との交歓の中に豊かさと安心を実感するからでしょう。
 食のグローバリゼーションは、日本の農業の自給体制と地域固有の食文化を壊しました。しかしこの「市」には、自立の頼もしい息吹が満ちています。明治以前からの歴史をもつ主役の京野菜を中心にそれを伝え続ける人々のこころ、私たちが次の世代につないでいく確かなもの ー の思いを深くしました。

(切り絵と文・川越 義夫)
作者プロフィール



home